伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第三章 学園編

第94話 辺境伯の誕生日

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 いろいろあったものの、その週の休日の事、バッサーシ辺境伯の王都にある邸宅でサクラの誕生日パーティーが催される事となった。
 私だって友人の一人として参加せざるを得なかった。
「あら、アンマリアお嬢様。少しお痩せになられましたか?」
 ドレスを着せていた侍女の一人がそんな事を呟いた。どうやら、見る人によっては分かるらしい。ちなみに毎日私を見ているスーラの方が気が付いていない。
 私はぐふっぐふっと不気味な笑いをする。その笑いのせいでちょっと侍女に引かれてしまった。何よ、失礼ね。
 それはともかくとして、私は実際に痩せていたのよ。この日の体重は、なんと114kg!
 そう、なんとあれから5kgも痩せていたのよ!
 理由としては、多分、車椅子用の魔石100個と、魔石剣3本を作った事による魔力消費のおかげだろう。あれって思ったよりも繊細な魔力操作が必要だったのよ。何にしても、痩せた事は喜ばしかった。
 そういう事もあって私はルンルン気分でドレスを着付けさせられる。
 とはいえども、まだでっぷりしている事には変わりないのよね。元が120kgあって、今は114kg。見た目としてはあまり変わらないのよ。
 さて、サクラに贈る魔石剣は、収納魔法の中にしまわれている。フィレン王子に渡す分とは色を違えてあるので間違える事はない。それに、剣の幅と長さも違うものね。ちなみに最初に作った魔石剣は、騎士団長のサガリーが未だに持っている。返すつもりはないらしい。まっ、別にいいんだけれどね。騎士団長ならちゃんと扱ってくれるだろうし。
 私は身支度を整えると、両親やモモと一緒に馬車に乗り込んで、一路バッサーシ辺境伯邸を目指した。

 バッサーシ辺境伯邸に足を踏み入れる私たち。事前からある程度触れ込みもされていたし、さすが王国の軍事的要となる辺境伯の催し事である。かなり多くの参加者が集まっていた。
 バッサーシ辺境伯の脳筋っぷりからそういった人たちが多く集まると思っていたら、商人のような人たちも集まっている。さすが、国境を警備する屈強なる家のパーティー会場である。とはいえども、さすがに王族の参加は見られなかった。それでも側近である宰相や騎士団長が顔を見せているあたり、国としては重視している一族だという事がよく分かる。
 それにしても、辺境伯令嬢の誕生日にしてはなんか豪華すぎないだろうか。
「なんだ、マリーは知らなかったのか。今日はヒーゴ・バッサーシ辺境伯の誕生日なのだよ。娘のサクラと同日なんだ」
 な、なんですとーっ!
 ゲームの登場人物以外の誕生日はまったく把握していなかった私は、目玉が飛び出る勢いで驚いた。なるほど、国防の要である辺境伯の誕生日ならば、これだけ人が集まるのも納得がいくというものである。まったく、以前辺境伯領にお邪魔しておきながら、こんな事も把握できてなかったとは、くっ、痛恨の極みですわよ。こういうところをみると、やっぱりゲーム感覚が抜けきってないのだなと思ってしまう。うん、反省。
「まあまあ、辺境伯への贈り物は私たちに任せて、アンマリアはサクラ嬢に贈り物をすればいいわよ」
 私が慌てふためているのを見た母親は、私にそう耳打ちしてくれた。うん、いい両親だわ。
 この言葉に気を持ち直した私は、両親と一緒に会場でパーティーが始まるまで歓談をして過ごしていた。
 わあっと声が上がる。それを聞いて、私はパーティー会場の前の方を見る。バッサーシ辺境伯とその妻、それに娘のサクラが会場に入ったようである。それにしても、遠目から見ても分かるサクラの上腕二頭筋。カッチカチですわ。
 バッサーシ辺境伯が挨拶を終えると乾杯の音頭が取られ、歓談やら交渉やらダンスやらが始まった。本当にパーティーになると最終的にはどこ行っても同じような展開になってしまう。まあ、そうでもないと貴族同士ってあまり交流しないんだろうなと思う。
 しばらくすると、私は両親に連れられてバッサーシ辺境伯たちと挨拶をする。それが終わるとサクラとようやく話ができた。
 近くで見ると本当に腕がバッキバキである。ロンググローブが破けそう……。
「サクラ様、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます、アンマリア様」
 とりあえずお祝いの言葉を掛けておく私。そして、続けざまに収納魔法から魔石剣を取り出す。それを見た父親が、ぎょっとした表情で私を見ている。
「サクラ様にはこちらの剣をお贈りさせて頂きます。魔物と戦う時にお使い下さいな」
「まあ、剣ですか。正直こういう場で贈るようなものではないとは思いますが」
 意外とサクラは困惑していた。まあ、令嬢に剣を贈る事自体頭おかしいから仕方ないね。
「いいんですよ。護身用とでも思ってお納め下さい」
「そこまで言われるのでしたら、ありがたく頂戴致します」
 というわけで、サクラに剣を渡す事に成功した。彼女ならきっとこの剣を使いこなしてくれるわ。私は満足していたけれど、真横から向けられる父親の視線に冷や汗だらだらよ。
 案の定、家に帰る馬車の中で説教を食らう事になった。反省はしているけれど後悔はしていない。だって、タンルートやサクラ絡みのイベントの事を考えれば、これくらいしておいてもいいと思うもの。
 サクラに魔石剣を渡せた私は、本当に満足した気持ちで眠る事ができたのだった。
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