婚約破棄されたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。

屋月 トム伽

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腰痛持ちなのです

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やっとラケルと話せて、婚約まで出来た。
しかし、あの元婚約者はおかしすぎる!
ラケルの婚約破棄の書類も、何かあった時の為に俺が預かることにした。

大事なラケルに何かあると困るのだ。

そして、そろそろ寝ようと思った時にラケルがやって来た。

「ラケル、どうしたんだ?」
「お茶をお持ちしました。」

何故夜にラケルが?
しかも、ラケルも既に寝支度を整えた姿じゃないか。

「…マーカスはいないのか?」
「それが、私にお茶を持って来て下さって、そのタイミングで腰が痛くなりまして…クロード様のお茶は私が持って来ました。」
「…マーカスの腰が…?」
「演技臭かったですけど。」

マーカス…一体何を考えているんだ…。

「ありがとう。頂くよ。」
「良ければお茶も淹れますよ。」
「…それは大丈夫だ。もう夜遅い。部屋には入らない方がいい。危険だ。」
「危険ですか?」

俺は男なんだ。
そんなナイトドレス姿で来られたら…色々我慢があるんだ。

「まぁ、では早く結婚して夫婦にならないといけませんね。そしたら、寝る前にお茶を淹れてあげますね。」

雷が体を走るのを我慢している気分だった。
可愛い過ぎる。何故そんな可愛いことを言うんだ!

「…ラケル…」

せめてキスをしたい衝動が沸き立ち、ラケルを抱き寄せた時、マーカスが走ってやって来た。
どこからどうみても、腰痛はない。
やっぱり演技か!
何を考えているんだ!

「クロード様!同僚の騎士が来られました!」
「…マーカス、腰はどうなんだ?」
「私は腰痛持ちなのです。もう年ですから。」

シレッと言うな!
腰痛持ちなんて初めて聞いたぞ!
二人っきりにしたいならこのタイミングで来ないでくれ!

しかも、同僚の騎士が来たということは…。
もう言わなくてもわかった。
ハロルドが、ラケルの平屋に来たんだ。
やはりラケルを俺の邸に連れて来て良かった。

帰りに騎士団に警備を要請しておいて良かった。

「ラケル…」
「は、はい、何でしょう?」

赤い顔のラケルを抱き寄せたまま、体が密着しており、ラケルは俺の腕の中にいた。
マーカスは、やりましたね!というような顔になっていた。
そのガッツポーズみたいな握り拳はやめてくれ。

「…ハロルドを捕まえたんだと思う。少し、ハーヴィ伯爵の邸に行って来る。」
「では、私も…」
「君は邸にいてくれ。」
「いけません。私の問題です。私は行くべきです。」
「ラケルの問題は俺の問題でもある。」
「それでも、私も一緒に行きます。」

ラケルは譲らないという強い眼だった。

「わかった…一緒に行こう。」

そして深夜だが、ハーヴィ伯爵邸へと向かった。


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