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いざゆけ魔法学校
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翌日。
俺はそばにいてやったことを多少なりともまあだいぶ後悔していた。
「ちょっとヴィンセント。どういうこと? なんで学級長がいるわけ?」
「いや、だから誤解だって。フツーに一緒に寝てただけ。つーかなんでお前そんな苛ついてんの?」
「は!? なんでって……当たり前じゃん!」
朝っぱらから修羅場に巻き込まれていたからだ。
不眠と言ったって、別に一日中眠れないわけじゃない。眠れる瞬間と眠れない瞬間があって、俺は早朝付近になってようやく眠れたのだ。
眠れたのに起きたらこれです。本当にこいつは最悪。
「ヴィンセント、一日僕と一緒に居るって言ったよね!? てか今ヴィンセントと付き合ってんの僕なわけじゃん!」
「あー、そうだっけ」
そうだったんだ。ヴィンセントお前なんだその返事お前今最悪に最悪を重ねてるぞ。昨日の俺は頭がおかしかった、やはりこいつはカス。
窓の外は小鳥が鳴き、見えないがおそらく柔らかくな朝陽がさしているであろう穏やかな朝。内装はほとんど俺とセリオンの住んでるようなのと同じで、ああ~セリオンに会いたい。
「そっ、そう! だから起こしにきてんじゃん!? なんで忘れるわけ、意味わかんないんだけど!」
「は? 何でそんなキレてんの。覚えてないけどさ、付き合った時束縛すんなって言ったよな? 俺が誰と遊んでも自由って」
「言ったよ!? 言ったけど……! 普通彼氏優先するもんでしょ!? 僕だってそうだし、大体学級長だって知ってたはずじゃん、真面目な顔してとんだビッチ──」
ガッ!!
鈍い打撃音と共に室内が静まり返る。
俺がこの、声を荒げ始めた少年を殴ったというわけではない。そんな酷いことするわけないだろ、真っ直ぐ恋してるだけだヴィンセントに。
恋する相手最悪すぎるが、まあアーノルドが言えた義理ではないので……
じゃあ何の音かと聞かれたら。答えてあげるが世の情け。
俺の固く握られた拳は殴打の衝撃でじんと痺れている。ポカンと口を開ける少年、ああなんだったっけ、去年までヴィンセントの取り巻きの一人だった子。
そして倒れ伏すヴィンセント。そう、俺が殴った相手です。数ヶ月ぶり二回目の殴打。鼻折られてないだけマシと思えよ。
「…………起きてみれば遊んだだの遊んでいないだの。付き合っているだの束縛するなだの。随分とお前達は校則違反を自慢したいようだな? 俺の目の前で…………」
「ッヒ! ちっ、違……ごめんなさっ……いや、学級長だってなんでここで寝てるの!?!? おかしいじゃん!!」
「ほら」
一応念のために書いててよかった外泊届。
箒代わりのトランクから一枚紙を取り出し、可愛らしい印象の少年に渡す。その顔から血の気が引いた。理由の欄でも見たのだろう。
「不眠症の改善だ。どこかの寮が問題行動しか起こさないからな、癒し手の力が欲しかった。
この学校にはこいつしかいないし、何より最も問題を起こすコレを抑えておけば多少はこの穴が空いた胃に優しいかと思ってな……」
「いっ、でぇぇえ!! ちょっお前マジで本気で殴った今!?!? 信じられん王子なんですけど」
「本当に黙れ。お前の問題に俺を巻き込むな。俺の問題は大半お前のせいだからさっさと解決しろ」
「理不尽に見えて切実すぎなんだけどおもろ」
おもろがるな。
めちゃくちゃメンヘラ束縛彼女みたいなヒスを起こしていたとは言え、やはり貴族の子息である以上きちんと教育は受けてきている相手だ。
公爵家の嫡子にかなり影響の出るストレスを与えていたと思い至る脳はあり、そして思い至った結果反省しないような愚か者でもない。
何しろこの学年まで順当に上がってこれる力を持っているのだから。ついでにいえば、ヴィンセントのやっている「細胞の働きを操って無理やり休眠状態にする」という離れ業の理屈をサッと理解できる頭脳もあるだろうな。
「うわっ、てか学級長目元ヤバいよ。そういう魔物かと思った」
「少しでも眠れないのは致命傷だからだ。好き好んでお前とねんねしたいわけないだろう」
「……ってこと! 納得した?」
「おい、謝れ」
どうやらべっとりとついて落ちないクマ──結構薄くなってきた方なんだぞ──も見せてしまったらしく、少年はサッと顔を青ざめさせてごめんなさいと口にした。
「そっ、そんなことだとは思わなくて! そうだよね、学級長って言ったら真面目の権化で公明正大で……ヴィンセントと寝るわけないよね、ごめんなさい」
