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第七章 3年目前半
第365話 メチルの謎
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ベジタリウス王国に帰還した王妃とメチルは、無事に城に戻っていた。
その途中、国境からベジタリウス側に行ったところには、往路でメチルとアルーで作った防護魔法がいまだに残っていた。すっかりトンネルと化していたのである。
「無事に戻ってこれましたね。しかし、あれだけの日数が経っているというのに、あの魔法はいまだに残っていましたね」
「あははは……。あれは私としても予想外でございます」
「ふふん。私の魔法は特別だからね。場合によってはああやって長く残ってしまうのよ」
困惑した表情の王妃とメチルの真ん中で、アルーが精一杯のドヤ顔を決めていた。まったく、精霊というのは魔族からしても理解不能なようだった。
そんな話をしていると、王妃の中にはある疑問が浮かび上がってくる。
「そういえば、メチルとアルーは、一体どのように知り合ったのですか?」
そう、一心同体ともいえる二人の関係性である。出会いから今に至るまで、そのすべてについて知りたくなってしまうのだ。
ところがだ。メチルとアルーは顔を見合わせると、そのまま首を捻り始めた。すんなり答えが返ってくるかと思ったら、そうでもなかったようだ。
「いつからでしたかね?」
「うーん、気が付いたら一緒でしたものね」
メチルたちは明確に答えられなかったのだ。本人たちも知らない間にこういう関係になっていたようだった。
「分かっているのは、私たちが運命共同体で、私がご主人様の魔力を使っていろいろな魔法を行使できるっていう事くらいですね」
「ええ、そのくらいですね」
困ったような顔をしながら、二人は王妃にそう答えていた。
「そうなのですね。分かりました」
王妃はそう言いながら、別の侍女を呼び寄せる。
「今回のサーロイン王国の訪問に同行してくれてありがとうございます。疲れているでしょうから、今日はおやすみなさい」
「えっ、でも、私は王妃様の侍女です。それに、魔族であるのでそんなに疲れては……」
「いいから休みなさい」
口答えしようとするメチルだったが、王妃からぴしゃりと言われてしまうと反抗できなかった。王妃が主人で、自分はあくまでも侍女なのである。主人に逆らうことは許されないのだ。
メチルは仕方なく王妃の命令に従い、自分の部屋へと戻っていった。
自室に戻ったメチルは、ベッドに腰を掛けている。
さすがに王妃付きの侍女ということで、それなりの個室が与えられている。その部屋の規模は、メチルの前世で住んでいたアパートとどっこいどっこいといった感じだった。
「はあ、自分って結局何者なのかしらね……」
メチルはそのまま横になって天井を見上げている。
「ご主人様……」
天井を見上げて呆然としているメチルに、アルーは心配そうな表情を向けている。
「前世持ちなのはいいとして、私ってば魔族としての自分の記憶があいまいなのよね。アルーと会った時の記憶だってないし、ゲームの中での私だって、聖女まがいの魔族としか説明されてなかったもの」
ごろんと転がるメチル。
「はあ、私ってば、本当に一体何なのかしら……」
改めて自分の正体に疑問を持つメチルである。
魔族だというのに治癒の魔法しか使えないし、他の魔族と違って精霊を使役している。魔族との共通点があるとはいえど、メチルというのはかなり異質な存在なのである。
「このまま魔族と対峙していけば、私の誕生の秘密が分かるのかしらね……。ゲームの中ではぽっと出だった上に、最後までまったく語られなかった魔族だものね」
「ご主人様……」
ぽつりぽつりと愚痴のように呟くメチルに、アルーは心配そうな表情を向けていた。
すると突然、メチルは体を起こした。
「あー、やめやめ。うだうだ悩むのは私の性に合わないわ。アルー、お風呂入るわよ、お風呂」
「りょ、了解です~」
これ以上辛気臭くなるのに耐えられなかったのか、メチルはやけを起こしたかのようにお風呂に入る事にしたのだ。
突然のメチルの行動に慌てながらも、アルーは魔法でお風呂を沸かしたのだった。
お風呂に入ってさっぱりしたメチルは、そのまま眠りにつく。
すると、その日の彼女は不思議な夢を見た。
「おお、これで私たちの夢が叶うのだな」
「古文書を漁りまくったかいがありましたね、あなた」
一組の夫婦が何か妙な事を言っている。
夢の視点は、その夫婦を見上げるような形になっていた。
(これは、私の古い記憶?)
おぼろげながら、そんな事を思うメチル。
その目の前で、夫婦が何やら妙な呪文を唱え始める。聞こえてはくるのだが、一体なんて言っているのか分からない。
その詠唱が終わった瞬間、夢の中とはいえ、体がふわりと浮き上がる感覚を味わう。
「なんだ、これは」
「嘘でしょ。ちゃんと詠唱は唱えたじゃないの。何が起きているの?」
夫婦が何かを叫んでいる。やがて、辺りが騒がしくなっていくのだが、まったく何も聞き取れない。
次の瞬間、夢の中の視界はぱたりと真っ暗になってしまう。
結局何が起きたのか分からないまま、夢の中でのメチルの意識はすっと消えていったのだった。
その途中、国境からベジタリウス側に行ったところには、往路でメチルとアルーで作った防護魔法がいまだに残っていた。すっかりトンネルと化していたのである。
「無事に戻ってこれましたね。しかし、あれだけの日数が経っているというのに、あの魔法はいまだに残っていましたね」
「あははは……。あれは私としても予想外でございます」
「ふふん。私の魔法は特別だからね。場合によってはああやって長く残ってしまうのよ」
困惑した表情の王妃とメチルの真ん中で、アルーが精一杯のドヤ顔を決めていた。まったく、精霊というのは魔族からしても理解不能なようだった。
そんな話をしていると、王妃の中にはある疑問が浮かび上がってくる。
「そういえば、メチルとアルーは、一体どのように知り合ったのですか?」
そう、一心同体ともいえる二人の関係性である。出会いから今に至るまで、そのすべてについて知りたくなってしまうのだ。
ところがだ。メチルとアルーは顔を見合わせると、そのまま首を捻り始めた。すんなり答えが返ってくるかと思ったら、そうでもなかったようだ。
「いつからでしたかね?」
「うーん、気が付いたら一緒でしたものね」
メチルたちは明確に答えられなかったのだ。本人たちも知らない間にこういう関係になっていたようだった。
「分かっているのは、私たちが運命共同体で、私がご主人様の魔力を使っていろいろな魔法を行使できるっていう事くらいですね」
「ええ、そのくらいですね」
困ったような顔をしながら、二人は王妃にそう答えていた。
「そうなのですね。分かりました」
王妃はそう言いながら、別の侍女を呼び寄せる。
「今回のサーロイン王国の訪問に同行してくれてありがとうございます。疲れているでしょうから、今日はおやすみなさい」
「えっ、でも、私は王妃様の侍女です。それに、魔族であるのでそんなに疲れては……」
「いいから休みなさい」
口答えしようとするメチルだったが、王妃からぴしゃりと言われてしまうと反抗できなかった。王妃が主人で、自分はあくまでも侍女なのである。主人に逆らうことは許されないのだ。
メチルは仕方なく王妃の命令に従い、自分の部屋へと戻っていった。
自室に戻ったメチルは、ベッドに腰を掛けている。
さすがに王妃付きの侍女ということで、それなりの個室が与えられている。その部屋の規模は、メチルの前世で住んでいたアパートとどっこいどっこいといった感じだった。
「はあ、自分って結局何者なのかしらね……」
メチルはそのまま横になって天井を見上げている。
「ご主人様……」
天井を見上げて呆然としているメチルに、アルーは心配そうな表情を向けている。
「前世持ちなのはいいとして、私ってば魔族としての自分の記憶があいまいなのよね。アルーと会った時の記憶だってないし、ゲームの中での私だって、聖女まがいの魔族としか説明されてなかったもの」
ごろんと転がるメチル。
「はあ、私ってば、本当に一体何なのかしら……」
改めて自分の正体に疑問を持つメチルである。
魔族だというのに治癒の魔法しか使えないし、他の魔族と違って精霊を使役している。魔族との共通点があるとはいえど、メチルというのはかなり異質な存在なのである。
「このまま魔族と対峙していけば、私の誕生の秘密が分かるのかしらね……。ゲームの中ではぽっと出だった上に、最後までまったく語られなかった魔族だものね」
「ご主人様……」
ぽつりぽつりと愚痴のように呟くメチルに、アルーは心配そうな表情を向けていた。
すると突然、メチルは体を起こした。
「あー、やめやめ。うだうだ悩むのは私の性に合わないわ。アルー、お風呂入るわよ、お風呂」
「りょ、了解です~」
これ以上辛気臭くなるのに耐えられなかったのか、メチルはやけを起こしたかのようにお風呂に入る事にしたのだ。
突然のメチルの行動に慌てながらも、アルーは魔法でお風呂を沸かしたのだった。
お風呂に入ってさっぱりしたメチルは、そのまま眠りにつく。
すると、その日の彼女は不思議な夢を見た。
「おお、これで私たちの夢が叶うのだな」
「古文書を漁りまくったかいがありましたね、あなた」
一組の夫婦が何か妙な事を言っている。
夢の視点は、その夫婦を見上げるような形になっていた。
(これは、私の古い記憶?)
おぼろげながら、そんな事を思うメチル。
その目の前で、夫婦が何やら妙な呪文を唱え始める。聞こえてはくるのだが、一体なんて言っているのか分からない。
その詠唱が終わった瞬間、夢の中とはいえ、体がふわりと浮き上がる感覚を味わう。
「なんだ、これは」
「嘘でしょ。ちゃんと詠唱は唱えたじゃないの。何が起きているの?」
夫婦が何かを叫んでいる。やがて、辺りが騒がしくなっていくのだが、まったく何も聞き取れない。
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