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第九章 拡張版ミズーナ編
第450話 建国祭から戻って
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建国祭で抜けていた分、学園ので講義に遅れが出てしまった三人。しかし、そこは王妃教育で城に住み込みとなっているアンマリアとサキが面倒を見てくれていた。
まったく、王妃教育で結構一日中忙しいはずなのに、ご苦労な事である。
「本当にすみませんね、アンマリア」
「国家行事だから仕方ないものね。後輩の勉強くらい見てあげますよ」
ミズーナ王女が申し訳なさそうにすると、アンマリアは気にしないでといった表情で話している。さすが第一王子の婚約者となっただけはある。
「まあ、ボクもいますからね。復習ついでに教えるくらいならしますよ」
そういうのはリブロ王子である。そういえば年齢が一つ下なので、ミズーナ王女たちとは同い年なのである。
とりあえず簡単に話を済ませたミズーナ王女たちは、しばらく黙々と勉強をしている。
しばらくすると、当然のようにエスカが簡単に音を上げてくれていた。
「だーっ、こういう黙々とした作業は大っ嫌いないのよ……」
両手を上げて叫んだかと思うと、そのままばったりとテーブルに突っ伏している。転生前の性格というよりは、これがエスカの性質といったところだろうか。
「ミール王国の王子王女はゲームの中でも飽き性でしたからね。ある意味ゲーム補正ってところでしょうかね」
「……まあ確かに。前世の私はここまで飽き性じゃなかったわよ。でなきゃ地味にコツコツやるような会社員なんかしてなかったわよ。営業をしてた頃は案件取るために粘っていたくらいだもの」
突っ伏しながらぐちぐちと文句を言っているエスカである。これにはミズーナ王女もアンマリアも、付き添っているメチルも呆れて見ているようだった。
エスカの愚痴について、リブロはまったく何を言っているのか理解できなかった。ある程度前世の話を知っているサキですら、よく分からない単語が出てきたので理解不能である。
ただ、転生組であるアンマリア、ミズーナ王女、メチルの三人は分かった上で呆れた表情である。その表情を見て、何かろくでもないことを言っているんだなという雰囲気だけを理解していた。
「とりあえず愚痴は聞いてあげるけど、それとこれは別よ。はいはい、頑張ってちょうだい」
しかし、アンマリアは非情にも手を二度叩いて勉強を再開させる。エスカはぐでっと突っ伏したままではあるものの、アンマリアは遠慮はなかった。
「私だって王妃教育の忙しい合間を縫って見ているのよ。受ける気がないんだったらエスカの方が出ていってちょうだい。赤点とっても私は助けないわよ」
「勉強は嫌だけど赤点はもっと嫌!」
アンマリアがタンタンとミズーナ王女の勉強を見ながら告げると、エスカはテーブルに手をついて立ち上がりながら主張している。
「だったら、勉強を頑張ってちょうだい。同郷のよしみでやってるんだからね。完全な赤の他人だったらこんな事してないわよ」
「むむむむ……」
エスカはものすごく悔しそうな表情をしている。
「それに、あんたがそんな状態じゃ、エスカに負けた魔王もプライドがずたずたでしょうね。話はエスカ一人の問題じゃないの、諦めて頑張りなさい」
「くぅ……、しょうがないわね」
折れたエスカは仕方なく教科書と向かい合っていた。
エスカの手綱をうまくとっているアンマリアに、ミズーナ王女たちはとても感心しているようだ。さすが次期王妃は格が違ったのである。
こうして、無事に授業の遅れを取り戻したミズーナ王女とエスカである。
勉強が落ち着いたところで、メチルはアンマリアとフィレン王子に呼び出された。
それというのも、ミール王国の建国祭での話を聞くためだ。
はっきり言って、今年はサーロイン王国の関係者は参加していないために、他国の事を聞く必要はないはずである。
ぶっちゃけていえば、アンマリアとフィレン王子による個人的な興味だ。今までの経験上、こういう催し物の場で何事もなく終わった経験が少ない。無事に終わったのは剣術大会くらいだ。なので、メチルに話を聞いているというわけである。
二人から話を求められたメチルは、大きくため息をついていた。
「やっぱり何かありましたのね」
「ええ、まあ。なかなかにとんでもないことでしたけれど」
隠していても仕方がないし、アンマリアにも関係ないことではなかった。なので、メチルは建国祭であった事を全部話していた。メチルが話したその内容に、アンマリアは思わず胸をなでおろしていた。
「転生者だけに影響する瘴気ですか。またなんともピンポイントなものを……」
「私は魔族でもあったので影響は小さめでしたけれどね。ただ、その上で大量の魔物を呼び寄せていましたので、もし対処できなければミール王国を超えてサーロイン王国にも被害が出ていた可能性はあります」
メチルの話した推測に、フィレン王子もその表情を青くしていた。転生者に対して反応しているのであれば、アンマリアも十分対象になっている可能性があったからだ。サーロイン王国に被害が及んだ可能性は否定できないのである。
「いやよく防いでくれた。感謝する」
「まっ、私たちですからね」
フィレン王子の謝意に反応して、アルーが姿を見せる。
「でも、本当に申し訳ないわね。私たちベジタリウス王国が原因でいろいろ迷惑をかけてしまって」
アルーはメチルの頭の上で謝罪している。
それもそうだ。そもそもはアルーの本体であるメチルの両親が急に魔王の復活を試みたのが根本の原因なのだから。
しかし、そのすべてが実質未遂に終わったために、フィレン王子はメチルもアルーも責めることはしなかった。
その話の後、アルーがメチルとアーサリーがいい雰囲気だったことを暴露すると、メチルはアルーの口を慌てて塞いでいた。