「あれ? 俺の信用」
そこは自業自得だろ。
俺はそばにいてやったことを多少なりともまあだいぶ後悔していた。
「ちょっとヴィンセント。どういうこと? なんで学級長がいるわけ?」
「いや、だから誤解だって。フツーに一緒に寝てただけ。つーかなんでお前そんな苛ついてんの?」
「は!? なんでって……当たり前じゃん!」
朝っぱらから修羅場に巻き込まれていたからだ。
不眠と言ったって、別に一日中眠れないわけじゃない。眠れる瞬間と眠れない瞬間があって、俺は早朝付近になってようやく眠れたのだ。
眠れたのに起きたらこれです。本当にこいつは最悪。
「ヴィンセント、一日僕と一緒に居るって言ったよね!? てか今ヴィンセントと付き合ってんの僕なわけじゃん!」
「あー、そうだっけ」
そうだったんだ。ヴィンセントお前なんだその返事お前今最悪に最悪を重ねてるぞ。昨日の俺は頭がおかしかった、やはりこいつはカス。
窓の外は小鳥が鳴き、見えないがおそらく柔らかくな朝陽がさしているであろう穏やかな朝。内装はほとんど俺とセリオンの住んでるようなのと同じで、ああ~セリオンに会いたい。
「そっ、そう! だから起こしにきてんじゃん!? なんで忘れるわけ、意味わかんないんだけど!」
「は? 何でそんなキレてんの。覚えてないけどさ、付き合った時束縛すんなって言ったよな? 俺が誰と遊んでも自由って」
「言ったよ!? 言ったけど……! 普通彼氏優先するもんでしょ!? 僕だってそうだし、大体学級長だって知ってたはずじゃん、真面目な顔してとんだビッチ──」
ガッ!!
鈍い打撃音と共に室内が静まり返る。
俺がこの、声を荒げ始めた少年を殴ったというわけではない。そんな酷いことするわけないだろ、真っ直ぐ恋してるだけだヴィンセントに。
恋する相手最悪すぎるが、まあアーノルドが言えた義理ではないので……
じゃあ何の音かと聞かれたら。答えてあげるが世の情け。
俺の固く握られた拳は殴打の衝撃でじんと痺れている。ポカンと口を開ける少年、ああなんだったっけ、去年までヴィンセントの取り巻きの一人だった子。
そして倒れ伏すヴィンセント。そう、俺が殴った相手です。数ヶ月ぶり二回目の殴打。鼻折られてないだけマシと思えよ。
「…………起きてみれば遊んだだの遊んでいないだの。付き合っているだの束縛するなだの。随分とお前達は校則違反を自慢したいようだな? 俺の目の前で…………」
「ッヒ! ちっ、違……ごめんなさっ……いや、学級長だってなんでここで寝てるの!?!? おかしいじゃん!!」
「ほら」
一応念のために書いててよかった外泊届。
箒代わりのトランクから一枚紙を取り出し、可愛らしい印象の少年に渡す。その顔から血の気が引いた。理由の欄でも見たのだろう。
「不眠症の改善だ。どこかの寮が問題行動しか起こさないからな、癒し手の力が欲しかった。
この学校にはこいつしかいないし、何より最も問題を起こすコレを抑えておけば多少はこの穴が空いた胃に優しいかと思ってな……」
「いっ、でぇぇえ!! ちょっお前マジで本気で殴った今!?!? 信じられん王子なんですけど」
「本当に黙れ。お前の問題に俺を巻き込むな。俺の問題は大半お前のせいだからさっさと解決しろ」
「理不尽に見えて切実すぎなんだけどおもろ」
おもろがるな。
めちゃくちゃメンヘラ束縛彼女みたいなヒスを起こしていたとは言え、やはり貴族の子息である以上きちんと教育は受けてきている相手だ。
公爵家の嫡子にかなり影響の出るストレスを与えていたと思い至る脳はあり、そして思い至った結果反省しないような愚か者でもない。
何しろこの学年まで順当に上がってこれる力を持っているのだから。ついでにいえば、ヴィンセントのやっている「細胞の働きを操って無理やり休眠状態にする」という離れ業の理屈をサッと理解できる頭脳もあるだろうな。
「うわっ、てか学級長目元ヤバいよ。そういう魔物かと思った」
「少しでも眠れないのは致命傷だからだ。好き好んでお前とねんねしたいわけないだろう」
「……ってこと! 納得した?」
「おい、謝れ」
どうやらべっとりとついて落ちないクマ──結構薄くなってきた方なんだぞ──も見せてしまったらしく、少年はサッと顔を青ざめさせてごめんなさいと口にした。
「そっ、そんなことだとは思わなくて! そうだよね、学級長って言ったら真面目の権化で公明正大で……ヴィンセントと寝るわけないよね、ごめんなさい」
「あれ? 俺の信用」
そこは自業自得だろ。
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