450 / 500
第九章 拡張版ミズーナ編
第450話 建国祭から戻って
しおりを挟む
建国祭で抜けていた分、学園ので講義に遅れが出てしまった三人。しかし、そこは王妃教育で城に住み込みとなっているアンマリアとサキが面倒を見てくれていた。
まったく、王妃教育で結構一日中忙しいはずなのに、ご苦労な事である。
「本当にすみませんね、アンマリア」
「国家行事だから仕方ないものね。後輩の勉強くらい見てあげますよ」
ミズーナ王女が申し訳なさそうにすると、アンマリアは気にしないでといった表情で話している。さすが第一王子の婚約者となっただけはある。
「まあ、ボクもいますからね。復習ついでに教えるくらいならしますよ」
そういうのはリブロ王子である。そういえば年齢が一つ下なので、ミズーナ王女たちとは同い年なのである。
とりあえず簡単に話を済ませたミズーナ王女たちは、しばらく黙々と勉強をしている。
しばらくすると、当然のようにエスカが簡単に音を上げてくれていた。
「だーっ、こういう黙々とした作業は大っ嫌いないのよ……」
両手を上げて叫んだかと思うと、そのままばったりとテーブルに突っ伏している。転生前の性格というよりは、これがエスカの性質といったところだろうか。
「ミール王国の王子王女はゲームの中でも飽き性でしたからね。ある意味ゲーム補正ってところでしょうかね」
「……まあ確かに。前世の私はここまで飽き性じゃなかったわよ。でなきゃ地味にコツコツやるような会社員なんかしてなかったわよ。営業をしてた頃は案件取るために粘っていたくらいだもの」
突っ伏しながらぐちぐちと文句を言っているエスカである。これにはミズーナ王女もアンマリアも、付き添っているメチルも呆れて見ているようだった。
エスカの愚痴について、リブロはまったく何を言っているのか理解できなかった。ある程度前世の話を知っているサキですら、よく分からない単語が出てきたので理解不能である。
ただ、転生組であるアンマリア、ミズーナ王女、メチルの三人は分かった上で呆れた表情である。その表情を見て、何かろくでもないことを言っているんだなという雰囲気だけを理解していた。
「とりあえず愚痴は聞いてあげるけど、それとこれは別よ。はいはい、頑張ってちょうだい」
しかし、アンマリアは非情にも手を二度叩いて勉強を再開させる。エスカはぐでっと突っ伏したままではあるものの、アンマリアは遠慮はなかった。
「私だって王妃教育の忙しい合間を縫って見ているのよ。受ける気がないんだったらエスカの方が出ていってちょうだい。赤点とっても私は助けないわよ」
「勉強は嫌だけど赤点はもっと嫌!」
アンマリアがタンタンとミズーナ王女の勉強を見ながら告げると、エスカはテーブルに手をついて立ち上がりながら主張している。
「だったら、勉強を頑張ってちょうだい。同郷のよしみでやってるんだからね。完全な赤の他人だったらこんな事してないわよ」
「むむむむ……」
エスカはものすごく悔しそうな表情をしている。
「それに、あんたがそんな状態じゃ、エスカに負けた魔王もプライドがずたずたでしょうね。話はエスカ一人の問題じゃないの、諦めて頑張りなさい」
「くぅ……、しょうがないわね」
折れたエスカは仕方なく教科書と向かい合っていた。
エスカの手綱をうまくとっているアンマリアに、ミズーナ王女たちはとても感心しているようだ。さすが次期王妃は格が違ったのである。
こうして、無事に授業の遅れを取り戻したミズーナ王女とエスカである。
勉強が落ち着いたところで、メチルはアンマリアとフィレン王子に呼び出された。
それというのも、ミール王国の建国祭での話を聞くためだ。
はっきり言って、今年はサーロイン王国の関係者は参加していないために、他国の事を聞く必要はないはずである。