そっちもそっちで進展があったようで、顔を赤くするメチルを見ながらアンマリアとフィレン王子は実に楽しそうに笑っていたのだった。
ミズーナ王女が主役となる最終年。もう後は何事もなく無事に終わることを祈るばかりである。
まったく、王妃教育で結構一日中忙しいはずなのに、ご苦労な事である。
「本当にすみませんね、アンマリア」
「国家行事だから仕方ないものね。後輩の勉強くらい見てあげますよ」
ミズーナ王女が申し訳なさそうにすると、アンマリアは気にしないでといった表情で話している。さすが第一王子の婚約者となっただけはある。
「まあ、ボクもいますからね。復習ついでに教えるくらいならしますよ」
そういうのはリブロ王子である。そういえば年齢が一つ下なので、ミズーナ王女たちとは同い年なのである。
とりあえず簡単に話を済ませたミズーナ王女たちは、しばらく黙々と勉強をしている。
しばらくすると、当然のようにエスカが簡単に音を上げてくれていた。
「だーっ、こういう黙々とした作業は大っ嫌いないのよ……」
両手を上げて叫んだかと思うと、そのままばったりとテーブルに突っ伏している。転生前の性格というよりは、これがエスカの性質といったところだろうか。
「ミール王国の王子王女はゲームの中でも飽き性でしたからね。ある意味ゲーム補正ってところでしょうかね」
「……まあ確かに。前世の私はここまで飽き性じゃなかったわよ。でなきゃ地味にコツコツやるような会社員なんかしてなかったわよ。営業をしてた頃は案件取るために粘っていたくらいだもの」
突っ伏しながらぐちぐちと文句を言っているエスカである。これにはミズーナ王女もアンマリアも、付き添っているメチルも呆れて見ているようだった。
エスカの愚痴について、リブロはまったく何を言っているのか理解できなかった。ある程度前世の話を知っているサキですら、よく分からない単語が出てきたので理解不能である。
ただ、転生組であるアンマリア、ミズーナ王女、メチルの三人は分かった上で呆れた表情である。その表情を見て、何かろくでもないことを言っているんだなという雰囲気だけを理解していた。
「とりあえず愚痴は聞いてあげるけど、それとこれは別よ。はいはい、頑張ってちょうだい」
しかし、アンマリアは非情にも手を二度叩いて勉強を再開させる。エスカはぐでっと突っ伏したままではあるものの、アンマリアは遠慮はなかった。
「私だって王妃教育の忙しい合間を縫って見ているのよ。受ける気がないんだったらエスカの方が出ていってちょうだい。赤点とっても私は助けないわよ」
「勉強は嫌だけど赤点はもっと嫌!」
アンマリアがタンタンとミズーナ王女の勉強を見ながら告げると、エスカはテーブルに手をついて立ち上がりながら主張している。
「だったら、勉強を頑張ってちょうだい。同郷のよしみでやってるんだからね。完全な赤の他人だったらこんな事してないわよ」
「むむむむ……」
エスカはものすごく悔しそうな表情をしている。
「それに、あんたがそんな状態じゃ、エスカに負けた魔王もプライドがずたずたでしょうね。話はエスカ一人の問題じゃないの、諦めて頑張りなさい」
「くぅ……、しょうがないわね」
折れたエスカは仕方なく教科書と向かい合っていた。
エスカの手綱をうまくとっているアンマリアに、ミズーナ王女たちはとても感心しているようだ。さすが次期王妃は格が違ったのである。
こうして、無事に授業の遅れを取り戻したミズーナ王女とエスカである。
勉強が落ち着いたところで、メチルはアンマリアとフィレン王子に呼び出された。
それというのも、ミール王国の建国祭での話を聞くためだ。
はっきり言って、今年はサーロイン王国の関係者は参加していないために、他国の事を聞く必要はないはずである。
ぶっちゃけていえば、アンマリアとフィレン王子による個人的な興味だ。今までの経験上、こういう催し物の場で何事もなく終わった経験が少ない。無事に終わったのは剣術大会くらいだ。なので、メチルに話を聞いているというわけである。
二人から話を求められたメチルは、大きくため息をついていた。
「やっぱり何かありましたのね」
「ええ、まあ。なかなかにとんでもないことでしたけれど」
隠していても仕方がないし、アンマリアにも関係ないことではなかった。なので、メチルは建国祭であった事を全部話していた。メチルが話したその内容に、アンマリアは思わず胸をなでおろしていた。
「転生者だけに影響する瘴気ですか。またなんともピンポイントなものを……」
「私は魔族でもあったので影響は小さめでしたけれどね。ただ、その上で大量の魔物を呼び寄せていましたので、もし対処できなければミール王国を超えてサーロイン王国にも被害が出ていた可能性はあります」
メチルの話した推測に、フィレン王子もその表情を青くしていた。転生者に対して反応しているのであれば、アンマリアも十分対象になっている可能性があったからだ。サーロイン王国に被害が及んだ可能性は否定できないのである。
「いやよく防いでくれた。感謝する」
「まっ、私たちですからね」
フィレン王子の謝意に反応して、アルーが姿を見せる。
「でも、本当に申し訳ないわね。私たちベジタリウス王国が原因でいろいろ迷惑をかけてしまって」
アルーはメチルの頭の上で謝罪している。
それもそうだ。そもそもはアルーの本体であるメチルの両親が急に魔王の復活を試みたのが根本の原因なのだから。
しかし、そのすべてが実質未遂に終わったために、フィレン王子はメチルもアルーも責めることはしなかった。
その話の後、アルーがメチルとアーサリーがいい雰囲気だったことを暴露すると、メチルはアルーの口を慌てて塞いでいた。
そっちもそっちで進展があったようで、顔を赤くするメチルを見ながらアンマリアとフィレン王子は実に楽しそうに笑っていたのだった。
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