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第九章 拡張版ミズーナ編
第449話 したりしてやられたり
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最初に王子と王女が踊るのがパターンな王族主催のイベント。なので、アーサリーとエスカが踊ることになるわけである。
本来ならば二人がペアを組んで踊れば問題ないのだろうが、エスカがミズーナ王女を相手に選んでしまったことで、アーサリーが困ってしまった。
「あら、お兄様にはお相手がいるじゃございませんの」
意地悪そうに笑うエスカがすっと視線を向けた先、そこにはシイラに付き添われたメチルが立っていた。
「ちょっ、おまっ」
慌てたように振り返るアーサリーだったが、すでに遅い。シイラに付き添われたメチルが既にこっちに近付いてきていた。なぜなら、国王と王妃が手招きをしたからだ。
こうなると、アーサリーはメチルと踊らなければならなくなる。もはや逃げられない。
「アーサリー殿下、覚悟をお決め下さいませ」
シイラにまでこう言われる始末のアーサリー。腰の引けているアーサリーではあるが、ここは建国祭の場であり、国中の貴族たちの注目が集まっている場だ。アーサリーは覚悟を決めなければならなかった。
メチルも恥ずかしながらも、しっかりとカーテシーをしてアーサリーの前に立っている。
さすがにこの状況にもう逃げられないと覚悟したアーサリーは、すごく複雑な表情をしながらメチルに手を差し出した。
「こ、今回だけだ。勘違いするなよ、お前を認めたわけじゃないからな」
すごく嫌そうな表情をしているアーサリー。さすがに令嬢に対して向ける表情ではない。
ところが、その顔を見て思わず笑ってしまうメチルである。
「ありがとうございます。おかげさまで緊張が取れました」
にこっと微笑むメチルである。
その顔を見たアーサリーが思わずドキッとしたのを見て、エスカがにやにやと眺めている。
「おほん」
だが、いつまで経っても動こうとしない子どもたちに業を煮やしたミール国王が大きな咳払いをする。
その行動に、エスカはミズーナ王女を連れて前へと出ていく。
エスカの動きにつられるように、アーサリーもやむなくメチルの手を取って会場の真ん中へと出ていく。もうどうにでもなれという精神だった。
国王から視線を向けられて、ミール王国の楽団が演奏を始める。
それと同時に、エスカとミズーナ王女、アーサリーとメチルという二組のダンスが始まる。
多くのミール王国の貴族たちが見守る中、メチルは緊張した様子でアーサリーと踊っている。先立ってシイラと踊っておいたのが功を奏したのか、メチルはだいぶ落ち着いて踊れているようだ。むしろ危ないのはアーサリーの方のようである。
「まったく、アーサリーはダンスをさぼり過ぎなのよ」
「うるせえよ」
踊りながらエスカにツッコミを食らうアーサリー。それに対して真っ赤になりながら文句を言うアーサリーである。
こういったやり取りを目の前で見て、メチルの緊張はさらにほぐれていく。
そして、無事にダンスが終わると、会場からは拍手が沸き起こる。この光景に、メチルはやり切ったといわんばかりの満面の笑みをこぼしていた。
魔族とはいえ、姿自体は年頃の少女である。その姿に思わずドキッとしてしまうアーサリーだった。
その姿を見たエスカとミズーナ王女がにやにやとした表情でアーサリーを見ている。
「おい、なんて顔をしてるんだよ」
「べーつにー?」
ぎろりと睨むアーサリーに、エスカとミズーナ王女はともにとぼけるのだった。
こうして無事に建国祭の後夜祭も終わる。
アーサリーとメチルの間の距離も少し縮まったようだし、外堀も着実に埋まっていっている。はっきりいって、エスカの思い通りに事は運んでいるようである。
ただ、アーサリーはその事には気付いているような感じはない。いろいろ気にする様子はあるというのに、こういうところには鈍いのだ。
ある程度エスカの思惑通りに進んだ建国祭なのであった。
夜が明けると、いよいよミズーナ王女たちはサーロイン王国に戻ることになる。
「では、お父様。私は残りの学業を頑張ってきますね」
「うむ、しっかり学んでくるのだぞ」
父親を安心させるためにそういうエスカではあるが、内心は冷や汗びっしょりである。なにせ座学はボロボロなのだから。
とはいえ、エスカだって一国の王女である以上、ある程度の優秀な結果を出さねばならないのである。胃がキリキリと痛む気がするエスカだった。
「大丈夫でございます。私がついていますもの、落第なんてさせませんよ」
「そうか、頼もしい限りだな。って、落第だと?!」
ミズーナ王女の言葉に強く頷くミール国王だが、しっかりとその単語に反応していた。
「そ、そんなに危険じゃありませんわよ、おほほほほ」
ミール国王に強く睨まれたエスカは、笑ってごまかしている。その作戦、いつまでも通じると思ってはいけない。
「まったく、運命の相手を見つけたからといって、自堕落になっては困るぞ。厳しく頼むぞ、ミズーナ・ベジタリウス」
「もちろんでございます」
厳しい目を向けるミール国王と、にこにこと笑うミズーナ王女。二人の視線に思わず震え上がるエスカだった。
話を終えたミズーナ王女たちは、エスカとメチルと手をつないで、三人で一気に瞬間移動魔法でサーロイン王国に戻ったのだった。
本来ならば二人がペアを組んで踊れば問題ないのだろうが、エスカがミズーナ王女を相手に選んでしまったことで、アーサリーが困ってしまった。
「あら、お兄様にはお相手がいるじゃございませんの」
意地悪そうに笑うエスカがすっと視線を向けた先、そこにはシイラに付き添われたメチルが立っていた。
「ちょっ、おまっ」
慌てたように振り返るアーサリーだったが、すでに遅い。シイラに付き添われたメチルが既にこっちに近付いてきていた。なぜなら、国王と王妃が手招きをしたからだ。
こうなると、アーサリーはメチルと踊らなければならなくなる。もはや逃げられない。
「アーサリー殿下、覚悟をお決め下さいませ」
シイラにまでこう言われる始末のアーサリー。腰の引けているアーサリーではあるが、ここは建国祭の場であり、国中の貴族たちの注目が集まっている場だ。アーサリーは覚悟を決めなければならなかった。
メチルも恥ずかしながらも、しっかりとカーテシーをしてアーサリーの前に立っている。
さすがにこの状況にもう逃げられないと覚悟したアーサリーは、すごく複雑な表情をしながらメチルに手を差し出した。
「こ、今回だけだ。勘違いするなよ、お前を認めたわけじゃないからな」
すごく嫌そうな表情をしているアーサリー。さすがに令嬢に対して向ける表情ではない。
ところが、その顔を見て思わず笑ってしまうメチルである。
「ありがとうございます。おかげさまで緊張が取れました」
にこっと微笑むメチルである。
その顔を見たアーサリーが思わずドキッとしたのを見て、エスカがにやにやと眺めている。
「おほん」
だが、いつまで経っても動こうとしない子どもたちに業を煮やしたミール国王が大きな咳払いをする。
その行動に、エスカはミズーナ王女を連れて前へと出ていく。
エスカの動きにつられるように、アーサリーもやむなくメチルの手を取って会場の真ん中へと出ていく。もうどうにでもなれという精神だった。
国王から視線を向けられて、ミール王国の楽団が演奏を始める。
それと同時に、エスカとミズーナ王女、アーサリーとメチルという二組のダンスが始まる。
多くのミール王国の貴族たちが見守る中、メチルは緊張した様子でアーサリーと踊っている。先立ってシイラと踊っておいたのが功を奏したのか、メチルはだいぶ落ち着いて踊れているようだ。むしろ危ないのはアーサリーの方のようである。
「まったく、アーサリーはダンスをさぼり過ぎなのよ」
「うるせえよ」
踊りながらエスカにツッコミを食らうアーサリー。それに対して真っ赤になりながら文句を言うアーサリーである。
こういったやり取りを目の前で見て、メチルの緊張はさらにほぐれていく。
そして、無事にダンスが終わると、会場からは拍手が沸き起こる。この光景に、メチルはやり切ったといわんばかりの満面の笑みをこぼしていた。
魔族とはいえ、姿自体は年頃の少女である。その姿に思わずドキッとしてしまうアーサリーだった。
その姿を見たエスカとミズーナ王女がにやにやとした表情でアーサリーを見ている。
「おい、なんて顔をしてるんだよ」
「べーつにー?」
ぎろりと睨むアーサリーに、エスカとミズーナ王女はともにとぼけるのだった。
こうして無事に建国祭の後夜祭も終わる。
アーサリーとメチルの間の距離も少し縮まったようだし、外堀も着実に埋まっていっている。はっきりいって、エスカの思い通りに事は運んでいるようである。
ただ、アーサリーはその事には気付いているような感じはない。いろいろ気にする様子はあるというのに、こういうところには鈍いのだ。
ある程度エスカの思惑通りに進んだ建国祭なのであった。
夜が明けると、いよいよミズーナ王女たちはサーロイン王国に戻ることになる。
「では、お父様。私は残りの学業を頑張ってきますね」
「うむ、しっかり学んでくるのだぞ」
父親を安心させるためにそういうエスカではあるが、内心は冷や汗びっしょりである。なにせ座学はボロボロなのだから。
とはいえ、エスカだって一国の王女である以上、ある程度の優秀な結果を出さねばならないのである。胃がキリキリと痛む気がするエスカだった。
「大丈夫でございます。私がついていますもの、落第なんてさせませんよ」
「そうか、頼もしい限りだな。って、落第だと?!」
ミズーナ王女の言葉に強く頷くミール国王だが、しっかりとその単語に反応していた。
「そ、そんなに危険じゃありませんわよ、おほほほほ」
ミール国王に強く睨まれたエスカは、笑ってごまかしている。その作戦、いつまでも通じると思ってはいけない。
「まったく、運命の相手を見つけたからといって、自堕落になっては困るぞ。厳しく頼むぞ、ミズーナ・ベジタリウス」
「もちろんでございます」
厳しい目を向けるミール国王と、にこにこと笑うミズーナ王女。二人の視線に思わず震え上がるエスカだった。
話を終えたミズーナ王女たちは、エスカとメチルと手をつないで、三人で一気に瞬間移動魔法でサーロイン王国に戻ったのだった。
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