陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

文字の大きさ
42 / 44

㊷鞭を掴む(クロード)

しおりを挟む



「うふふっ、絶望した?貴方を捉える為ならこれくらいでも少ないくらいよね?」

オリビアが嬉しそうに笑う。

ご丁寧に全部鎧か・・・

「楽しくなってきたじゃないか。」

とりあえず虚勢を張っておく。

「レイラ、俺の後ろでしゃがんでてくれ。」

レイラに伝えると、気合いを入れ直して今相手している奴らの足元を一気にさらって、体制を崩した奴らの脇に剣を突き刺す。

これで少しは片付いた。
だが、俺が動かず戦うことで、俺の周りには死体が積み上がっていく。

相手もやりにくいらしく、やられた仲間の足を引きずって俺から遠ざける。

片付けご苦労さん。

さて、あと何人かな?
そう思って次の突入隊を見ると、剣を持たずに突っ込んでくる。
 
「なっ、」

俺は五人に体当たりで身体にぶつかられてよろめく。

「つっ・・・」

ぶつかられた拍子に止まっていた血が溢れ出した・・・

「ミカ!」

レイラが俺の脇腹から血が滴るのを見て声を上げる。

鎧達は一旦離れたかと思ったら、また体当たりしてきた。

俺は耐えきれず、膝をつく。

すると油断した何人かが俺を見下ろすようにやってきたので、下から上に向かって首の隙間に刃を突き立てた。
すると今度は一斉に剣を突き立ててくる。
片膝をついた状態で剣を受けるが、キツイ。
何回かは剣がかすって手や体を薄く切る。

「ミカ、ミカ、もうわたくしはいいから降参して!」

「何を言っている。そんなこと出来るわけないだろう。俺はレイラの為なら死ぬことも怖くない。」

「そんな事言わないで!」

レイラが泣きながら訴えるけど、この子を置いて俺だけ助かるなんて考えは何処にもない。

「あら、皇帝陛下のそんな甘い言葉が聞けるなんて、私にも言ってくれないかしら。」

オリビアが片膝をついた俺の元へやってくる。そんなに大きな声で話してないのに、地獄耳か。

俺は剣を向けられた状態でオリビアを睨む。

「レイラには何もするな!」

「そんな事言われても・・・じゃあ、奴隷にして私とクロードが楽しんでいる所を見せつけてやろうかしら?いい考えだと思わない?ねぇ、クロード。」

うふふと笑うオリビア。

「誰がお前なんかと。吐き気がする!」

俺の言葉に、オリビアは顔色を変えて俺を睨む。

「自分の立場が分かっていないようね!」

そう言うと、ドレスの裾を上げて鞭を取り出す。
どこにそんなもの隠していたんだ・・・と思う間もなく、俺に鞭を浴びせる。
二発目が来る前に手で止めようとしたら、レイラが両手を広げて俺の前に出た。

「レイラ!!」

咄嗟に叫んだけれど、鞭は止まらずレイラの身体を打つ。
レイラはぎゅっと目を瞑って痛みに耐える。

「アハハ!自分から打たれに来たの?良いわよ、思う存分痛めつけてあげる。」

「これ以上陛下に酷いことをしないで!」

訴えるレイラに容赦なく鞭がふりおとされる。俺は立ち上がってレイラにあたる前に鞭を掴みオリビアを睨みつけた。

「あら、誰が立っていいって言ったの?貴方は膝まづいていなさい。」

「生憎俺はお前の駒じゃない。」

俺は今、右手に剣を持って、左手で鞭を掴み。周りは鎧達が向ける剣に囲まれている。
圧倒的不利な状況だ。
だけど、レイラを痛めつける奴は許すわけにはいかない。
無茶をしてレイラが酷い目に合うリスクを考えていないわけじゃない。俺の耳には少し前から聞こえている音がある。

俺はオリビアの持つ鞭を勢いよく引っ張った。オリビアは馬鹿ではないらしく、俺に力で叶わないと思ったのか、素直に鞭を離した。俺は奪い取った鞭をそのまま左手で後ろに向かって振り切るように投げると、剣を向けていた奴らが避けようとしてスキが出来る。

その期に俺はレイラを左手で抱き寄せた。

その時、後ろの方で馬の嘶きと、鎧達の撃ち合う音が聞こえてくる。

「陛下!!遅くなりました!」

馬に乗ったまま鎧兵を蹴散らしてやってきたのはシドだ。
シドは馬から降りると、俺の周りにいた奴らをなぎ払いながらすぐに俺の元へやって来た。後ろではライルが戦っている。

「シド様!」

シドの登場にレイラが安堵の表情を浮かべる。

「遅い。」

俺は背を向けるシドに向かって悪態をついた。俺も、安堵したのもあるのだろう。

「申し訳ございません!」

「まぁ、今からの活躍次第で帳消しにしてやる。」

俺はふっと笑ってシドとライルを見た。

二人はあっと言う間にほとんどを片付けてしまった。

残るはオリビアを護る兵のみ。

「オリビア女王、ルシリア帝国皇帝の俺に対する暴言、暴力、ルシリア帝国に対する宣戦布告と受け取らせてもらう。精々今から国へ帰って準備をしておくことだな。」

 俺がそう言うと、オリビアは悔しそうに逃げていった。





しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...