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第5話
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それからさらに数日後。
すっかり看板娘の地位を確立した私は、久しぶりの休暇を満喫していた。
汗水流して勤労に従事する。そういう日々を悪くはないけれど、それはこういう休日があるからこそ輝くというものであって、休む時は思いっきり休み倒すのだ。
それが、ピープルの正しい過ごし方である。
てなわけで、今日は1日町中を歩き倒すぞ!
「おいおい、聞いたかよ? 今年も魔導院の連中が大規模な魔物狩りを行うらしいぜ」
「最近腕利きが入ったなんて話も聞くからなぁ。ここらで大体的なアピールってなもんあんじゃねえのか?
予算確保に必死なんだろう」
「ちげえねえ。あそこは金食い虫で有名だからなぁ、ただでさえやっかみが激しいらしいし」
優雅にメンチカツをむしゃむしゃしながら町中を歩いていた時、そんな話声を耳にした。
王立魔導院といえば魔法研究の花形。多くの魔導士たちが憧れる職場である。
とはいえ、だ。国を挙げての研究施設だけあって、とにかくお金がかかる場所でも有名だ。この国がいくら魔法研究に力を入れているとはいえ税金で運営されている以上、成果をあげなければやっかみを受けるのも仕方ない。
昨今においては大きな研究成果を出していないとの噂も聞く。風当たりが厳しくなっているのはピープルの間でも有名な話である。
魔物狩りは毎年の事だけど、アピール出来る貴重な機会ということだ。こうでもしないとメンツが立たないってことだろうか。
まあ、私には何の関係もないけれど。
「ふう美味しかった。それじゃ、またウインドウショッピングでも再開しようっと」
「ちょっと待った、そこの少女よ」
「はい?」
唐突に話しかけられた。振り向いた先にいたのは、覆面を被った謎の男。
「ちょっと何ですかあなた!」
「そう警戒をすることはない。まずは落ち着くのだ」
いや、落ち着けって言われましてもねぇ
そこでふと思った、この声はどこかで聞いた方がある。
そう、つい最近まで聞いたことが、……もしかして!
「貴方、お父さまですね?」
「な、何を言っているんだ。私はそんなお父様などという名前ではない!」
「そりゃそうでしょうよ、そんな人いません。
私が言いたいのは、私を屋敷から追い出した父親かと聞いているんです」
「何を言っているのかわからないな。父親かどうかだって? その様子だと少女よ、君はどうやら家を追い出されたようだが。初対面の私を父親かどうかを聞くとは、やはり未練があるのではないかな? しかし、それは仕方のないことだ、年頃の女子である以上父親を求めてしまうのはどうしようもないことなんだ」
「いや、意味がわかりませんし、お父さまですよね?
こんなとこで一体何やってるんです? 人のことを家から追い出しておいて何を油を売っていると言うんですか?」
「しつこいぞ、少女よ。だが人寂しく父親を求めるというのは……」
「知り合いじゃなかったら、それで良いです。……すいません! ここに不審者がいるんですが!」
「ちょっと!? いや、やめたまえ! わかったわかった、今回だけは君の父親ということにしておいてやろう。
頼むから話を聞いてくれ!」
一体何なんなのよ?
わけのわからない茶番に付き合うほど、正直暇じゃない。いや、休みだけれど。
あんまりこんなのに関わりたくない。
「分かりました。じゃあ三分間だけ」
「うむ、見ず知らずの人間にも耳を傾ける。
実に殊勝な心がけだな、親の教育がさぞかしよかったのだろうな。ははははは!」
イラっ。
「では三分経ちましたのでこれにて失礼します。おそらくもう二度と会うこともないでしょう」
「ま、待ちたまえ! まだ一分も経ってはいないぞ、約束を反故にするとはよくない。……本題に入るから聞いてくれ!」
必死に縋ってくる男、いやお父様、いやもうおっさんでいいや。
このいやに馴れ馴れしく、気味の悪い覆面のおっさんの相手なんぞ、なんでわざわざ貴重な休日にしなければないらないというのか?
