転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)

exact

文字の大きさ
57 / 63
番外編

7.配合(3)

しおりを挟む

 ライキを初めて買った時、薬屋の店主はライキにはちょっとした興奮作用があると言っていた。精力剤ほど劇的な作用はないけれど、元々ニンニクにだって多少なりと精力増強の効果はある。

 野生動物の肉や内臓にも、似たような作用があったのかもしれない。まぁ今まで聞いた事はないし、食べればちょっと元気になるとか、そんな些細な効果なんだろうけれど。

 ――単純に、たぶん食べ合わせが悪かったのだ。

 時間が経てば経つほどに、内側からポッポと燃えるような熱さが湧いてきた。身体を擦り付けるだけでは到底足りずに、溜まる一方の熱を持て余した俺はどこかぼんやりと身体を好きにさせてくれている瑛士君を見上げ、さっきは理性で抑えられた願望を口にする。

「瑛士君、あーんして」

 いつもは瑛士君が俺に言う。キスする時、毎度毎度どのタイミングで口を開けるべきか迷うから。瑛士君が言った時が開ける時なのだ。小さな声で囁くように言う、その声が俺は堪らなく好きだ。

 俺がお願いしても、瑛士君はふやっと笑って口を開けてくれた。体温が上がっているせいか、普段より赤い唇が俺には花びらに見えた。甘い香りで誘うやつだ。きっと毒があっても吸い寄せられる。

 迷わず、あむっと飛びつくと、その勢いに瑛士君の口角が上がる。吸い付いて味わって、まだ足りなくて奥に隠れた舌を探して、唇の隙間に舌を差し込む。待ち構えてたみたいに舌の先を舐められたら、胸がキューンてした。一瞬本当に止まった気さえする。

「やば、フィーに襲われてる」
「やだ?」
「普通に嬉しいだろ。すげードキドキする」
「……ギャップ萌え?」

 だといいなって願望に笑って頷かれて、心の中でガッツポーズを決める。実際の身体はそれどころではないので、本能のままちゅうちゅう吸い付きながら甘えるように瑛士君の頭を抱えた。

 熱い。腹の下に溜まる熱が一番酷い。後ろの方まで疼いて、勝手に孔がピクピク動く。ひくつく動きが陰囊まで響いてきて快感を拾うから、瑛士君と舌を絡めながらも一人で盛り上がっている。でもこれでは全然足りないのだ。

 良くないと思いつつ、一層身体を擦り付けながら大腿でさり気なく欲しい物を探る。鼻息荒く股間を弄られる瑛士君にとっては全くさり気なくなかったかもしれないけれど。

「あ、やった。固い」

 嬉しくて思わず心の声がそのまま漏れた。

 そうと分かれば、瑛士君の頭から手を外し、迷わず下衣にその手を突っ込んだ。ちゃんと勃ってて熱くて固くて、もっと興奮して欲しくて指を絡める。

「――っや、ちょっと待て」

 焦った瑛士君が慌てて腰を引くけど、それまで抱きしめてくれていたので、その手は俺の背中に回っている。首元に吸い付きながら陰茎を扱き始めると、さすがに身体を引き離そうと動かれたけれど、本気ではない優しい力だ。瑛士君はいつも優しい。

「良いけど。良いけど……っ、待って」
「瑛士君……瑛士君好き」
「っあ、フィー、フィーって……っん」

 その噛み殺した声がエッチくて滾る。もっと聞きたくてもっと気持ち良くしたくて、声を頼りに強弱つけて夢中で擦った。触れてもないのに自分の陰茎まで、つられて高まっていく。

「――駄目っ、もう無理。ごめん」

 先に音を上げたのは俺だった。耐えきれずそこから手を離し、自分のズボンを下着ごと降ろす。挿れられた時の快感を思い出してしまって、どうにも後孔が疼いて堪らないのだ。

 切羽詰まっているからか、かつてない程の素早さでライキ油を手にした俺は適当に塗りつけて後孔を探る。自分の指じゃ気持ち良くないのは分かっていたから一気に指を入れたのに、普通に気持ち良くて身体が戦慄いた。

「っあ、なんで……んん、気持ち」

 前屈みでぬくぬく指を抜き差しするのは間抜けだが、手早く慣らして挿入してしまいたい思いと裏腹に自慰の手が止められなかった。これ怖い。指でこれなら本当に挿れてしまったらどうなるんだろう。

「……エロ、」

 瑛士君がぼそっと呟くのを聞いた。

「フィー。もうこっち来て」
「ん、待って。あと少し……っ」
「煽るだけ煽っといて、放置?」
「――っえ?」

 一気に反転した視界に瑛士君の顔が飛び込んできて、少しだけ我に返った。気づけば上から組み伏せられ、両方の手首を押さえつけられている。

 手加減はしてくれてそうだが、ギリギリ締め付けられた手首がちょっと痛い。不鮮明な頭で初めに感じた違和感はそれだった。

「ああークソ、頭痛え。我慢しすぎた」

 そんな風に何かを振り払うみたいに乱暴に頭を振る瑛士君を俺は今まで見たことがない。煩わしそうに顔を顰めた普段と違う様子に緊張が走る。もしかして怒らせてしまったのだろうか。

「瑛士君、ごめ――んんっ」

 謝罪の言葉を唇で封じられた。喉の奥まで埋められて性急に舌が絡んでくる。苦しいけどそれ以上に気持ちが良くて、後孔が続きを求めて切なく疼く。

「バカ、これ以上煽んな。こっちは早くブチ込みたくて血管切れそうなんだよ」
「ひんっ! ひあっ、ごめ、ごめっ、ね」
「怪我させたくねーの。大人しくしてろ――ほんと、頼むから」

 気づかずグイグイ押し付けていた腰を咎められ、欲しがる孔に荒っぽく指を加え込まされたが、空いた隙間を埋めて貰えて身体は大歓迎で受け入れている。気持ち良いが溢れ出そうで堪らない。

 しかし、これは異常事態だ。

 俺ばかりではなく瑛士君もかなりおかしい。時差はあったけれど、今俺が抱える暴力的なまでのムラムラを瑛士君も同様に感じているのではないだろうか。

 言葉や仕草に余裕がない。一刻も早く熱を発散させたいと、とにかく解す事に特化した動きなのだ。労わられながらの性交に慣れた身としては、その直情的な姿にある種の感動すら覚える。自分本位になりきれず、絞り出すように「頼むから」なんて言っちゃう所がまた……良い。最高だ、瑛士君。

「力抜いといて。痛かったら蹴って」

 多少痛くても平気だ、と伝えたいのに言葉にはならなかった。気持ちとしては発情した瑛士君を余すことなく堪能したいのだが、身体がついていかない。はふはふ言っている場合ではないというのに、潤む窄まりに添えられた瑛士君の陰茎が待ち遠しくてもどかしげに尻を揺らした。

 どくどくと脈打つ熱い陰茎に内側を押し広げられ、浸食される感覚が堪らずに歯を食いしばる。馴染むのも待たずに突き上げられて、痛くもないのに涙が滲んだ。

「んあっ、んっ、ひぃあ――」
「っは。くそ、腰止まんね……」

 足を大きく広げられ、浮き上がる腰を食い込むほど掴まれて、激しく抽挿される。熱に浮かされたような瑛士君は快楽を追うのに夢中らしい。

 遠慮なしにガツガツ打ち込まれ、最早気持ち良いのかも分からないけれど、押し出されるように陰茎から飛沫が散っていく。喘ぎ声か悲鳴かも不明だ。

 だが、良い。とても良い。ギラギラした目でこちらを見据えながら汗水垂らして、必死に腰を振る瑛士君はとてもエロくて、やっぱり格好良い。

「フィー、フィー」

 切なそうに名前を呼ばれると、もう何されても良い気がする。向かい合って繋がって、ひっくり返されて獣みたいにもっかい繋がって、何度出したか分からない位達したけど、終わりが来ない。

 その辺りになるとさすがに恐ろしくなったけれど、もしかすると普段は俺に合わせてものすごく我慢してくれてたのかなーと思ったら、逆に申し訳なくなった。

「――ごめん。嫌いになんないで」

 明け方近くに、そんな声が聞こえた気がした。何度も意識を飛ばしていたので、曖昧だけど。

 俺が瑛士君を嫌いになるはずないのに。身体はボロボロだけど、今世紀最大の良い物を見せて貰った満足でいっぱいだ。にへっと笑って、眠りに落ちた。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

【完結済み】騎士団長は親友に生き写しの隣国の魔術師を溺愛する

兔世夜美(トヨヤミ)
BL
アイゼンベルク帝国の騎士団長ジュリアスは留学してきた隣国ゼレスティア公国の数十年ぶりのビショップ候補、シタンの後見となる。その理由はシタンが十年前に失った親友であり片恋の相手、ラシードにうり二つだから。だが出会ったシタンのラシードとは違う表情や振る舞いに心が惹かれていき…。過去の恋と現在目の前にいる存在。その両方の間で惑うジュリアスの心の行方は。※最終話まで毎日更新。※大柄な体躯の30代黒髪碧眼の騎士団長×細身の20代長髪魔術師のカップリングです。※完結済みの「テンペストの魔女」と若干繋がっていますがそちらを知らなくても読めます。

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

処理中です...