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ハロルド視点
しおりを挟む「馬っ鹿モーン━━━━━━!!」
「ぐはぁ!」
父上は容赦なく新しい杖で殴った。
「兄上…おかしなことをしないで下さいと昨日言ったじゃないですか。」
もう終わったんだ…。
俺はもう終わりだ。
「大体、今日あれだけのことがあって疲れてないんですか?」
アーヴィンの声さえ遠くに聞こえていた。
「全く、明日にはラケル様に慰謝料を持って謝罪に行く予定なのに、何をしているんですか。」
「ラケルに慰謝料?」
何でラケルに?
どうやら、アーヴィンは父上と明日にはラケルとクロードに謝罪に行く段取りをつけていたようだった。
「当たり前です!兄上の一方的な婚約破棄にメイベル様との浮気。その上クロード様にまで無礼を働いて…。まだクロード様は爵位を継いでないので公爵様ではありませんが、兄上の態度は問題です。アラステア公爵様が乗り込んで来たらどうするんですか?」
公爵が乗り込んで来る?
そうだ…乗り込んで来る可能性だってあるんだ!
不味いぞ!
何で俺はあんな言い方をしたんだ!?
「ク、クロードにはこのことはっ!?」
「バレるに決まっていますよ。ラケル様の平屋に騎士様を配置したのはクロード様ですよ。今頃、うちに向かっているんじゃないですか? 」
「クロード殿を呼び捨てにするんじゃない!!様をつけんか!この馬鹿者!」
「ぐはぁ!」
過呼吸でも起こしそうなほど息の荒い父上はまた俺を杖で殴っていた。
もう嫌だ。俺はもう終わったのに…。
そして、深夜なのにクロード…様とラケルがやって来た。
部屋に入って来た二人はクロード様がラケルの肩に手を回し、寄り添っていた。
「あの…ハーヴィ伯爵。まさかハロルド様に暴力を?」
俺の殴られた姿を見たラケルは俺を心配そうに言ってくれた。
「ラケル…すまない!殴っても殴り足りん!」
父上はラケルに謝っていた。
「ハーヴィ伯爵が捕まってはいけませんのでそのくらいで…お体は大丈夫ですか?」
ラケルが心配していたのは俺じゃなくて、父上だった。
「クロード様、兄ハロルドが申し訳ないことをしました。兄に見張りをつけるべきでした。私の失態です。」
「どうせ、ラケルの持っている婚約破棄の書類を狙っていたのだろう。だが、あれは俺が持っている。貴様には手は出せんぞ。」
「じゃあ…俺がしたことは…?」
「無駄だったな!」
項垂れている俺を無視して、アーヴィンとクロード様は話を続けた。
「兄をつき出しますか?」
「そちらの処分の仕方による。」
そして、アーヴィンは今日決めた俺の処遇を話し出した。
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