……私この男と血が繋がってるんですよ? やだぁ。
「先程の会話を聞いていたな、少女よ。
この街に悪意が迫っている、そう魔物の牙がこの町に迫ろうとしているのだ」
「毎年のことじゃないですか? この辺りは巣も近いですし」
「人々は怯え、幾重にも眠れない夜を過ごすことだろう」
「人の話を聞いていますか? それと、無視して言いたいことだけ話すんですか?」
「この由々しき事態、善良な心を持つ少女が見逃せるはずはない。そうだろう!」
「いいえ別に。どうせ例年通り魔導院の人達が張り切ってくれるんでしょう。
その日、普通に仕事してると思います私」
「そう、見過ごすことができないのだ! 少女の心が人々を守れと訴える、体がそれに突き動かされるからだ!」
勝手に話を進めないでもらえない? 何言ってんだか意味不明なんだけど。
「というわけで、少女よ。君は討伐に参加する。何故なら使命感に駆られてしまうからだ!!」
「いや、そんな使命感ないです」
「安心したまえ、何も臆することはない。既に君の参加を届けてある。あとは当日参加するだけだ」
は?
ちょっと待ってください、見ず知らずの人。肉親でもないなら何を勝手な事言ってるんですか?
「あなたに一体何の権利があると言うんですか?!」
「照れることはないさ、仲間達はきっと君のことを喜んで受け入れてくれるはずだ」
「嫌です」
「いや、嫌とかじゃなくてさ」
「嫌です」
「聞き分けのないことを言うんじゃない! 君は参加するんだよ!!」
そう言って肉親でも何でもない、ただの見ず知らずのおっさんは私の肩に触れようとしてきた。
この場合、不審者に対する対応は決まっている。
「きゃあ!」
私は悲鳴声を目いっぱいに上げて相手のボディーにレバーブローを決める。
「ぐべわ!!?」
肝臓周辺に深い衝撃を与えられた不審者のおっさんはそのまま泡を吹いて倒れた。
ああスッキリした!
すっかり看板娘の地位を確立した私は、久しぶりの休暇を満喫していた。
汗水流して勤労に従事する。そういう日々を悪くはないけれど、それはこういう休日があるからこそ輝くというものであって、休む時は思いっきり休み倒すのだ。
それが、ピープルの正しい過ごし方である。
てなわけで、今日は1日町中を歩き倒すぞ!
「おいおい、聞いたかよ? 今年も魔導院の連中が大規模な魔物狩りを行うらしいぜ」
「最近腕利きが入ったなんて話も聞くからなぁ。ここらで大体的なアピールってなもんあんじゃねえのか?
予算確保に必死なんだろう」
「ちげえねえ。あそこは金食い虫で有名だからなぁ、ただでさえやっかみが激しいらしいし」
優雅にメンチカツをむしゃむしゃしながら町中を歩いていた時、そんな話声を耳にした。
王立魔導院といえば魔法研究の花形。多くの魔導士たちが憧れる職場である。
とはいえ、だ。国を挙げての研究施設だけあって、とにかくお金がかかる場所でも有名だ。この国がいくら魔法研究に力を入れているとはいえ税金で運営されている以上、成果をあげなければやっかみを受けるのも仕方ない。
昨今においては大きな研究成果を出していないとの噂も聞く。風当たりが厳しくなっているのはピープルの間でも有名な話である。
魔物狩りは毎年の事だけど、アピール出来る貴重な機会ということだ。こうでもしないとメンツが立たないってことだろうか。
まあ、私には何の関係もないけれど。
「ふう美味しかった。それじゃ、またウインドウショッピングでも再開しようっと」
「ちょっと待った、そこの少女よ」
「はい?」
唐突に話しかけられた。振り向いた先にいたのは、覆面を被った謎の男。
「ちょっと何ですかあなた!」
「そう警戒をすることはない。まずは落ち着くのだ」
いや、落ち着けって言われましてもねぇ
そこでふと思った、この声はどこかで聞いた方がある。
そう、つい最近まで聞いたことが、……もしかして!
「貴方、お父さまですね?」
「な、何を言っているんだ。私はそんなお父様などという名前ではない!」
「そりゃそうでしょうよ、そんな人いません。
私が言いたいのは、私を屋敷から追い出した父親かと聞いているんです」
「何を言っているのかわからないな。父親かどうかだって? その様子だと少女よ、君はどうやら家を追い出されたようだが。初対面の私を父親かどうかを聞くとは、やはり未練があるのではないかな? しかし、それは仕方のないことだ、年頃の女子である以上父親を求めてしまうのはどうしようもないことなんだ」
「いや、意味がわかりませんし、お父さまですよね?
こんなとこで一体何やってるんです? 人のことを家から追い出しておいて何を油を売っていると言うんですか?」
「しつこいぞ、少女よ。だが人寂しく父親を求めるというのは……」
「知り合いじゃなかったら、それで良いです。……すいません! ここに不審者がいるんですが!」
「ちょっと!? いや、やめたまえ! わかったわかった、今回だけは君の父親ということにしておいてやろう。
頼むから話を聞いてくれ!」
一体何なんなのよ?
わけのわからない茶番に付き合うほど、正直暇じゃない。いや、休みだけれど。
あんまりこんなのに関わりたくない。
「分かりました。じゃあ三分間だけ」
「うむ、見ず知らずの人間にも耳を傾ける。
実に殊勝な心がけだな、親の教育がさぞかしよかったのだろうな。ははははは!」
イラっ。
「では三分経ちましたのでこれにて失礼します。おそらくもう二度と会うこともないでしょう」
「ま、待ちたまえ! まだ一分も経ってはいないぞ、約束を反故にするとはよくない。……本題に入るから聞いてくれ!」
必死に縋ってくる男、いやお父様、いやもうおっさんでいいや。
このいやに馴れ馴れしく、気味の悪い覆面のおっさんの相手なんぞ、なんでわざわざ貴重な休日にしなければないらないというのか?
……私この男と血が繋がってるんですよ? やだぁ。
「先程の会話を聞いていたな、少女よ。
この街に悪意が迫っている、そう魔物の牙がこの町に迫ろうとしているのだ」
「毎年のことじゃないですか? この辺りは巣も近いですし」
「人々は怯え、幾重にも眠れない夜を過ごすことだろう」
「人の話を聞いていますか? それと、無視して言いたいことだけ話すんですか?」
「この由々しき事態、善良な心を持つ少女が見逃せるはずはない。そうだろう!」
「いいえ別に。どうせ例年通り魔導院の人達が張り切ってくれるんでしょう。
その日、普通に仕事してると思います私」
「そう、見過ごすことができないのだ! 少女の心が人々を守れと訴える、体がそれに突き動かされるからだ!」
勝手に話を進めないでもらえない? 何言ってんだか意味不明なんだけど。
「というわけで、少女よ。君は討伐に参加する。何故なら使命感に駆られてしまうからだ!!」
「いや、そんな使命感ないです」
「安心したまえ、何も臆することはない。既に君の参加を届けてある。あとは当日参加するだけだ」
は?
ちょっと待ってください、見ず知らずの人。肉親でもないなら何を勝手な事言ってるんですか?
「あなたに一体何の権利があると言うんですか?!」
「照れることはないさ、仲間達はきっと君のことを喜んで受け入れてくれるはずだ」
「嫌です」
「いや、嫌とかじゃなくてさ」
「嫌です」
「聞き分けのないことを言うんじゃない! 君は参加するんだよ!!」
そう言って肉親でも何でもない、ただの見ず知らずのおっさんは私の肩に触れようとしてきた。
この場合、不審者に対する対応は決まっている。
「きゃあ!」
私は悲鳴声を目いっぱいに上げて相手のボディーにレバーブローを決める。
「ぐべわ!!?」
肝臓周辺に深い衝撃を与えられた不審者のおっさんはそのまま泡を吹いて倒れた。
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