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第三章 学園編
第95話 諸刃の剣でした?
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翌日、学園に登校した私の元に、サクラが走ってやって来た。
「あ、アンマリア様!」
すごい形相で叫ぶサクラに、私はつい目を丸くしてしまう。
「ど、どうしたのからしら、サクラ様」
「ど、ど、どうしたって、あの剣一体何なんですかっ?!」
サクラの慌てようからすると、どうやら昨日手渡しした魔石剣を早速使ったものと思われる。父親と騎士団長が怒鳴り込んできた時の事を思い出すわね。
「魔石とトレント木材を使った剣ですわよ。私の魔力で練り上げた、世界に三振りしかない剣の一本です」
隠す必要はないと、事実をさくっと言ってのける私。それを聞いたサクラの表情が固まっていた。
「剣の刃の部分は魔石ですから、魔力が馴染みやすくなってましてね」
固まっているサクラをよそに、私は魔石剣の特徴をいいところも悪いところも全部サクラにぶちまけている。
そうやって私が饒舌に喋っていると、
「ふーん、その剣について詳しく聞かせてもらいたいね」
唐突に後ろから声が聞こえてきた。その声に私は喋るのをやめて、ゆっくりと後ろへと振り返る。
「ひぇっ! ふぃ、フィレン殿下……」
私は変な声を出してしまった。その私の声に、フィレン王子の冷たい笑顔が向けられた。
「その魔石剣とやらを、見せてもらってもいいかな?」
「ひ、ひゃい!」
呂律が回らなくて変な返事になってしまった私だが、収納魔法から最後のひと振りを取り出した。
「こ、こちらでございます。本当は、殿下の誕生日にお贈りさせて頂くつもりでしたが、この場でお渡し致します……」
そう言いながら、改めて誕生日プレゼントを用意し直しかと、内心大きくため息を吐く私。だけれども、フィレン王子の顔を見ると、その内心のため息も見透かされているようだった。こ、怖い……。
フィレン王子は私から剣を受け取ると、すっと抜いて剣を眺めていた。教室の中で抜くのはやめてもらいたい。周りがめちゃくちゃ見てるじゃないですか、王子!!
「実にきれいだな、これが魔物の核と言われる魔石からできているとは信じられないね。うん、誕生日には早いけれど、ありがたく受け取っておくよ、アンマリア」
笑顔がものすごく怖い。これはなんだろうか。また怒られるフラグなのかしらね。私は引きつった笑いを浮かべながら、フィレン王子の言葉に適当に返しておいた。
「それにしても、あれの事も驚いたけれど、魔力を注ぎ込む事で物の形をあそこまで変えられるんだな。これでは職人が要らなくなってしまうな」
「あはは、誰だってできるわけではございませんよ。私は恩恵があるからこそいろいろな事ができるのであって、普通の人ができるようになるには、そこそこ魔力を増やした上で数か月から数年かけないと無理だと思いますよ」
フィレン王子が羨ましそうに私を見ながらそんな事を言ってくる。でも、この物の変形だってすぐできたわけじゃない。私には前世の知識による想像力があるからこそ、この反則的な魔力も相まって簡単にできてしまっているだけだった。
実際、魔石ペンの作り方をマスターした私の母親だって、変形させる事を満足にできるまで数か月を要している。魔石ペンを作れるようになったのも、ここ数年の事だもの。しかも、専門的にしていたのではなく、伯爵夫人としていろいろこなしながらな上にダイエットまでしていたので、かなり時間が掛かってしまったのだ。それだって、何度も私が手本を見せたからこそ成し得たものだ。軽々にできるものではないのだ。
「そうか。でも、学園が終わったら城に招待するよ。父上の前で、この剣について説明をして欲しい」
「ひっ!」
フィレン王子がすまし顔で言った事に、私はものすごく青ざめてしまった。国王の前に引きずり出されるなんて、まさか断罪ルートじゃないわよね?
「はははっ、そこまで身構える必要はないよ。父上の耳にはすでに騎士団長を通じて入っている。まあ、騎士団長の言い分からして、もう作るなと言われる事が濃厚だろうけれどね」
いやはや、本当にフィレン王子の笑顔が怖い。
「というわけで、放課後は空けておいてくれ」
「か、畏まりました、フィレン殿下」
爽やかに剣を携えたまま立ち去ってフィレン王子だったが、とてもじゃないけれど、私は生きた心地がしなかった。
「あ、あの、アンマリア様」
呆然と固まる私に、サクラが戸惑いながらも声を掛けてくる。
「わ、私も同行させて頂きますので、ね?」
サクラの申し出は嬉しいのだけれども、それよりも強いショックに、私はしばらく放心し続けていた。そのせいもあって、この日の授業は、私の頭に一切入ってこなかった。きちんと授業は受けているのにね。やっぱり、フィレン王子からあんな事を言われたのが相当にショックだったのだろう。とにかく、私の心の中には恐怖がこびりついてしまった。
放課後、モモを先に帰らせると、私はサクラと一緒にフィレン王子と合流する。サクラの同行は、例の剣の事もあってあっさり許可された。
(ううう、無事に戻れますように……)
私は祈るような気持ちで、馬車に揺られながらお城へと向かったのだった。
「あ、アンマリア様!」
すごい形相で叫ぶサクラに、私はつい目を丸くしてしまう。
「ど、どうしたのからしら、サクラ様」
「ど、ど、どうしたって、あの剣一体何なんですかっ?!」
サクラの慌てようからすると、どうやら昨日手渡しした魔石剣を早速使ったものと思われる。父親と騎士団長が怒鳴り込んできた時の事を思い出すわね。
「魔石とトレント木材を使った剣ですわよ。私の魔力で練り上げた、世界に三振りしかない剣の一本です」
隠す必要はないと、事実をさくっと言ってのける私。それを聞いたサクラの表情が固まっていた。
「剣の刃の部分は魔石ですから、魔力が馴染みやすくなってましてね」
固まっているサクラをよそに、私は魔石剣の特徴をいいところも悪いところも全部サクラにぶちまけている。
そうやって私が饒舌に喋っていると、
「ふーん、その剣について詳しく聞かせてもらいたいね」
唐突に後ろから声が聞こえてきた。その声に私は喋るのをやめて、ゆっくりと後ろへと振り返る。
「ひぇっ! ふぃ、フィレン殿下……」
私は変な声を出してしまった。その私の声に、フィレン王子の冷たい笑顔が向けられた。
「その魔石剣とやらを、見せてもらってもいいかな?」
「ひ、ひゃい!」
呂律が回らなくて変な返事になってしまった私だが、収納魔法から最後のひと振りを取り出した。
「こ、こちらでございます。本当は、殿下の誕生日にお贈りさせて頂くつもりでしたが、この場でお渡し致します……」
そう言いながら、改めて誕生日プレゼントを用意し直しかと、内心大きくため息を吐く私。だけれども、フィレン王子の顔を見ると、その内心のため息も見透かされているようだった。こ、怖い……。
フィレン王子は私から剣を受け取ると、すっと抜いて剣を眺めていた。教室の中で抜くのはやめてもらいたい。周りがめちゃくちゃ見てるじゃないですか、王子!!
「実にきれいだな、これが魔物の核と言われる魔石からできているとは信じられないね。うん、誕生日には早いけれど、ありがたく受け取っておくよ、アンマリア」
笑顔がものすごく怖い。これはなんだろうか。また怒られるフラグなのかしらね。私は引きつった笑いを浮かべながら、フィレン王子の言葉に適当に返しておいた。
「それにしても、あれの事も驚いたけれど、魔力を注ぎ込む事で物の形をあそこまで変えられるんだな。これでは職人が要らなくなってしまうな」
「あはは、誰だってできるわけではございませんよ。私は恩恵があるからこそいろいろな事ができるのであって、普通の人ができるようになるには、そこそこ魔力を増やした上で数か月から数年かけないと無理だと思いますよ」
フィレン王子が羨ましそうに私を見ながらそんな事を言ってくる。でも、この物の変形だってすぐできたわけじゃない。私には前世の知識による想像力があるからこそ、この反則的な魔力も相まって簡単にできてしまっているだけだった。
実際、魔石ペンの作り方をマスターした私の母親だって、変形させる事を満足にできるまで数か月を要している。魔石ペンを作れるようになったのも、ここ数年の事だもの。しかも、専門的にしていたのではなく、伯爵夫人としていろいろこなしながらな上にダイエットまでしていたので、かなり時間が掛かってしまったのだ。それだって、何度も私が手本を見せたからこそ成し得たものだ。軽々にできるものではないのだ。
「そうか。でも、学園が終わったら城に招待するよ。父上の前で、この剣について説明をして欲しい」
「ひっ!」
フィレン王子がすまし顔で言った事に、私はものすごく青ざめてしまった。国王の前に引きずり出されるなんて、まさか断罪ルートじゃないわよね?
「はははっ、そこまで身構える必要はないよ。父上の耳にはすでに騎士団長を通じて入っている。まあ、騎士団長の言い分からして、もう作るなと言われる事が濃厚だろうけれどね」
いやはや、本当にフィレン王子の笑顔が怖い。
「というわけで、放課後は空けておいてくれ」
「か、畏まりました、フィレン殿下」
爽やかに剣を携えたまま立ち去ってフィレン王子だったが、とてもじゃないけれど、私は生きた心地がしなかった。
「あ、あの、アンマリア様」
呆然と固まる私に、サクラが戸惑いながらも声を掛けてくる。
「わ、私も同行させて頂きますので、ね?」
サクラの申し出は嬉しいのだけれども、それよりも強いショックに、私はしばらく放心し続けていた。そのせいもあって、この日の授業は、私の頭に一切入ってこなかった。きちんと授業は受けているのにね。やっぱり、フィレン王子からあんな事を言われたのが相当にショックだったのだろう。とにかく、私の心の中には恐怖がこびりついてしまった。
放課後、モモを先に帰らせると、私はサクラと一緒にフィレン王子と合流する。サクラの同行は、例の剣の事もあってあっさり許可された。
(ううう、無事に戻れますように……)
私は祈るような気持ちで、馬車に揺られながらお城へと向かったのだった。
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