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第二章 ユニコーン
奉殿の幻獣 2
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「……アリエッタ。王妃様をお願いします」
「フィリ―ネ様!?」
「私がユニコーンの幻獣士かどうかはわかりませんが……この国に戻ってから奉殿から呼ばれている気はしていたのです」
部屋に置いてあるフェリクス様から頂いた杖を取り、アリエッタにそう言った。
「フェリクス様をお待ちにはならないのですか? お伝えしなければ……」
「フェリクス様は、知っています」
彼にも私の心の声が聞こえていたから、何かに呼ばれていることは知っていた。
「きっとすぐに来てくれます。でも、それまでにお子に何かあれば大変です」
本当は怖くて行きたくない。でも、赤ちゃんがあの場所にいるのはダメだと思う。
「行って来ますね。アリエッタ」
「おいて行かないでくださいね。私たちは、フィリ―ネ様をお守りするためにいるのです。それに、友人になりましたわ」
笑顔でそう言ってくれるアリエッタにつられて頬が緩んだ。友人……いい響きです。
「私も行きます! 奉殿は、決められた人間しか入れないのですよ! フィリ―ネ様では……」
「私一人では、入れてもらえないのですね。王妃様も私が嫌われていることをご存じなのですね」
王妃様は申し訳なさそうに顔を背けた。そう思われていることがアリエッタに知られて恥ずかしくなる。嫌われ者など友人を辞められるかもしれない。
でも、不思議と泣けなかった。以前の軟禁されていた時は、人知れず泣いていた。
それが、いつしか当然になり涙も出なくなった。ただ、感情に振り回されないようにしなくてはと思い、そうしてきた。
それなのに、今はなぜか違う。
「あれは、フィリ―ネ様のせいではございません。あれは、陛下たちが……」
「兄上ですか? でも、私は父上にも嫌われていました」
奉殿へと早足で進みながら、王妃様は話していた。後ろにはアリエッタたちが、周りを警戒しながらついて来ていた。
「……フィリ―ネ様。フェンヴィルム国はどうですか? フェリクス陛下は、フィリ―ネ様を大事になさっているように見えましたが……」
ここでも、私がフェリクス様に愛されていると思われている。人前では、いつも大事にしているように側にいてくれるからだ。
最初はそれだけだったのに、今では、毎晩夜もいつの間にかベッドに入り込んでいるし、フェリクス様は、よくわからない人なのですよと言いたくなる。
「もちろんですわ。フェリクス様は、フィリ―ネ様を溺愛しております」
「あぁ、良かった……それなら、絶対にディティーリア国には帰ってはいけませんよ。どうかフェリクス陛下のところで幸せになってください……」
アリエッタが、自信満々でそう言うと、王妃様は安堵したかと思えば今にも泣きそうになっている。その王妃様の言っている意味が、よく理解できなかった。
奉殿の前に着くと、多くの騎士たちが集まっていた。その中の一人、高官らしい高齢の男性に王妃様が駆け寄った。
「お父様!」
「フィリ―ネ様をお連れしたのか!?」
「はい。フィリ―ネ様が私たちを助けてくださいます! すぐに私たちも入ります!」
高齢の男性は、王妃様のお父上。彼は、ウェルズ公爵様で代々王族の側近を務めているという。その彼は、私に頭を下げて感謝を述べた。
「フィリ―ネ様。感謝いたします。ですが、中にはこの雷が防壁のようになっておりまして……」
奉殿の入り口には、誰も侵入できないように雷の防壁ができている。
「でも、何とかして入らないと……」
そう言いながら、近づくと雷が止まった。明らかに私に反応している。ウェルズ公爵も、驚きを隠せなかった。
「まさか……あれほど我々が破ろうとしても、変わらなかったのに……」
「やっぱり……フィリ―ネ様が、幻獣士なのですよ。ユニコーンが反応しているのはフィリ―ネ様で間違いないのですよ!! 怒らせたのは、エルドレッド陛下ですわ!!」
父親であるウェルズ公爵に詰め寄り、私の兄上__エルドレッド陛下を責める王妃様は怒っている。
そんな状況が目の前で起きているのに、不思議と目の前が遠くに感じて始めている。
『………………』
頭の中で、私を呼ぶ声が響いている。
「フィリ―ネ様!? どうなさったのです!? フィリ―ネ様!?」
アリエッタが、虚ろな私を呼んでいる。そして、まどろみながら、私は奉殿へと足を誘われるがままに踏み入れた。
「フィリ―ネ様!?」
「私がユニコーンの幻獣士かどうかはわかりませんが……この国に戻ってから奉殿から呼ばれている気はしていたのです」
部屋に置いてあるフェリクス様から頂いた杖を取り、アリエッタにそう言った。
「フェリクス様をお待ちにはならないのですか? お伝えしなければ……」
「フェリクス様は、知っています」
彼にも私の心の声が聞こえていたから、何かに呼ばれていることは知っていた。
「きっとすぐに来てくれます。でも、それまでにお子に何かあれば大変です」
本当は怖くて行きたくない。でも、赤ちゃんがあの場所にいるのはダメだと思う。
「行って来ますね。アリエッタ」
「おいて行かないでくださいね。私たちは、フィリ―ネ様をお守りするためにいるのです。それに、友人になりましたわ」
笑顔でそう言ってくれるアリエッタにつられて頬が緩んだ。友人……いい響きです。
「私も行きます! 奉殿は、決められた人間しか入れないのですよ! フィリ―ネ様では……」
「私一人では、入れてもらえないのですね。王妃様も私が嫌われていることをご存じなのですね」
王妃様は申し訳なさそうに顔を背けた。そう思われていることがアリエッタに知られて恥ずかしくなる。嫌われ者など友人を辞められるかもしれない。
でも、不思議と泣けなかった。以前の軟禁されていた時は、人知れず泣いていた。
それが、いつしか当然になり涙も出なくなった。ただ、感情に振り回されないようにしなくてはと思い、そうしてきた。
それなのに、今はなぜか違う。
「あれは、フィリ―ネ様のせいではございません。あれは、陛下たちが……」
「兄上ですか? でも、私は父上にも嫌われていました」
奉殿へと早足で進みながら、王妃様は話していた。後ろにはアリエッタたちが、周りを警戒しながらついて来ていた。
「……フィリ―ネ様。フェンヴィルム国はどうですか? フェリクス陛下は、フィリ―ネ様を大事になさっているように見えましたが……」
ここでも、私がフェリクス様に愛されていると思われている。人前では、いつも大事にしているように側にいてくれるからだ。
最初はそれだけだったのに、今では、毎晩夜もいつの間にかベッドに入り込んでいるし、フェリクス様は、よくわからない人なのですよと言いたくなる。
「もちろんですわ。フェリクス様は、フィリ―ネ様を溺愛しております」
「あぁ、良かった……それなら、絶対にディティーリア国には帰ってはいけませんよ。どうかフェリクス陛下のところで幸せになってください……」
アリエッタが、自信満々でそう言うと、王妃様は安堵したかと思えば今にも泣きそうになっている。その王妃様の言っている意味が、よく理解できなかった。
奉殿の前に着くと、多くの騎士たちが集まっていた。その中の一人、高官らしい高齢の男性に王妃様が駆け寄った。
「お父様!」
「フィリ―ネ様をお連れしたのか!?」
「はい。フィリ―ネ様が私たちを助けてくださいます! すぐに私たちも入ります!」
高齢の男性は、王妃様のお父上。彼は、ウェルズ公爵様で代々王族の側近を務めているという。その彼は、私に頭を下げて感謝を述べた。
「フィリ―ネ様。感謝いたします。ですが、中にはこの雷が防壁のようになっておりまして……」
奉殿の入り口には、誰も侵入できないように雷の防壁ができている。
「でも、何とかして入らないと……」
そう言いながら、近づくと雷が止まった。明らかに私に反応している。ウェルズ公爵も、驚きを隠せなかった。
「まさか……あれほど我々が破ろうとしても、変わらなかったのに……」
「やっぱり……フィリ―ネ様が、幻獣士なのですよ。ユニコーンが反応しているのはフィリ―ネ様で間違いないのですよ!! 怒らせたのは、エルドレッド陛下ですわ!!」
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そんな状況が目の前で起きているのに、不思議と目の前が遠くに感じて始めている。
『………………』
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