陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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㊸平穏の訪れ(クロード)

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「陛下!!すごい怪我じゃないですか!」

シドが慌てて俺の傷を見る。

「シド、俺はまだ大丈夫だ。先にレイラの傷を診てやってくれ、鞭に打たれたんだ。」

「何言ってるの!ミカも打たれたのよ!それにひどい怪我をしているの!ミカの背中、わたくしを庇って落ちたから傷だらけなのよ!ミカを診て!」

「うん、解りましたから、まず陛下です。かなり血を流してるでしょ!それに、右足も・・・感覚あります?」

さすがシド、少しの間でよく見ている。

「ああ、徐々に感覚は戻ってきている。」

俺はシドに診てもらいながらライルに宮廷への早馬を頼んだ。
シーリカ王国を攻める為の準備は既にルーファスとアルファスト侯爵が済ませているだろう。何時でも動ける状態だ。
オリビアが自国に戻って立て直す前に攻め込む。

「この状態でよく動いてましたね。何人倒したんですか?」

シドがなかば呆れたように俺に質問する。

「数える余裕なかったからわからん。多分二十人くらいだろ?普段の状態ならこんな無様なことにはならなかったのにな。」

「そうですね、陛下が通常なら俺達が来る前に一人で片付けちゃってたでしょうね。」

シドは傷を消毒すると、俺の傷を縫い始めた。

「おい、痛いんだが・・・縫うならなんか言え!」

「あれ?陛下なら平気かと思ったんですけど、針の痛みよりキズの痛みで気を失ってもおかしくないくらいなのに、平気な顔していたんで。」

コイツ・・・俺が弱ってるといじめてくるのは昔から変わらんな・・・

「好きにしてくれ。」

縫われる俺をハラハラと見つめるレイラ。

「怖いなら見なくていいぞ。」

「う、うん・・・痛いわよね・・・」

そう言うレイラも鞭を当てられた左肩から血を滲ませている。

「レイラ、今度からは絶対俺の前には出ないでくれ、レイラに傷が残ったら俺は一生後悔する。」

「うん・・・ごめんなさい。」

しょんぼりして俺を見るレイラ。

「でも、まさかレイラがあの場面で俺を庇ってくれるとは思わなかった。驚いたけど、嬉しかったよ。ありがとう。」

そう言って、俺はレイラの頭を撫でた。

「レイラ嬢、けっこう根性座ってますね。カッコイイですよ。」 

シドにカッコイイと言われてレイラは照れていた。そうか、可愛いは言われ慣れてるだろうけど、俺はカッコイイは言ったことなかったな。

俺の治療が終わると、シドが今度はレイラの傷を診始めた。
その頃に残りの護衛とミーナが到着した。
護衛六人の内、四人が岩に当たって落ちてしまったらしく、残っていたのは二人だった。

「レイラお嬢様!良くぞご無事で・・・」

ミーナが涙を流しながらレイラを抱きしめている。

「レイラお嬢様、お怪我が酷いです。痛かったでしょう?」

「ミカが庇ってくれたからわたくしは大丈夫よ。」

レイラの言葉に、ミーナが俺を見る。

「陛下っ!!」

俺の状況を見てミーナが驚いていたけど、レイラを守ってくれてありがとうございますと泣きながら礼を言われた。

その後、道まで馬で移動して、用意された馬車に乗ると、ルシリア帝国に入った。

俺が宮廷に着いた頃には帝国軍はシーリカ王国の城を取り囲んでいた。

俺の状態を見て怒り狂った隊が後から参加したことによってシーリカ王国は呆気なく陥落した。
オリビアは城には入らずこっそり身を隠していた所を見つかり、逃げた所を後ろから切られ、捕えられる前に自決したと聞いた。

旅の最後に後味の悪い出来事が起こったせいで、レイラも少し気を病んでいる。

俺もさすがに無理したせいか、宮廷に戻ってからしばらく寝込んでしまい、その間レイラがずっとそばに居てくれた。
右足の痺れは徐々に引いてきて動けるようになった。戻って良かったとほっとした。

レイラとの結婚は一ヶ月後だ。
今回の件で先延ばしにする意見も出たが、シーリカ王国を落とした事により湧いている今、皇帝の存在を確かなものにする好機だという意見も出たのだ。

今日も俺は仕事を半分もしていない。優秀な部下が沢山出来たことで、俺の負担が随分減った。
さて、一段落したし時間もある。

「陛下、どちらへ?」

おもむろに立ち上がって部屋を出る俺にライルが問いかけてくる。

「離宮へ向かう。」






    
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