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第二章 ユニコーン
奉殿の幻獣 3
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呼ばれるがままに奉殿の中を歩いていた。この先には、私がお父様に連れていかれた御簾があるところだ。
子供の泣き声がする。それが、私のまどろんでいる意識を保っていた。
御簾のある部屋にたどり着くと、兄上が幻獣ユニコーンから必死で子供を守ろうと抵抗している。
「本当にユニコーンがいた……」
植物に囲まれた御簾は、開けられておりそこから出てきたのだとわかる。
そのユニコーンに近づこうとすると、私よりも先にユニコーンが側に寄ってきた。
『やっと来た……』
「私を呼んでいたのはあなたですか?」
頭を垂れるユニコーンの顔に手を添えると、兄上は怒り私を責めた。
「そんなはずはない! この幻獣が動いた時にお前は居なかった! 才能もない役立たずのくせに……誰がこの奉殿への侵入を許した!?」
その怒号に子供は、さらに泣き喚いた。
「ユニコーン様。子供を外に出して上げて下さい。母親である王妃様が心配してます」
『無垢な子供は、傷付けない』
ユニコーンは、子供を慈しむように目を向けると、子供がゆっくりと眠りについた。
「兄上。お子を……」
「お前が、ユニコーンの幻獣士なわけがない……! なら、なぜ母上は死んだんだ! お前を産みさえしなければ、父上だって……!」
「あの……」
「ユニコーンの幻獣士なら、なぜもっと早く起こさなかった!? 何のためにお前を産んだと思っているんだ!」
私を責める兄上には憎しみがこもっていた。
「わかりません。私は何も……」
「わかりませんだと! 母上が死んだのはお前のせいだぞ! 身体が弱く病魔に侵されていたのに、お前がユニコーンを起こせると予言を受けたために、父上は一縷の望みをかけて子を成したんだぞ! それなのに、お前はユニコーンも起こせず、母上を助けられなかったのに……なぜ今さら、幻獣士などに……!」
眠った子供を抱いたままで兄上は、堰が切れたように叫んだ。
その兄上の言葉にユニコーンが私の側で言葉を吐く。
『私の万能薬を欲したか……』
「万能薬……?」
『私の一角には、どんなものをも治す。怪我も病魔も……だが、無理だな。フィリ―ネは幼く、心は閉ざされていた。私は、力を蓄えるために眠っていたから起きるつもりもなかったのに……お前たちが騒ぎ、いずれまみえるフィリ―ネとの再会を邪魔しおって……』
母上が死んだのは、やっぱり私のせいだった。父上は、母上を助けたくてユニコーンの力を求めたのだ。だから、三人目の子を儲けるつもりもなかったのに、母上が助かると信じて私を授かろうとしたのだ。でも、母上は身体が弱くもう私の出産に耐えられなかったのだろう。もしかしたら、病魔に侵されていたからかもしれない。
でも、私は、ユニコーンを起こせなかった。父上の私に向けられた憎しみのこもった蔑んでいる顔の意味も分かった。
「それなのに、今さらお前が幻獣士だと! 役立たずの次は、私に恥をかかす気か!!」
「そんなことはいたしません……私は、ディティーリア国には戻りません。すぐにフェンヴィルム国に戻ります!」
(この国には、フェンリルもアリエッタも何よりもフェリクス様がいない。戻りたくないし、私はフェンヴィルム国に帰りたい……)
兄上にこんな風に言ったことがなくて、震えそうな手に力を入れてスカートを握りしめた。
「はっ! フェンヴィルム国が本当にお前を受け入れているものか! 元々お前は、ユニコーンを起こせずに、フェンヴィルム国の前陛下の妾になるはずだったんだからな! それが……」
(妾……? 私が……? じゃあ、フェリクス様は、私を憐れんで……)
それは、恋でも愛でもない。ただ、可哀想だと思っただけのこと。
その時に、ユニコーンが入口の方を向いていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【悪妻なので離縁を所望したのに、旦那様が離してくれません。】
新作投稿始めました。よろしくお願いします!
子供の泣き声がする。それが、私のまどろんでいる意識を保っていた。
御簾のある部屋にたどり着くと、兄上が幻獣ユニコーンから必死で子供を守ろうと抵抗している。
「本当にユニコーンがいた……」
植物に囲まれた御簾は、開けられておりそこから出てきたのだとわかる。
そのユニコーンに近づこうとすると、私よりも先にユニコーンが側に寄ってきた。
『やっと来た……』
「私を呼んでいたのはあなたですか?」
頭を垂れるユニコーンの顔に手を添えると、兄上は怒り私を責めた。
「そんなはずはない! この幻獣が動いた時にお前は居なかった! 才能もない役立たずのくせに……誰がこの奉殿への侵入を許した!?」
その怒号に子供は、さらに泣き喚いた。
「ユニコーン様。子供を外に出して上げて下さい。母親である王妃様が心配してます」
『無垢な子供は、傷付けない』
ユニコーンは、子供を慈しむように目を向けると、子供がゆっくりと眠りについた。
「兄上。お子を……」
「お前が、ユニコーンの幻獣士なわけがない……! なら、なぜ母上は死んだんだ! お前を産みさえしなければ、父上だって……!」
「あの……」
「ユニコーンの幻獣士なら、なぜもっと早く起こさなかった!? 何のためにお前を産んだと思っているんだ!」
私を責める兄上には憎しみがこもっていた。
「わかりません。私は何も……」
「わかりませんだと! 母上が死んだのはお前のせいだぞ! 身体が弱く病魔に侵されていたのに、お前がユニコーンを起こせると予言を受けたために、父上は一縷の望みをかけて子を成したんだぞ! それなのに、お前はユニコーンも起こせず、母上を助けられなかったのに……なぜ今さら、幻獣士などに……!」
眠った子供を抱いたままで兄上は、堰が切れたように叫んだ。
その兄上の言葉にユニコーンが私の側で言葉を吐く。
『私の万能薬を欲したか……』
「万能薬……?」
『私の一角には、どんなものをも治す。怪我も病魔も……だが、無理だな。フィリ―ネは幼く、心は閉ざされていた。私は、力を蓄えるために眠っていたから起きるつもりもなかったのに……お前たちが騒ぎ、いずれまみえるフィリ―ネとの再会を邪魔しおって……』
母上が死んだのは、やっぱり私のせいだった。父上は、母上を助けたくてユニコーンの力を求めたのだ。だから、三人目の子を儲けるつもりもなかったのに、母上が助かると信じて私を授かろうとしたのだ。でも、母上は身体が弱くもう私の出産に耐えられなかったのだろう。もしかしたら、病魔に侵されていたからかもしれない。
でも、私は、ユニコーンを起こせなかった。父上の私に向けられた憎しみのこもった蔑んでいる顔の意味も分かった。
「それなのに、今さらお前が幻獣士だと! 役立たずの次は、私に恥をかかす気か!!」
「そんなことはいたしません……私は、ディティーリア国には戻りません。すぐにフェンヴィルム国に戻ります!」
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兄上にこんな風に言ったことがなくて、震えそうな手に力を入れてスカートを握りしめた。
「はっ! フェンヴィルム国が本当にお前を受け入れているものか! 元々お前は、ユニコーンを起こせずに、フェンヴィルム国の前陛下の妾になるはずだったんだからな! それが……」
(妾……? 私が……? じゃあ、フェリクス様は、私を憐れんで……)
それは、恋でも愛でもない。ただ、可哀想だと思っただけのこと。
その時に、ユニコーンが入口の方を向いていた。
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