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33 オスカーの気持ち
しおりを挟むオスカーは部屋で何もすることがなく、ひとつ大きなあくびをした。
(一体、いつ出られるんだろうなあ。)
食事は届けられるようだが、それ以外、することがない。本を読んで時間を潰そうにも、部屋に置いてある本らしきものは、勝手の教科書や専門書くらいで、読む気にはならない。
兄達は父上の不興を買って謹慎させられることがあったが、オスカーは初めてだった。自ら閉じこもって以来、家族は皆、むしろオスカーを構って常に誰かが一緒に居ようとした。その時に悟ったのだ。
逆らわずに笑っていれば、皆、優しくしてくれる。
できない、やりたくないことは、悲しげな顔して、時には涙を流せば、それ以上、強制されることはない。
鏡を見て練習した笑顔を向ければ、男も女も、皆が先回りして、オスカーの環境を整えて、快適さを提供する。それが普通のはずだ。
——ボクはいつも上手くやってきたはずだ。
何にも興味も関心も持たずに、与えられた物だけで満足して、他人に不快感を与えないよう、ただ笑顔を振り撒いてきた。
リリアも初対面でオスカーを気に入ったはずだ。いつもの笑顔を見せると、顔を赤らめてじっと見つめていたのだから。なのに、その後がいけない。リリアはオスカーに与えられた婚約者だというのに、全く気を利かせないダメな女だ。
リリアはオスカーの妻になるのだから、早目に好みを把握させてあげた方が良いに決まっている。できるだけ早くオスカーの世話をできるようになった方がリリアのためでもあったのに。リリアはオスカーの物になったのだから、オスカーを快適にする方法を教えてあげたんだ。なのに、ちっとも覚えない。それで、気分を害した振りをして、わからせてあげようとしたんだ。
——なんて無責任なんだ。ボクだって、本当なら、もっと可愛い女の人が良かったのに。
——ボクが侯爵家に行ってから、ボクの扱いに戸惑わないように、と気を遣ってあげたのに。
それでも、結婚すると約束をしたから、それならばと、リリアを受け入れて、良き妻になれるよう、教育してあげていたのに。それを有り難く思うどころか、文句を言ってくるなんて。
そういえば。婚約しないことになった。と、言っていた。どういうことだ?婚約は決まっていたはず。解消ということか?
——え?ってことは、ボクは侯爵家に行って何をするんだ?
そこまで考えて、思考を放棄した。
——やめた。考えるのはボクの仕事じゃあない。
リリアでなくとも、侯爵家にはメイドなど多くいるだろうから、オスカーの世話をする人は父上がちゃんと考えているはずだ。そうか、だからサイラーが執りなしてくれたということか。オスカーの世話係の交渉でもしたんだな。と自己完結した。
——サイラー兄上の手まで煩わせるとは。
婚約破棄を撤回して、精進するように言おうか。そうすれば、世話役を別に用意する手間も省ける。自分の不甲斐なさを棚に上げて、我儘で周りを振り回すなど。次に会ったらよく言い聞かせてやらないと。
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