ドラゴニックプラネット

未羊

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第67話 我慢の時

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 航宙船からの帰り道でも、アーツたちは警戒を怠らなかった。なにせ来る時に恐竜の姿をちらりと目撃していたからだ。
 だが、幸いなことに遭遇することなく横穴へと戻って来ることができた。
 穴の中へと入ると、ようやくアーツたちは安心した様子で大きく息を吐き出していた。

「ふぅ、今戻ったぜ」

「おかえり、アーツ」

「ただいま、ブラン。こっちは特に変わったことはなかったか?」

「ああ、問題なかったぜ」

 護衛を兼ねて残っていたレンクスが代わりに答えている。
 その後ろでは、テレップとラネッツァがロボットたちと話をしている。どうやら、畑についていろいろと話し合っているようだ。

「おう、お前らは何をしているんだ?」

「ああ、アーツさん。お帰りなさい。無事でなによりです」

「えっとですね、畑の植物についてロボットたちと話をしていたんです」

 ラネッツァは足元の畑を見ながら答えている。
 どうやら、ロボットが急成長させた畑について、ちょっと思うところがあるようなのだ。

「狭い、暗いって言っています。どうやら、横穴の中は十分な環境にないみたいなんです」

「ああ、そうか。地下の方が明るかったもんな。だとするなら、やはり圧倒的に足りないのは光か……」

 アーツはすぐさま何が足りないか言い当てていた。
 この横穴の中は、生活のための照明が備えられてはいるが、それは移動に困らない程度の明るさしかない。
 つまり、植物が育つための光量にはとても足りないというわけだった。
 それに比べて地下空間は、生活を第一としているために、畑のスペースには煌々とした明かりがともされていた。

「だが、ここでそれだけの明かりをつけるわけにはいかないな。下手に光が漏れ出ていると、恐竜どころか虫たちだって呼び寄せちまう」

「でも、虫ならこの子たちみたいに味方にできるんじゃないの?」

 ブランがノワールたちを従えてやって来る。
 確かに説得力のある姿ではあるが、アーツは首を横に振っていた。

「ブランの能力を疑うわけじゃないが、その詳細も限界も分かっちゃいない。過信するのもよくないだろう。何匹までなら従えさせられるのか、そこは要検証だぞ」

「た、確かにそうね……」

 アーツの言い分に、ブランは納得させられてしまった。

「悪いけれど、テレップとラネッツァには、今まで通り地下で過ごしてもらうしかないな。畑の世話ができるというのが大きいし」

「えー……」

 二人は不満そうである。

「能力の訓練だと思えばいいさ。畑を育てることでラネッツァは植物の力を、俺たちに野菜と届けるために転移させれば、テレップの能力だって訓練できるだろ」

「あっ、確かにそうですね」

「もちろん、二人を避けているわけじゃない。故郷に帰るっていう同じ目標がある限り、俺たちは仲間だ。食事の時くらいは合流して一緒に食べようぜ」

「はい、分かりました」

 アーツの提案に、二人は素直に応じることにした。
 本気で自分たちを気にかけてくれているのが伝わったようである。

「それで、そっちは何か収穫あったか?」

 アーツたちの話が終わったところで、レンクスが成果を問い掛けてくる。

「ああ、残念ながら、ロボットたちが使えるような情報はなかった。二百年間の歴史の追加くらいだろうな」

「そうか……」

―いえ、必ずしも無駄だとは思えませんよ―

―はい、我々の帰るべき場所の現在の情報が手に入りましたので、それだけでも大収穫です―

 ロボットたちはアーツの報告にフォローを入れていた。
 まったく、こういった気遣いもできるあたり、ロボットなのにロボットらしくないロボットたちである。

「あっ、そうだ。困ったことがあったな」

「なにが困ったことなんだ?」

 思い出したかのように言い始めるアーツに、レンクスが慌てたように聞き始める。

「ええ、実に困ったことです」

 ニックも話に加わろうとする。

「俺の航宙船に傷がついちまったんだ」

「航宙船の近くまで恐竜が来てたんですよ」

「えっ?」

 アーツとニックの言っている内容が食い違っている。思わず顔を見合わせてしまう二人である。

「ははっ、そりゃどっちも大変だな。てか、俺たちの乗ってきた航宙船に、恐竜が近付いてきたってことか」

「はい。ただ近くを通りかかっただけなのか、帰る時には遭遇しませんでした」

「そっか、それなら安心だな」

 ニックの報告にほっとするレンクスである。

「本当にアーツってば、航宙船のことを気にしすぎてるわよね」

「当たり前だ。買ってもらったばかりなんだぞ?!」

 クロノが指摘すると、アーツは本気で怒るように言い返している。どこまでも航宙船ファーストなのだ。

 報告が終わったのはいいものの、恐竜対策にはこれといった進展はなかった。
 今いる面々では、まだまだ二百年前の航宙船を修理できるだけの技術はないし、外の安全を完全に確保することもできない。
 なにせ、航宙船を隠すために覆った岩山を、真っ先に除外しなければならないからだ。
 航宙船の損害状況を完全に把握しなければ、修理のしようもないというわけなのである。

 航宙船から持ち帰った備品によって少しだけ生活環境がよくなりはしたものの、望まれたような進展がなく、焦りを覚え始める。
 はたして、アーツたちがこの惑星から脱出できる時はやって来るのか、少しずつ不安が大きくなるばかりだったのだ。
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