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第七章 3年目前半
第364話 鬼教官
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それからしばらくの間は、普段通りの生活が続いていた。
ただ、いつ魔族との戦いになるか分からないので、魔法の鍛錬だけは怠れなかった。それと、私は念のために剣術や体術も磨いておく。
そもそも太っていても俊敏に動ける器用なデブだったアンマリアだ。私になってもそれはまったく変わらなくて、ましてやほっそりとした状態で落ち着いた今なら、以前よりも軽く体が動くというものだった。
「すごいですね、アンマリア様」
「ええ、気合いが入ってますね」
この日はライバル令嬢たちに加えて、エスカとミズーナ王女も一緒に鍛錬に打ち込んでいた。なにせ、テトロを倒した事で本格的に魔族との対決が始まるかと思うと、とても気を抜いていられない状況なのだから。
ライバル令嬢たちの方は、バッサーシ辺境伯の娘であるサクラ以外は、基本的に魔法タイプだ。なので、私の剣の相手となると、自然とサクラと組む事になってしまう。
とはいえ、交流講義で幾度となく手を合わせている相手だけに、お互いの手の内は大体分かってしまう。これでは訓練にはならなさそうだった。
そこへ、思わぬ人物が姿を見せた。
「ふむ、精が出ているようだな。実に感心だ」
「おば様」
ミスミ・バッサーシが姿を見せたのだった。
「ミスミ教官、どうしてこちらに?」
サクラ同様に私も驚いたので、ついつい理由を尋ねてしまう。すると、ミスミ教官は落ち着いた様子で話を始めた。
「いや、なんか強い奴と戦うらしいと聞いてな。私もバッサーシの血筋としては黙っていられなくなったのだよ」
ミスミ教官の話を聞いて、思わずサクラと顔を見合わせてしまう私。そして、つい吹き出してしまった。
「おい、何がおかしいんだ。……どうやら、手加減は要らないと見たぞ」
怒ったように言いながらも、顔はしっかり笑っているミスミ教官である。そして、私たちを見て剣を構えていた。
「ふふっ、二人がどの程度の成長を見せたのか、私が直に相手をしてあげよう。さあ、かかってきなさい」
さすがは脳筋の一族。話も早いが、戦闘態勢に入るのも早い。さらにいえば、有無を言わさず攻撃を仕掛けてきた。
「かかってきなさいって、襲い掛かってきてるじゃないですか」
思わずツッコミを入れてしまう私。
「そんな事言ってる場合じゃありませんよ、アンマリア様!」
サクラに大声で怒鳴られる。無理もない、もう目と鼻先にミスミ教官が迫っているのだから。
「この脳筋一族は!」
私はそう叫びながら、ミスミ教官の剣を受け止める。
「ほう、さすがだな」
「なんで本物の剣で斬りかかってくるんですか。普通なら問題になりますよ、これは」
「ふははは、アンマリア・ファッティなら受け止めると思っていたからね。さあ、剣術ならば私がたっぷり鍛えてあげようじゃないか」
ああ、もう。ミスミ教官の目が怖い。バーサーカーモードじゃないのよ、これは。
ちらりと視線を向ければ、サクラも呆れているようだった。私たちとの付き合いがあるせいか、サクラの方はまだ一般常識が備わっているようだ。
「よそ見とは感心しないな。ビシバシいかせてもらうぞ」
「おば様、落ち着いて下さい。傍から見たら訓練には見えませんから」
顔が怖いミスミ教官に、さすがのサクラもツッコミを入れざるを得ないようだった。
「何を言う。魔族とかいうのはとんでもない強さなのだろう? だったら、私も本気を出さねばいかぬだろう」
どういう理論なんですかとツッコミを入れたい。
なんで魔族が強い事と、真剣で訓練する事が結びつくんですかね、この脳筋騎士は。
私は訓練用の模擬剣でどうにか凌いではいるけれど、さすがにミスミ教官の攻撃にはこれ以上耐えられそうになかった。
「模擬剣みたいななまくらじゃ、ミスミ教官の攻撃に耐えられませんね」
私はそう言うと、魔法を使って剣を強化して、どうにかミスミ教官の攻撃から退避する。
その剣を確認すると、もう折れそうなくらいにばきばきにひびが入っていた。もう少し遅ければ完全に砕けていたでしょうね。
「サクラ様、魔石剣を出して下さい。じゃないと、本気で剣を折られますよ」
「わ、分かりました」
私の呼び掛けに応じて、サクラは魔石剣を取り出す。それと同時にミスミ教官の攻撃がサクラに襲い掛かっていた。
「くっ……」
どうにか防御が間に合うサクラ。姪っ子にいくらなんでも殺意高すぎませんか?!
