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第七章 3年目前半
第366話 大物出現
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はっと、目が覚めるメチル。うなされていたのか、寝起きの呼吸がとても荒かった。それに加えて汗をかいており、着ている寝間着も乱れていた。
(……何だったのかしら、あの夢は)
頭を押さえつつも起き上がるメチル。気にはなるけれども、夢が一体何だったのかはまったく分からなかった。
(目の前に居たのは人間? しかもどことなく私と似たところがあった。……まさか、私は人間だった?)
記憶が鮮明に残っているためか、激しく混乱しているメチル。
その様子が気になったのか、アルーが姿を見せる。
「大丈夫ですか、ご主人様」
その声に、ふと顔を向けるメチル。そこには、心配そうな視線を向けてくるアルーの姿があった。
「ええ、大丈夫よ。ちょっと変な夢を見ただけだから」
ため息を一つ吐くと、メチルはいつも通りの笑顔をアルーに見せていた。そのメチルの態度に、こてんと首をかしげているアルー。どうにも気になって仕方がないようだった。
「……確認するけど、夢の内容を聞いてみる?」
「はい、聞きたいです」
困ったメチルが確認してみると、アルーは両手の拳を握って鼻息荒く答えていた。
しょうがないので、メチルは着替えながらアルーに夢の内容を語ったのだった。
話を聞いたアルーは、顎に手を添えて考え込んでいる。
「アルー。そろそろ仕事が始まるから、私は行くわよ」
「むぅ、分かりました。では、私は一度姿を消して、ご主人様のお話の事を考えてますね」
「了解。なるべく呼ばないようにはするから、ゆっくり考えててね」
話をし終えると、アルーは姿を消す。そして、メチルは王妃の専属侍女としての仕事へと向かったのだった。
一日の仕事を無事に終わらせるメチル。
その真面目な仕事っぷりは、日に日に評価を高めているようだ。さすがは元日本人社畜である。
夜も遅くなって王妃がようやく眠りにつくと、一日やり切った感を表情に出しながら自分の部屋へと戻っていった。
「はあ~~、王妃様のお付きだとまだ仕事は少ないけれど、まだまだ慣れないだけに緊張するわね」
部屋の椅子に座りながら、背伸びをするメチル。首を左右に傾けると、首や肩が凄い音を立てていた。見た目が若いだけに、これには思わず苦笑いするメチルである。
「お疲れ様です、ご主人様。お風呂をご用意しておきました」
「ありがとう、アルー」
お風呂に入ってさっぱりしたメチルは、寝間着に着替えてベッドに転がる。
「……そういえば、昼間は仕事に一生懸命で、夢の事を振り返る時間がなかったわね」
ゆっくりできる時間のためか、ふと朝の事を思い出してしまうメチル。
「あのー……。その事でご主人様、お話が……」
メチルの呟きに、アルーがおそるおそる近付きながら声を掛けてきた。
「どうしたの、アルー」
きょとんとした表情で、目を素早く瞬きさせるメチル。一体何事なのかと思ったからだ。
「いえ、ご主人様が見た夢なんですけれど、もしかしたら……と思ったんです」
なんとも意味ありげな事を深刻な表情で伝えてくるアルーである。
「なんなの、アルー。はっきり言ってくれないかな」
どうにも歯切れが悪いアルーに、メチルは思いっきり迫っていく。
メチルの気迫が怖いものだから、思わずびびってしまうアルー。しかし、さすがに自分の主なので、意を決して話をする事にした。
「実は、ご主人様がお仕事中に、私たち精霊の王様にお話をしたんです」
「精霊王様? そんな方がいらっしゃるというの?」
思わずびっくりして尋ねてしまうメチル。それに対して、アルーは無言でこくりと頷いた。
「精霊王様は、とても興味を持たれていましたね。そして、私にこう仰られました」
「「禁呪を使ったのではないか」……と」
突然、声が重なる。
アルーは驚いて後ろを振り向くと、そこにはとても美しい顔立ちをした、羽を持った男性が立っていた。
「せ、せ、せ……、精霊王様?!」
驚きのあまり、アルーはメチルの後ろに飛んで隠れる。そして、びくびくとしながら、顔を覗かせていた。
「この方が、精霊王様……」
思わず呆けてしまうメチル。そのくらいに目の前の男性が美しすぎるのだ。
あまりにも凝視するメチルに気に留める様子もなく、精霊王は話を始める。
「なるほどな、確かに魔族としては貧弱な娘だな。だが、そやつとつながりを持っているというのも面白い。我ら精霊というものは、本来誰にもとらわれぬ者なのだからな」
精霊王はそう言うと、メチルに対して魔法で何かを生み出していた。それは、1枚の紙きれのようだった。
「その答えが知りたければ、そこへ行くといい」
「えっ……」
メチルの手に渡ったその紙きれは、どうやら地図のようだった。
「我ら精霊の記憶にも残っている、魔力事故のあった現場だ。それ以上の事は、お前のその目で確認するがよい」
精霊王はそうとだけ言い残すと、すっと姿を消してしまった。
その場から魔力の圧力が消えると、アルーが安心したように姿を見せた。
「ふぅ……、お昼にお話した時もですが、とても怖かったです。それにしても地図ですか……。一体そこに何があるのでしょうね」
アルーも気になる、精霊王から渡された地図。
精霊王の言っていた答えというのは一体何なのか。メチルは気になってその日は寝付けなかったのだった。
(……何だったのかしら、あの夢は)
頭を押さえつつも起き上がるメチル。気にはなるけれども、夢が一体何だったのかはまったく分からなかった。
(目の前に居たのは人間? しかもどことなく私と似たところがあった。……まさか、私は人間だった?)
記憶が鮮明に残っているためか、激しく混乱しているメチル。
その様子が気になったのか、アルーが姿を見せる。
「大丈夫ですか、ご主人様」
その声に、ふと顔を向けるメチル。そこには、心配そうな視線を向けてくるアルーの姿があった。
「ええ、大丈夫よ。ちょっと変な夢を見ただけだから」
ため息を一つ吐くと、メチルはいつも通りの笑顔をアルーに見せていた。そのメチルの態度に、こてんと首をかしげているアルー。どうにも気になって仕方がないようだった。
「……確認するけど、夢の内容を聞いてみる?」
「はい、聞きたいです」
困ったメチルが確認してみると、アルーは両手の拳を握って鼻息荒く答えていた。
しょうがないので、メチルは着替えながらアルーに夢の内容を語ったのだった。
話を聞いたアルーは、顎に手を添えて考え込んでいる。
「アルー。そろそろ仕事が始まるから、私は行くわよ」
「むぅ、分かりました。では、私は一度姿を消して、ご主人様のお話の事を考えてますね」
「了解。なるべく呼ばないようにはするから、ゆっくり考えててね」
話をし終えると、アルーは姿を消す。そして、メチルは王妃の専属侍女としての仕事へと向かったのだった。
一日の仕事を無事に終わらせるメチル。
その真面目な仕事っぷりは、日に日に評価を高めているようだ。さすがは元日本人社畜である。
夜も遅くなって王妃がようやく眠りにつくと、一日やり切った感を表情に出しながら自分の部屋へと戻っていった。
「はあ~~、王妃様のお付きだとまだ仕事は少ないけれど、まだまだ慣れないだけに緊張するわね」
部屋の椅子に座りながら、背伸びをするメチル。首を左右に傾けると、首や肩が凄い音を立てていた。見た目が若いだけに、これには思わず苦笑いするメチルである。
「お疲れ様です、ご主人様。お風呂をご用意しておきました」
「ありがとう、アルー」
お風呂に入ってさっぱりしたメチルは、寝間着に着替えてベッドに転がる。
「……そういえば、昼間は仕事に一生懸命で、夢の事を振り返る時間がなかったわね」
ゆっくりできる時間のためか、ふと朝の事を思い出してしまうメチル。
「あのー……。その事でご主人様、お話が……」
メチルの呟きに、アルーがおそるおそる近付きながら声を掛けてきた。
「どうしたの、アルー」
きょとんとした表情で、目を素早く瞬きさせるメチル。一体何事なのかと思ったからだ。
「いえ、ご主人様が見た夢なんですけれど、もしかしたら……と思ったんです」
なんとも意味ありげな事を深刻な表情で伝えてくるアルーである。
「なんなの、アルー。はっきり言ってくれないかな」
どうにも歯切れが悪いアルーに、メチルは思いっきり迫っていく。
メチルの気迫が怖いものだから、思わずびびってしまうアルー。しかし、さすがに自分の主なので、意を決して話をする事にした。
「実は、ご主人様がお仕事中に、私たち精霊の王様にお話をしたんです」
「精霊王様? そんな方がいらっしゃるというの?」
思わずびっくりして尋ねてしまうメチル。それに対して、アルーは無言でこくりと頷いた。
「精霊王様は、とても興味を持たれていましたね。そして、私にこう仰られました」
「「禁呪を使ったのではないか」……と」
突然、声が重なる。
アルーは驚いて後ろを振り向くと、そこにはとても美しい顔立ちをした、羽を持った男性が立っていた。
「せ、せ、せ……、精霊王様?!」
驚きのあまり、アルーはメチルの後ろに飛んで隠れる。そして、びくびくとしながら、顔を覗かせていた。
「この方が、精霊王様……」
思わず呆けてしまうメチル。そのくらいに目の前の男性が美しすぎるのだ。
あまりにも凝視するメチルに気に留める様子もなく、精霊王は話を始める。
「なるほどな、確かに魔族としては貧弱な娘だな。だが、そやつとつながりを持っているというのも面白い。我ら精霊というものは、本来誰にもとらわれぬ者なのだからな」
精霊王はそう言うと、メチルに対して魔法で何かを生み出していた。それは、1枚の紙きれのようだった。
「その答えが知りたければ、そこへ行くといい」
「えっ……」
メチルの手に渡ったその紙きれは、どうやら地図のようだった。
「我ら精霊の記憶にも残っている、魔力事故のあった現場だ。それ以上の事は、お前のその目で確認するがよい」
精霊王はそうとだけ言い残すと、すっと姿を消してしまった。
その場から魔力の圧力が消えると、アルーが安心したように姿を見せた。
「ふぅ……、お昼にお話した時もですが、とても怖かったです。それにしても地図ですか……。一体そこに何があるのでしょうね」
アルーも気になる、精霊王から渡された地図。
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