ぶっちゃけていえば、アンマリアとフィレン王子による個人的な興味だ。今までの経験上、こういう催し物の場で何事もなく終わった経験が少ない。無事に終わったのは剣術大会くらいだ。なので、メチルに話を聞いているというわけである。
二人から話を求められたメチルは、大きくため息をついていた。
「やっぱり何かありましたのね」
「ええ、まあ。なかなかにとんでもないことでしたけれど」
隠していても仕方がないし、アンマリアにも関係ないことではなかった。なので、メチルは建国祭であった事を全部話していた。メチルが話したその内容に、アンマリアは思わず胸をなでおろしていた。
「転生者だけに影響する瘴気ですか。またなんともピンポイントなものを……」
「私は魔族でもあったので影響は小さめでしたけれどね。ただ、その上で大量の魔物を呼び寄せていましたので、もし対処できなければミール王国を超えてサーロイン王国にも被害が出ていた可能性はあります」
メチルの話した推測に、フィレン王子もその表情を青くしていた。転生者に対して反応しているのであれば、アンマリアも十分対象になっている可能性があったからだ。サーロイン王国に被害が及んだ可能性は否定できないのである。
「いやよく防いでくれた。感謝する」
「まっ、私たちですからね」
フィレン王子の謝意に反応して、アルーが姿を見せる。
「でも、本当に申し訳ないわね。私たちベジタリウス王国が原因でいろいろ迷惑をかけてしまって」
アルーはメチルの頭の上で謝罪している。
それもそうだ。そもそもはアルーの本体であるメチルの両親が急に魔王の復活を試みたのが根本の原因なのだから。
しかし、そのすべてが実質未遂に終わったために、フィレン王子はメチルもアルーも責めることはしなかった。
その話の後、アルーがメチルとアーサリーがいい雰囲気だったことを暴露すると、メチルはアルーの口を慌てて塞いでいた。
そっちもそっちで進展があったようで、顔を赤くするメチルを見ながらアンマリアとフィレン王子は実に楽しそうに笑っていたのだった。
ミズーナ王女が主役となる最終年。もう後は何事もなく無事に終わることを祈るばかりである。
まったく、王妃教育で結構一日中忙しいはずなのに、ご苦労な事である。
「本当にすみませんね、アンマリア」
「国家行事だから仕方ないものね。後輩の勉強くらい見てあげますよ」
ミズーナ王女が申し訳なさそうにすると、アンマリアは気にしないでといった表情で話している。さすが第一王子の婚約者となっただけはある。
「まあ、ボクもいますからね。復習ついでに教えるくらいならしますよ」
そういうのはリブロ王子である。そういえば年齢が一つ下なので、ミズーナ王女たちとは同い年なのである。
とりあえず簡単に話を済ませたミズーナ王女たちは、しばらく黙々と勉強をしている。
しばらくすると、当然のようにエスカが簡単に音を上げてくれていた。
「だーっ、こういう黙々とした作業は大っ嫌いないのよ……」
両手を上げて叫んだかと思うと、そのままばったりとテーブルに突っ伏している。転生前の性格というよりは、これがエスカの性質といったところだろうか。
「ミール王国の王子王女はゲームの中でも飽き性でしたからね。ある意味ゲーム補正ってところでしょうかね」
「……まあ確かに。前世の私はここまで飽き性じゃなかったわよ。でなきゃ地味にコツコツやるような会社員なんかしてなかったわよ。営業をしてた頃は案件取るために粘っていたくらいだもの」
突っ伏しながらぐちぐちと文句を言っているエスカである。これにはミズーナ王女もアンマリアも、付き添っているメチルも呆れて見ているようだった。
エスカの愚痴について、リブロはまったく何を言っているのか理解できなかった。ある程度前世の話を知っているサキですら、よく分からない単語が出てきたので理解不能である。
ただ、転生組であるアンマリア、ミズーナ王女、メチルの三人は分かった上で呆れた表情である。その表情を見て、何かろくでもないことを言っているんだなという雰囲気だけを理解していた。