「はははっ、さすがは私の姪だな。あの体勢から防ぐとは」
高らかに笑うミスミ教官。本当に楽しそうでなによりですね。
「さあさあ、この程度で終わりだなんて思ってないだろうね。魔族なんぞ怖がらせるくらいに鍛えてやるから、覚悟しなさい」
完全に目が血走っているミスミ教官だった。
結局この後、魔法訓練をしていたサクラたちが帰っても、私たちはミスミ教官に付き合わされ続けた。
なんだかんだで家に戻る事ができたのは、完全に陽が沈んでからだった。
そんなわけで、疲れてはいたものの私は短距離移動の瞬間移動魔法でサクラを家まで送り、自分も無事に帰宅できたわけだった。
はあ、ミスミ教官、鬼すぎるわ……。
ただ、いつ魔族との戦いになるか分からないので、魔法の鍛錬だけは怠れなかった。それと、私は念のために剣術や体術も磨いておく。
そもそも太っていても俊敏に動ける器用なデブだったアンマリアだ。私になってもそれはまったく変わらなくて、ましてやほっそりとした状態で落ち着いた今なら、以前よりも軽く体が動くというものだった。
「すごいですね、アンマリア様」
「ええ、気合いが入ってますね」
この日はライバル令嬢たちに加えて、エスカとミズーナ王女も一緒に鍛錬に打ち込んでいた。なにせ、テトロを倒した事で本格的に魔族との対決が始まるかと思うと、とても気を抜いていられない状況なのだから。
ライバル令嬢たちの方は、バッサーシ辺境伯の娘であるサクラ以外は、基本的に魔法タイプだ。なので、私の剣の相手となると、自然とサクラと組む事になってしまう。
とはいえ、交流講義で幾度となく手を合わせている相手だけに、お互いの手の内は大体分かってしまう。これでは訓練にはならなさそうだった。
そこへ、思わぬ人物が姿を見せた。
「ふむ、精が出ているようだな。実に感心だ」
「おば様」
ミスミ・バッサーシが姿を見せたのだった。
「ミスミ教官、どうしてこちらに?」
サクラ同様に私も驚いたので、ついつい理由を尋ねてしまう。すると、ミスミ教官は落ち着いた様子で話を始めた。
「いや、なんか強い奴と戦うらしいと聞いてな。私もバッサーシの血筋としては黙っていられなくなったのだよ」
ミスミ教官の話を聞いて、思わずサクラと顔を見合わせてしまう私。そして、つい吹き出してしまった。
「おい、何がおかしいんだ。……どうやら、手加減は要らないと見たぞ」
怒ったように言いながらも、顔はしっかり笑っているミスミ教官である。そして、私たちを見て剣を構えていた。
「ふふっ、二人がどの程度の成長を見せたのか、私が直に相手をしてあげよう。さあ、かかってきなさい」
さすがは脳筋の一族。話も早いが、戦闘態勢に入るのも早い。さらにいえば、有無を言わさず攻撃を仕掛けてきた。
「かかってきなさいって、襲い掛かってきてるじゃないですか」
思わずツッコミを入れてしまう私。
「そんな事言ってる場合じゃありませんよ、アンマリア様!」
サクラに大声で怒鳴られる。無理もない、もう目と鼻先にミスミ教官が迫っているのだから。
「この脳筋一族は!」
私はそう叫びながら、ミスミ教官の剣を受け止める。
「ほう、さすがだな」
「なんで本物の剣で斬りかかってくるんですか。普通なら問題になりますよ、これは」
「ふははは、アンマリア・ファッティなら受け止めると思っていたからね。さあ、剣術ならば私がたっぷり鍛えてあげようじゃないか」
ああ、もう。ミスミ教官の目が怖い。バーサーカーモードじゃないのよ、これは。
ちらりと視線を向ければ、サクラも呆れているようだった。私たちとの付き合いがあるせいか、サクラの方はまだ一般常識が備わっているようだ。
「よそ見とは感心しないな。ビシバシいかせてもらうぞ」
「おば様、落ち着いて下さい。傍から見たら訓練には見えませんから」
顔が怖いミスミ教官に、さすがのサクラもツッコミを入れざるを得ないようだった。
「何を言う。魔族とかいうのはとんでもない強さなのだろう? だったら、私も本気を出さねばいかぬだろう」
どういう理論なんですかとツッコミを入れたい。
なんで魔族が強い事と、真剣で訓練する事が結びつくんですかね、この脳筋騎士は。
私は訓練用の模擬剣でどうにか凌いではいるけれど、さすがにミスミ教官の攻撃にはこれ以上耐えられそうになかった。
「模擬剣みたいななまくらじゃ、ミスミ教官の攻撃に耐えられませんね」
私はそう言うと、魔法を使って剣を強化して、どうにかミスミ教官の攻撃から退避する。
その剣を確認すると、もう折れそうなくらいにばきばきにひびが入っていた。もう少し遅ければ完全に砕けていたでしょうね。
「サクラ様、魔石剣を出して下さい。じゃないと、本気で剣を折られますよ」
「わ、分かりました」
私の呼び掛けに応じて、サクラは魔石剣を取り出す。それと同時にミスミ教官の攻撃がサクラに襲い掛かっていた。
「くっ……」
どうにか防御が間に合うサクラ。姪っ子にいくらなんでも殺意高すぎませんか?!
「はははっ、さすがは私の姪だな。あの体勢から防ぐとは」
高らかに笑うミスミ教官。本当に楽しそうでなによりですね。
「さあさあ、この程度で終わりだなんて思ってないだろうね。魔族なんぞ怖がらせるくらいに鍛えてやるから、覚悟しなさい」
完全に目が血走っているミスミ教官だった。
結局この後、魔法訓練をしていたサクラたちが帰っても、私たちはミスミ教官に付き合わされ続けた。
なんだかんだで家に戻る事ができたのは、完全に陽が沈んでからだった。
そんなわけで、疲れてはいたものの私は短距離移動の瞬間移動魔法でサクラを家まで送り、自分も無事に帰宅できたわけだった。
はあ、ミスミ教官、鬼すぎるわ……。
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