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第68話 情報が欲しい
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横穴での生活が定着してから十日ほどが経過する。
すっかりサバイバル生活にも慣れてきたのか、アーツたちには余裕が出てきていた。
だが、恐竜たちとの戦いの決着はまだ着いていない。
横穴の外には、相変わらず多くの恐竜がうろついている。
アーツたちは一体がはぐれたところを狙い、ヒットアンドアウェイ戦法でコツコツと一体ずつ仕留めていく。
おびき寄せ戦法の成功率は高いものの、倒れる直前に恐竜は仲間を呼ぶので、恐竜たちのデータ収集にはまったく進展がなかった。
もっと効果的な戦術をたてるには、どうしても情報が欲しいのだが、恐ろしく隙がないために実現は到底できそうになかった。
「くそっ、全然数が減らねえ」
「倒せてはいるのですけれどね。すぐに仲間を呼んで集まってきてしまいますね」
「俺たちのことを餌としか見てないんだろうな。本当にあの見下したような目はイラつくぜ」
アーツたちは集まって作戦会議を行っている。
どうにかして恐竜の詳細なデータを集めたいのだ。
だが、細胞のひとかけらでも欲しいというのに、倒して採取する頃には次の恐竜が襲い掛かってくるというタイミングの悪さ。おかげでデータ収集はまったくはかどっていないのである。
クロノの時を操る能力で採取しようと考えるも、時の止まった恐竜の皮膚はかなり硬かった。おかげでひとかけらも削ぐことができず、時が動き出した時にはすぐ退避ということが繰り返されたのである。
どうやらクロノの時止めは、対象の一部分にだけ有効にはできないようだ。
「あまり使いたくないんだけどね。ノワールが肩代わりしてくれているとはいえ、最近はなんとなく力が抜けていく感覚を覚えるわ」
どうやらノワールの肩代わりにも限界があるのか、クロノに地味に影響が出始めていた。
もうこの作戦は次からは使えそうにないものだった。
「ごめんなさい。私、役に立てなさそうで」
「気にすんなよ。お前を失うよりは断然いい話だ」
「アーツ……」
アーツの言葉に、どういうわけか顔が赤くなってしまうクロノである。
もしかしたらひょっとするかという雰囲気だが、アーツから出た次の言葉は実に平常運転だった。
「俺たちは揃って故郷に帰るんだよ。誰一人として欠けるわけにはいかないんだよ」
「う、うん。そうだよね。みんな揃って帰りましょう!」
期待して損したというような、複雑な表情のクロノがそこにはいた。
その様子を見ていたブランが、クロノに近付いていく。
「アーツってそういう人だからね」
「うん、そうだね……」
はたから見ているとなんのこっちゃというような言葉だが、二人からすれば確認のし合いだったようで、揃って大きなため息をついていた。
『主、我から提案でございます』
ノワールがブランに声をかけてくる。
「何かいい案があるのかしら」
『はい。昆虫の中には相手の血を吸うというものがおります。そ奴をどうにかして我らと同じように眷属にできないかと提案するのです』
「血を吸う虫?」
ブランは何のことか分からずにこてんと首を傾げる。
―はい、血を吸う虫というのは何種類かいます―
そこに口を挟んできたのは、まさかのロボットだった。
―代表的なところは蚊でしょうかね。産卵の時期が近くなると、メスは生物から血を吸うのです―
「あっ、そっか。細胞だけじゃなくて、血でも分析ができるわけか」
『その通りでございます』
「へえ、頭いいな、お前ら」
「アーツ……」
ブランとノワールが話をしているところに、アーツが顔を覗かせていた。
「それで、その蚊っていうやつはどこにいるんだ?」
『基本的にはどこにでもおります。生物に静かに近付き、あごにある長い管を差し込み血を吸うのです。卵を産む場所は水辺ですので、水場ならばいる可能性は高いかと』
ブランの通訳で話を聞いたアーツは、面白そうだなと思った。
『主の眷属となれば、特殊な能力を持つ可能性があります。吸血は食事ですので、普通は手放すことはないですが、眷属となれば入手は可能になるかと思われます』
「根拠は?」
『その根拠は我ですね。我の毒針は一度きりの武器。今のように何度も突き刺すということは本来できぬものです』
アーツが根拠を尋ねると、オランジュが割り込んできて答えていた。
「なるほど、説得力があるわね」
ブランも唸るくらいである。
そんなわけで、恐竜たちの情報を集めるために、まずは昆虫の蚊を仲間にすることを計画するアーツたちである。
『その場合は、我が以前掘った穴を活用されるのがよろしいかと。あの出口ならば、恐竜どもも感知はしておりますまいからな』
「分かった。具体的な作戦はこれから決めるとしよう。今はみんなそれぞれの作業をしているから、話し合いができる状況にない」
『承知した。我は見回りに行くと致します。時間には戻るとしましょう』
ノワールとオランジュは一緒になって周辺の警戒へと出かけていった。
ここまでアーツたちが恐竜たちの情報を得るのに躍起になるのは理由がある。
マザーコンピュータに取り込ませれば、もしかしたら恐竜の全位置が把握できるかもしれないという話を聞いたからだ。
なんにしても、恐竜を倒して安全地帯を作れるのであれば、その可能性にすがってみたいものである。
航宙船を無事に地面から掘り出すため、恐竜を撃退する作戦は少しずつ前に進みつつあるのだった。
すっかりサバイバル生活にも慣れてきたのか、アーツたちには余裕が出てきていた。
だが、恐竜たちとの戦いの決着はまだ着いていない。
横穴の外には、相変わらず多くの恐竜がうろついている。
アーツたちは一体がはぐれたところを狙い、ヒットアンドアウェイ戦法でコツコツと一体ずつ仕留めていく。
おびき寄せ戦法の成功率は高いものの、倒れる直前に恐竜は仲間を呼ぶので、恐竜たちのデータ収集にはまったく進展がなかった。
もっと効果的な戦術をたてるには、どうしても情報が欲しいのだが、恐ろしく隙がないために実現は到底できそうになかった。
「くそっ、全然数が減らねえ」
「倒せてはいるのですけれどね。すぐに仲間を呼んで集まってきてしまいますね」
「俺たちのことを餌としか見てないんだろうな。本当にあの見下したような目はイラつくぜ」
アーツたちは集まって作戦会議を行っている。
どうにかして恐竜の詳細なデータを集めたいのだ。
だが、細胞のひとかけらでも欲しいというのに、倒して採取する頃には次の恐竜が襲い掛かってくるというタイミングの悪さ。おかげでデータ収集はまったくはかどっていないのである。
クロノの時を操る能力で採取しようと考えるも、時の止まった恐竜の皮膚はかなり硬かった。おかげでひとかけらも削ぐことができず、時が動き出した時にはすぐ退避ということが繰り返されたのである。
どうやらクロノの時止めは、対象の一部分にだけ有効にはできないようだ。
「あまり使いたくないんだけどね。ノワールが肩代わりしてくれているとはいえ、最近はなんとなく力が抜けていく感覚を覚えるわ」
どうやらノワールの肩代わりにも限界があるのか、クロノに地味に影響が出始めていた。
もうこの作戦は次からは使えそうにないものだった。
「ごめんなさい。私、役に立てなさそうで」
「気にすんなよ。お前を失うよりは断然いい話だ」
「アーツ……」
アーツの言葉に、どういうわけか顔が赤くなってしまうクロノである。
もしかしたらひょっとするかという雰囲気だが、アーツから出た次の言葉は実に平常運転だった。
「俺たちは揃って故郷に帰るんだよ。誰一人として欠けるわけにはいかないんだよ」
「う、うん。そうだよね。みんな揃って帰りましょう!」
期待して損したというような、複雑な表情のクロノがそこにはいた。
その様子を見ていたブランが、クロノに近付いていく。
「アーツってそういう人だからね」
「うん、そうだね……」
はたから見ているとなんのこっちゃというような言葉だが、二人からすれば確認のし合いだったようで、揃って大きなため息をついていた。
『主、我から提案でございます』
ノワールがブランに声をかけてくる。
「何かいい案があるのかしら」
『はい。昆虫の中には相手の血を吸うというものがおります。そ奴をどうにかして我らと同じように眷属にできないかと提案するのです』
「血を吸う虫?」
ブランは何のことか分からずにこてんと首を傾げる。
―はい、血を吸う虫というのは何種類かいます―
そこに口を挟んできたのは、まさかのロボットだった。
―代表的なところは蚊でしょうかね。産卵の時期が近くなると、メスは生物から血を吸うのです―
「あっ、そっか。細胞だけじゃなくて、血でも分析ができるわけか」
『その通りでございます』
「へえ、頭いいな、お前ら」
「アーツ……」
ブランとノワールが話をしているところに、アーツが顔を覗かせていた。
「それで、その蚊っていうやつはどこにいるんだ?」
『基本的にはどこにでもおります。生物に静かに近付き、あごにある長い管を差し込み血を吸うのです。卵を産む場所は水辺ですので、水場ならばいる可能性は高いかと』
ブランの通訳で話を聞いたアーツは、面白そうだなと思った。
『主の眷属となれば、特殊な能力を持つ可能性があります。吸血は食事ですので、普通は手放すことはないですが、眷属となれば入手は可能になるかと思われます』
「根拠は?」
『その根拠は我ですね。我の毒針は一度きりの武器。今のように何度も突き刺すということは本来できぬものです』
アーツが根拠を尋ねると、オランジュが割り込んできて答えていた。
「なるほど、説得力があるわね」
ブランも唸るくらいである。
そんなわけで、恐竜たちの情報を集めるために、まずは昆虫の蚊を仲間にすることを計画するアーツたちである。
『その場合は、我が以前掘った穴を活用されるのがよろしいかと。あの出口ならば、恐竜どもも感知はしておりますまいからな』
「分かった。具体的な作戦はこれから決めるとしよう。今はみんなそれぞれの作業をしているから、話し合いができる状況にない」
『承知した。我は見回りに行くと致します。時間には戻るとしましょう』
ノワールとオランジュは一緒になって周辺の警戒へと出かけていった。
ここまでアーツたちが恐竜たちの情報を得るのに躍起になるのは理由がある。
マザーコンピュータに取り込ませれば、もしかしたら恐竜の全位置が把握できるかもしれないという話を聞いたからだ。
なんにしても、恐竜を倒して安全地帯を作れるのであれば、その可能性にすがってみたいものである。
航宙船を無事に地面から掘り出すため、恐竜を撃退する作戦は少しずつ前に進みつつあるのだった。
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