「とりあえず愚痴は聞いてあげるけど、それとこれは別よ。はいはい、頑張ってちょうだい」
しかし、アンマリアは非情にも手を二度叩いて勉強を再開させる。エスカはぐでっと突っ伏したままではあるものの、アンマリアは遠慮はなかった。
「私だって王妃教育の忙しい合間を縫って見ているのよ。受ける気がないんだったらエスカの方が出ていってちょうだい。赤点とっても私は助けないわよ」
「勉強は嫌だけど赤点はもっと嫌!」
アンマリアがタンタンとミズーナ王女の勉強を見ながら告げると、エスカはテーブルに手をついて立ち上がりながら主張している。
「だったら、勉強を頑張ってちょうだい。同郷のよしみでやってるんだからね。完全な赤の他人だったらこんな事してないわよ」
「むむむむ……」
エスカはものすごく悔しそうな表情をしている。
「それに、あんたがそんな状態じゃ、エスカに負けた魔王もプライドがずたずたでしょうね。話はエスカ一人の問題じゃないの、諦めて頑張りなさい」
「くぅ……、しょうがないわね」
折れたエスカは仕方なく教科書と向かい合っていた。
エスカの手綱をうまくとっているアンマリアに、ミズーナ王女たちはとても感心しているようだ。さすが次期王妃は格が違ったのである。
こうして、無事に授業の遅れを取り戻したミズーナ王女とエスカである。
勉強が落ち着いたところで、メチルはアンマリアとフィレン王子に呼び出された。
それというのも、ミール王国の建国祭での話を聞くためだ。
はっきり言って、今年はサーロイン王国の関係者は参加していないために、他国の事を聞く必要はないはずである。
ぶっちゃけていえば、アンマリアとフィレン王子による個人的な興味だ。今までの経験上、こういう催し物の場で何事もなく終わった経験が少ない。無事に終わったのは剣術大会くらいだ。なので、メチルに話を聞いているというわけである。
二人から話を求められたメチルは、大きくため息をついていた。
「やっぱり何かありましたのね」
「ええ、まあ。なかなかにとんでもないことでしたけれど」
隠していても仕方がないし、アンマリアにも関係ないことではなかった。なので、メチルは建国祭であった事を全部話していた。メチルが話したその内容に、アンマリアは思わず胸をなでおろしていた。
「転生者だけに影響する瘴気ですか。またなんともピンポイントなものを……」
「私は魔族でもあったので影響は小さめでしたけれどね。ただ、その上で大量の魔物を呼び寄せていましたので、もし対処できなければミール王国を超えてサーロイン王国にも被害が出ていた可能性はあります」
メチルの話した推測に、フィレン王子もその表情を青くしていた。転生者に対して反応しているのであれば、アンマリアも十分対象になっている可能性があったからだ。サーロイン王国に被害が及んだ可能性は否定できないのである。
「いやよく防いでくれた。感謝する」
「まっ、私たちですからね」
フィレン王子の謝意に反応して、アルーが姿を見せる。
「でも、本当に申し訳ないわね。私たちベジタリウス王国が原因でいろいろ迷惑をかけてしまって」
アルーはメチルの頭の上で謝罪している。
それもそうだ。そもそもはアルーの本体であるメチルの両親が急に魔王の復活を試みたのが根本の原因なのだから。
しかし、そのすべてが実質未遂に終わったために、フィレン王子はメチルもアルーも責めることはしなかった。
その話の後、アルーがメチルとアーサリーがいい雰囲気だったことを暴露すると、メチルはアルーの口を慌てて塞いでいた。
そっちもそっちで進展があったようで、顔を赤くするメチルを見ながらアンマリアとフィレン王子は実に楽しそうに笑っていたのだった。
ミズーナ王女が主役となる最終年。もう後は何事もなく無事に終わることを祈るばかりである。
20
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる