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監禁! 最後の文化祭
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武藤様の管理は食事だけではない。
「広い浴槽なんだからさぁ、くっついて入る必要なくない?」
「んでだよ。体温見た方が上げるタイミング分かりやすいだろ」
これである。よい香りのバスソルトが入っているのはいつものこと、いつも綺麗にされている広い浴槽には俺の他に武藤様がちょこんと入っていた。
いや、明らかにちょこんじゃないけど。濡れた黒髪に思いのほか幼い煌びやかな顔立ち、薄い唇に微かに揺れる金色の瞳、体温が上がって仄かに色づく白い肌。
それが油断すれば触れられる距離にあるのだ。俺は距離をとった。
「? んだよ」
「んだよじゃないんだが」
とった分だけ近づかれた。も~!!
言ってないから当然なのだが、この男は俺が好意を寄せていることを知らない。正直監禁を許してる時点で察するところはあるはずなのに。このアホバカマヌケ嘘だよ可愛いね!
「顔あけぇな。のぼせたか? てめーは熱さに弱ェなぁ」
「……ハァ、まぁ良いよそういうことで。さっさと出よ」
馬鹿らしくなってきた。不思議そうに首を傾げる武藤様から股間を隠しつつ、そのほどよくついた筋肉と健康的な程度に白い肌と夏服の日焼け痕に腰が重くなるのを耐える。
恋とは忍耐だ。
好きな相手のために、時には据え膳を逃がしてやらなければならない時だってある。
(そんで、こんなふうに近づいてくるってことは脈なしだもんなぁ)
それこそ監禁してる癖になんなんだという話だが、こうして一緒に風呂に入って身体を洗ってくる時点で脈がない。洗えるか? 好きな子の体。無理だろ。俺は無理。直視もできない、見ちゃうのに。
「ちょっとのぼせ気味だから、軽く洗うぞ」
「はぁい」
リンスやらシャンプーはとっくに武藤様のものと共用だ。寝る時にまで武藤様の香りが漂ってきて落ち着かない。
細く繊細な指先が、俺の頭皮をくすぐる。その手つきは乱暴な口調とは程遠く丁寧だ。
シャカシャカと耳元で音がする。俺が野生に帰ったら生きていけないポイントだが、人に髪を撫でられたり優しく弄られてると眠くなってくる。
幼少期眠い朝は母さんが寝癖を整えてくれていた──姉ちゃんは髪を結んでもらってたので多分同じ特性がある──ので、髪を触られる=眠たいと身体が覚えているのだろう。
「痒いところは?」
「ありませーん。眠くなってきた」
「ここで寝んなよ」
後ろから呆れたような声が耳元を掠める。夜景の見える広い浴室なのに、俺と武藤様は一塊の生き物のように同じ場所にいる。
泡が目に入るからと瞑っていれば他の五感が冴えるもので、触覚と聴覚が安心とムラつきを同時に与えてくる。本当にやめて欲しい。今俺の中の天秤が発情と安心の狭間で揺れてるので。
(こんな状況で襲ってないのほんとに褒めて欲しい~~~~)
好きな男が自分を監禁しており一緒にお風呂まで入ってくる。甲斐甲斐しく何もかもの世話をしたがっていて、その状況でおとなしく好きにさせてやるこの胆力。もう本当に誰か褒めて欲しい。
ざばーっと頭が洗い流される。こういうとこは雑なんだよな、もう。
しかし助かった。マジでこれ以上触れられてたら何するかわかんないし。
「じゃあ次行くぞ」
「は?」
「? 身体、てめーは石鹸が合うんだったか」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿マジで」
石鹸を手に取ろうとする手首をガ!! と押さえつける。不満そうな顔をしないで欲しい、武藤様のためである。
「自分も洗わないと髪痛むよ。ただでさえ前に出る立場なんだから、自分の世話ちゃんと自分でしな」
「……チッ」
「だいたい体くらい自分で洗えるからね」
そう言いながら石鹸を奪い取ってボディタオルにつける。
後ろに回っていた武藤様は俺の言葉を認めたらしく、隣に風呂用の椅子を取り出して座った。
最近分かったんだが、この人は俺の世話がないとけっこう雑だ。
食事はちゃんと摂るけど、風呂とかでも平気でのぼせるまで浸かったり乾かさないで歯磨いて湯冷めしてたりする。
あーあ、俺本当にいい男。
誰か……特に武藤様、好きになってくんねぇかな。横をチラリと見ると、無感情に身体を洗っていた。へぇ武藤様洗うのって顔からなんだ。じゃない、ああー目に毒。でもこういう世話を断るとこの人の生活習慣が。
(あと、目に見えて落ち込むんだよなぁ)
監禁という罪悪感を、甲斐甲斐しく世話をすることで逃しているのかもしれない。
元々世話好きな人だったけど、最近は本当に異常だ。
自分でやって自分で落ち込んでんだから本当にめんどくさい人である。そのめんどくさいとこすら可愛いのだから、俺も末期だ。
「……んだよ」
「なんでもない。体洗い終わったから出るよ」
「タオル出してあるから使え。ピンクの、ふかふかの方」
「……はーい」
ぴんく、ふかふか。あまりにも似合わん。可愛い。
わざわざふかふかにしてくるところも可愛い。肌を傷つけないためであろう。本当に何にでも凝るなこの人は。
「武藤様、ほどほどにね」
なにもかも。言ったところでわかっちゃいないんだろうけど。
「俺は武藤様が心配だよ」
朝必ず顔を見にくるのを知っている。眠っている俺を見て、何やら黙り込んで、起こさないように出ていく。
どう足掻いても健全な状態でない癖に、本人は悪事が苦手ときた。拒絶して傷付けるのも嫌なので出来る範囲は受け入れてやりたいが。
「最近武藤様、笑わないから」
「……」
俺は武藤様の笑顔が好きだ。時折見せてくれる咲きこぼれるような顔は、みんな想像がつかないだろうけど、眉が下がって儚くはにかむように笑うんだ。
気弱な一人の男の子みたいな顔が俺は好きだ。
最近はそれが全然ない。
やりたいなら監禁でもなんでもやればいい。俺は武藤様が好きで、愛してるから、多分なんでも受け入れる。
全く面倒なやつである。武藤様も、俺も。
「広い浴槽なんだからさぁ、くっついて入る必要なくない?」
「んでだよ。体温見た方が上げるタイミング分かりやすいだろ」
これである。よい香りのバスソルトが入っているのはいつものこと、いつも綺麗にされている広い浴槽には俺の他に武藤様がちょこんと入っていた。
いや、明らかにちょこんじゃないけど。濡れた黒髪に思いのほか幼い煌びやかな顔立ち、薄い唇に微かに揺れる金色の瞳、体温が上がって仄かに色づく白い肌。
それが油断すれば触れられる距離にあるのだ。俺は距離をとった。
「? んだよ」
「んだよじゃないんだが」
とった分だけ近づかれた。も~!!
言ってないから当然なのだが、この男は俺が好意を寄せていることを知らない。正直監禁を許してる時点で察するところはあるはずなのに。このアホバカマヌケ嘘だよ可愛いね!
「顔あけぇな。のぼせたか? てめーは熱さに弱ェなぁ」
「……ハァ、まぁ良いよそういうことで。さっさと出よ」
馬鹿らしくなってきた。不思議そうに首を傾げる武藤様から股間を隠しつつ、そのほどよくついた筋肉と健康的な程度に白い肌と夏服の日焼け痕に腰が重くなるのを耐える。
恋とは忍耐だ。
好きな相手のために、時には据え膳を逃がしてやらなければならない時だってある。
(そんで、こんなふうに近づいてくるってことは脈なしだもんなぁ)
それこそ監禁してる癖になんなんだという話だが、こうして一緒に風呂に入って身体を洗ってくる時点で脈がない。洗えるか? 好きな子の体。無理だろ。俺は無理。直視もできない、見ちゃうのに。
「ちょっとのぼせ気味だから、軽く洗うぞ」
「はぁい」
リンスやらシャンプーはとっくに武藤様のものと共用だ。寝る時にまで武藤様の香りが漂ってきて落ち着かない。
細く繊細な指先が、俺の頭皮をくすぐる。その手つきは乱暴な口調とは程遠く丁寧だ。
シャカシャカと耳元で音がする。俺が野生に帰ったら生きていけないポイントだが、人に髪を撫でられたり優しく弄られてると眠くなってくる。
幼少期眠い朝は母さんが寝癖を整えてくれていた──姉ちゃんは髪を結んでもらってたので多分同じ特性がある──ので、髪を触られる=眠たいと身体が覚えているのだろう。
「痒いところは?」
「ありませーん。眠くなってきた」
「ここで寝んなよ」
後ろから呆れたような声が耳元を掠める。夜景の見える広い浴室なのに、俺と武藤様は一塊の生き物のように同じ場所にいる。
泡が目に入るからと瞑っていれば他の五感が冴えるもので、触覚と聴覚が安心とムラつきを同時に与えてくる。本当にやめて欲しい。今俺の中の天秤が発情と安心の狭間で揺れてるので。
(こんな状況で襲ってないのほんとに褒めて欲しい~~~~)
好きな男が自分を監禁しており一緒にお風呂まで入ってくる。甲斐甲斐しく何もかもの世話をしたがっていて、その状況でおとなしく好きにさせてやるこの胆力。もう本当に誰か褒めて欲しい。
ざばーっと頭が洗い流される。こういうとこは雑なんだよな、もう。
しかし助かった。マジでこれ以上触れられてたら何するかわかんないし。
「じゃあ次行くぞ」
「は?」
「? 身体、てめーは石鹸が合うんだったか」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿マジで」
石鹸を手に取ろうとする手首をガ!! と押さえつける。不満そうな顔をしないで欲しい、武藤様のためである。
「自分も洗わないと髪痛むよ。ただでさえ前に出る立場なんだから、自分の世話ちゃんと自分でしな」
「……チッ」
「だいたい体くらい自分で洗えるからね」
そう言いながら石鹸を奪い取ってボディタオルにつける。
後ろに回っていた武藤様は俺の言葉を認めたらしく、隣に風呂用の椅子を取り出して座った。
最近分かったんだが、この人は俺の世話がないとけっこう雑だ。
食事はちゃんと摂るけど、風呂とかでも平気でのぼせるまで浸かったり乾かさないで歯磨いて湯冷めしてたりする。
あーあ、俺本当にいい男。
誰か……特に武藤様、好きになってくんねぇかな。横をチラリと見ると、無感情に身体を洗っていた。へぇ武藤様洗うのって顔からなんだ。じゃない、ああー目に毒。でもこういう世話を断るとこの人の生活習慣が。
(あと、目に見えて落ち込むんだよなぁ)
監禁という罪悪感を、甲斐甲斐しく世話をすることで逃しているのかもしれない。
元々世話好きな人だったけど、最近は本当に異常だ。
自分でやって自分で落ち込んでんだから本当にめんどくさい人である。そのめんどくさいとこすら可愛いのだから、俺も末期だ。
「……んだよ」
「なんでもない。体洗い終わったから出るよ」
「タオル出してあるから使え。ピンクの、ふかふかの方」
「……はーい」
ぴんく、ふかふか。あまりにも似合わん。可愛い。
わざわざふかふかにしてくるところも可愛い。肌を傷つけないためであろう。本当に何にでも凝るなこの人は。
「武藤様、ほどほどにね」
なにもかも。言ったところでわかっちゃいないんだろうけど。
「俺は武藤様が心配だよ」
朝必ず顔を見にくるのを知っている。眠っている俺を見て、何やら黙り込んで、起こさないように出ていく。
どう足掻いても健全な状態でない癖に、本人は悪事が苦手ときた。拒絶して傷付けるのも嫌なので出来る範囲は受け入れてやりたいが。
「最近武藤様、笑わないから」
「……」
俺は武藤様の笑顔が好きだ。時折見せてくれる咲きこぼれるような顔は、みんな想像がつかないだろうけど、眉が下がって儚くはにかむように笑うんだ。
気弱な一人の男の子みたいな顔が俺は好きだ。
最近はそれが全然ない。
やりたいなら監禁でもなんでもやればいい。俺は武藤様が好きで、愛してるから、多分なんでも受け入れる。
全く面倒なやつである。武藤様も、俺も。
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