侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月

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34 サイラーとリリア

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 次男様との交流が始まった。
 オスカーの時と同様、月に2~3度かと思っていたら、この数日、毎日訪問してくる。午前中の良い時間にお茶をする。

 元々あまり話したことがなかったので、顔くらいしか知らなかったのだが、交流を始めてから、次男様の印象が定まってきた。

 抑揚のない静かな話し方をする。ユーモアも好きなようで、意外と良く笑う。年齢は今年で25歳。5歳年上。オスカーの家族なのに、そんなことも知らなかった。ずいぶん、オスカーに興味がなかったのだと思い知らされる結果にもなった。

 最初は警戒していたリリアだが、何度か会ううちに、随分、過ごしやすい時間だと感じていた。時間が過ぎるのをやたらと長く感じたオスカーの時とは違い、穏やかな時間で、あっという間に過ぎてしまう。

 他愛のない話をして、適当なところで
 「今日はこれでお暇するよ。」
 と、爽やかに帰ってゆくのだが、明日も来るという言葉に嬉しくなり、次の日を待ち侘びる。

 ( 何かしらこれ、何だか、ウキウキするわ。 )

 ある日、いつものように帰り際の次男様に、何か、行ってしまうことに惜しむ気持ちが湧いてきて、
 「あの、」
 と、声をかけてしまった。
 「ん?」
 と、にこやかに聞き返してくれる次男様に、特に用事もなく声をかけたと言い難くて、
 「えーと、あの、そう。次男様は、毎日来てくださっていますが、お仕事は大丈夫なのですか?」
 と、聞いた。

 次男様は笑顔で答えてくれる。
 「午前中、少し遅れて行く権利をもぎ取って来たのですよ。その分長く仕事をしますから大丈夫です。それより、」
 と、続けて
 「そろそろ名前で呼んでくれると嬉しいのですが。」
 と言った。
 「え、ああ、そう、ですね。えっと、」
 ( 名前、名前ね。何だったかしら。 )

 「サイラーです。」
 「えっと、はい。」
   ( 何か緊張?照れるわ。 )

 「サイラー……さま。」
 「はい。リリアさま。」
 
 これで終わってしまいそうな時間に焦って、
 「私のことは呼び捨てていただいて構いません。」
 と、言ってしまった。
 「はは、それは、少し照れますね。」
 と、額を指で擦って、それからリリアを真っ直ぐに見て、
 「では、リリア。」
 
 ( うわ、これは照れる )

 見つめられることも見つめることも恥ずかしくなって、視線を逸らしてしまった。

 「リリアが良ければ、明後日の休日に、出掛けませんか?」
 と、言われて、やはり思わず、
 「はい。よろしくお願いします。」
 と、答えてしまった。
 

 
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