王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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ふれあい犬コーナー。ぱすぱすと尻尾を振るサモエドの真っ白な雪わたちゃんはいつもの事だが、その目の前には異様な雰囲気の副会長が座り込んでいた。

「ふ、副会長様……!?」「副会長様もふれあいコーナーに!? なんて美しい絵面なんだ……」「犬怯えてない?」「何で動かないんだろう」「バカ! 副会長様は視察で来られたんだぞ、お美しい副会長様のことだ、犬に触りたいわけでもないんだろう」「崇高な副会長様に犬も怯えてるだけだろ!」

周囲もその異様な光景にザワザワと囁き合い始める。文化祭では生徒会役員がどこを闊歩してようと基本的に触れないのが不文律──彼らも文化祭を楽しみたいだろうと、二年生の頃俺が風潮を作っておいた──だが、犬の前でぎこちなく手を上下(多分撫でてるつもり)させている副会長には流石に触れざるを得ないだろう。

「ふーくかいちょ」
「ッ!? た、田中さっ、宗介……」

おお~これは相当参っている。そりゃそうだよな、撫でようとした手を犬が遊んでもらえるのだと勘違いしてカプカプ噛み付いているのだし。

でも仕方ない。犬って手をチラチラさせるだけでなんか遊びだと思っちゃうし。子犬は特に。

珍しく動揺を顔に出した副会長に苦笑し、畏れ多いのか後ろに誰も並んでいないのを確認し、しれっと隣に座らせてもらった。

「水瀬が呼んでたよ~? 同行者ってふくかいちょ~?」
「あ……ああ、はい。確かに同行者は私です。正門で遭遇しそのまま連れさられましてね」
「うはは、強引だなぁ~。水瀬がごめんね~」

水瀬はたいして知り合いじゃなかろうと因縁があろうとこうして適当に声をかけて一緒に遊ぶ、という芸当ができる男なのである。基本的に爽やかでコミュ強。そう、俺の真反対ともいえよう。

新たな人間の登場に沸いているいぬがつぶらなひとみでこちらを眺め尻尾をブンブンと振っている。こういうのって筋肉痛とかにならないのだろうか。
ドッグランの併設されている豪華な犬小屋は常に22度程度に温度が保たれており、床はフローリングとなっている。
そのため爪が削れておらず、犬が動くたびにちゃかちゃかと音を鳴らしていた。

「おーよしゃよしゃよしゃよしゃかわいいなー顔が可愛いなー凄いなこれはーー。このイタズラ小僧め、たくさん可愛がられたか~? ん?」
「ゥフッ」
「そうかそうか~良かったなー」

遠慮なくワッシャと撫で回していたら、おやこの人間はどうやら自分を撫でているらしいと認識したサモエドはわっふわっふと興奮し始め尻尾を振りながらコロンと腹を見せた。

あそぼあそぼから撫でていると認識するまでだいぶタイムラグがあったが、可愛いのでよしとする。

「そういえば、このしらたまさんも貴方が保護したとの事でしたが」
「しらたま……? 何……?」
「アンケートで決まった名前だそうですよ」
「ヘェー」

可愛い名前をつけてもらったものである。それこそしらたまのようにブルンブルンと動くたびに毛が揺れる犬を撫でながら、じっとしらたまを見つめる副会長をチラ見した。

「……撫でてみる?」
「いえ。私では怖がらせてしまいますので」

周囲の視線も集まりすぎているので、と付け加えられた。難儀な人だ。あつまった視線の二割くらいは俺のせいでもあるので少し申し訳なく思った。

撫でスキルが高い方ではないが、俺のテンションが高いからかしらたまも釣られて興奮しているらしく離れていく様子はない。

じっ……とこちらを見つめてくる副会長が満足するまで撫でておこう。武藤様の幼馴染ゆえか、無言で視線で何かを訴えがちである。多分こういう時にいつも真道とかが察して叶えてたんだろうな。

「……ですが、写真を撮っても?」
「何だそのくらい。いいよ~」

いそいそとスマホを構える副会長は、その美しい顔が少し緩んでいて可愛らしい。薄緑のスマホカバーにクローバーの模様がちょこんと載っているそれは、無性別的というには少し可愛らしすぎる。

「よーしよしよしよし。可愛いねぇ~生きててえらいね~かしこいねぇ~」
「……ビデオを撮っても?」
「いいよぉ~。おれ黙ってようか?」
「いえ。声をかけられた方がしらたまさんも嬉しそうですので」

まぁそれはそうである。犬はこういう声のトーンを読み取るらしい。俺の声が入っていて申し訳ないが、しらたまの可愛いショットを撮るには必要な事だと思い諦めてほしい。

何故か俺のしらたま全体が映るようにビデオを撮る副会長に付き合っていると、周囲で見ていた生徒たちもそれぞれスマホを構え始めた。肖像権の侵害だぞ! 別に良いけどさ、慣れてるし。

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