50 / 252
いざゆけ魔法学校
29
しおりを挟む
気が付けば、胸元に体を預け(させられ)ていたヴィンセントの瞼がいつの間にか閉じていた。
引っ掛けないように髪を撫で、出していた温風を引っ込めてもなおその目は閉じたまま、体もぐったりと力が抜けている。
「……寝た?」
その衝撃はまあまあ強かった。
ヴィンセントといえば、ルースと出会うまでは孤独な人気者だった。誰にも油断できず、愛さず、他人の前で眠るなんて絶対にしないような。
だからヴィンセントには、ルースの前で眠る専用スチルがあって。そんなの絶対、アーノルドには見せるはずがなくて。
(……関係が変化してる?)
まずいかもしれない。
確かに俺は死にたくないのでゲームの流れは変えたいが、ルースの物語が始まるまではできる限り沿って欲しい。できればルート確定まで。
ここでアーノルドとヴィンセントの関係が変化して、本編に影響が…………
出るか……?
(恋は止められないだろルースめちゃくちゃ美少年だし守りたくなるし正ヒロイン? 正ヒーロー? だし)
所詮俺は引き立ての悪役で、俺とヴィンセントが友達になったところでたいして強い影響があるとは思えない。
てかむしろ横から口出ししやすくなってるのでは? 今までの公明正大な学級長だとフラグ管理しにくいから、そもそもどうにかしようとは思ってたんだよな。
まあ……なら、いっか……。
取り巻きは悔しすぎるから絶対やりたくないけど、怒りがあまり長続きしないタイプなのでそこまでもう嫌いじゃないんだよなぁ。ヴィンセント。
何よりやっぱり性癖を詰めているので好きだ普通にビジュが。性格も好き。俺への態度がめちゃくちゃ嫌いなだけで。
「ちょっと触るぞ、ヴィンセント」
言い終えてから敬称つけてないなと気がついたがまあいいだろ寝てるし。
まだ華奢な体を抱き上げて、急激に伸びた骨に追いついていないそれをベッドに優しく寝かせる。
コテンと傾げられた首に柔らかそうな金糸がかかっていて、それが案外ごわついているのに笑いながら払ってやる。
ちょっと寝苦しいだろうか? 前を開けてやっても起きない。相当疲れているとみた。
「ま、学期始まったばっかって疲れるしな。お前は意外と人に囲まれるのが好きじゃない……」
でも人と関わるのは好きなのだ。ただ、何人も同時に相手するのは向いてない。多分自分でも気がついていないのだろうが、他者を疎かにすることに対してストレスを抱えるたちだからな。
いまこいつが自分に課した状況は真逆だ。それも新入生が増え交流(意味深含む)していくごとにストレスは知らずのうちにかかっていく。
だからといってわざわざ教えてやらないのだが。そういうのは自分で向き合え!
「自分のこともよく分かってないくせに、他人を世話しようとするんだから。ままならないやつ……青春を感じるぜ」
「んん……」
「はいはい」
この事は、シナリオライターしか知らない。お前をかつて作った人物。ぐずるように伸ばす手が今は亡き母に向けられたものであることも、その手を握られて本当は安心することも。
だから硬い手でよければ握ってやるし、眠れもしないくせにしばらくその腕の中に収まってやることにする。せいぜい抱き枕にしてくれこの俺を。
(お前も数奇な運命になっちゃったなぁ)
そうしたのは俺なんだけど。
性癖だけを詰めると良くないな。よくない。絶対幸せにしてやるからちゃんと希望をそこそこに持って生きていってくれよ。
別に強くある必要はない。
がんじがらめで、自分で幸せになんてなれないやつだって確かにいるのだし。
引っ掛けないように髪を撫で、出していた温風を引っ込めてもなおその目は閉じたまま、体もぐったりと力が抜けている。
「……寝た?」
その衝撃はまあまあ強かった。
ヴィンセントといえば、ルースと出会うまでは孤独な人気者だった。誰にも油断できず、愛さず、他人の前で眠るなんて絶対にしないような。
だからヴィンセントには、ルースの前で眠る専用スチルがあって。そんなの絶対、アーノルドには見せるはずがなくて。
(……関係が変化してる?)
まずいかもしれない。
確かに俺は死にたくないのでゲームの流れは変えたいが、ルースの物語が始まるまではできる限り沿って欲しい。できればルート確定まで。
ここでアーノルドとヴィンセントの関係が変化して、本編に影響が…………
出るか……?
(恋は止められないだろルースめちゃくちゃ美少年だし守りたくなるし正ヒロイン? 正ヒーロー? だし)
所詮俺は引き立ての悪役で、俺とヴィンセントが友達になったところでたいして強い影響があるとは思えない。
てかむしろ横から口出ししやすくなってるのでは? 今までの公明正大な学級長だとフラグ管理しにくいから、そもそもどうにかしようとは思ってたんだよな。
まあ……なら、いっか……。
取り巻きは悔しすぎるから絶対やりたくないけど、怒りがあまり長続きしないタイプなのでそこまでもう嫌いじゃないんだよなぁ。ヴィンセント。
何よりやっぱり性癖を詰めているので好きだ普通にビジュが。性格も好き。俺への態度がめちゃくちゃ嫌いなだけで。
「ちょっと触るぞ、ヴィンセント」
言い終えてから敬称つけてないなと気がついたがまあいいだろ寝てるし。
まだ華奢な体を抱き上げて、急激に伸びた骨に追いついていないそれをベッドに優しく寝かせる。
コテンと傾げられた首に柔らかそうな金糸がかかっていて、それが案外ごわついているのに笑いながら払ってやる。
ちょっと寝苦しいだろうか? 前を開けてやっても起きない。相当疲れているとみた。
「ま、学期始まったばっかって疲れるしな。お前は意外と人に囲まれるのが好きじゃない……」
でも人と関わるのは好きなのだ。ただ、何人も同時に相手するのは向いてない。多分自分でも気がついていないのだろうが、他者を疎かにすることに対してストレスを抱えるたちだからな。
いまこいつが自分に課した状況は真逆だ。それも新入生が増え交流(意味深含む)していくごとにストレスは知らずのうちにかかっていく。
だからといってわざわざ教えてやらないのだが。そういうのは自分で向き合え!
「自分のこともよく分かってないくせに、他人を世話しようとするんだから。ままならないやつ……青春を感じるぜ」
「んん……」
「はいはい」
この事は、シナリオライターしか知らない。お前をかつて作った人物。ぐずるように伸ばす手が今は亡き母に向けられたものであることも、その手を握られて本当は安心することも。
だから硬い手でよければ握ってやるし、眠れもしないくせにしばらくその腕の中に収まってやることにする。せいぜい抱き枕にしてくれこの俺を。
(お前も数奇な運命になっちゃったなぁ)
そうしたのは俺なんだけど。
性癖だけを詰めると良くないな。よくない。絶対幸せにしてやるからちゃんと希望をそこそこに持って生きていってくれよ。
別に強くある必要はない。
がんじがらめで、自分で幸せになんてなれないやつだって確かにいるのだし。
565
あなたにおすすめの小説
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?
パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」
「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」
カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦
初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました!
その後のお話もあるので良ければ
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼2025年9月17日(水)より投稿再開
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる