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㊷鞭を掴む(クロード)
しおりを挟む「うふふっ、絶望した?貴方を捉える為ならこれくらいでも少ないくらいよね?」
オリビアが嬉しそうに笑う。
ご丁寧に全部鎧か・・・
「楽しくなってきたじゃないか。」
とりあえず虚勢を張っておく。
「レイラ、俺の後ろでしゃがんでてくれ。」
レイラに伝えると、気合いを入れ直して今相手している奴らの足元を一気にさらって、体制を崩した奴らの脇に剣を突き刺す。
これで少しは片付いた。
だが、俺が動かず戦うことで、俺の周りには死体が積み上がっていく。
相手もやりにくいらしく、やられた仲間の足を引きずって俺から遠ざける。
片付けご苦労さん。
さて、あと何人かな?
そう思って次の突入隊を見ると、剣を持たずに突っ込んでくる。
「なっ、」
俺は五人に体当たりで身体にぶつかられてよろめく。
「つっ・・・」
ぶつかられた拍子に止まっていた血が溢れ出した・・・
「ミカ!」
レイラが俺の脇腹から血が滴るのを見て声を上げる。
鎧達は一旦離れたかと思ったら、また体当たりしてきた。
俺は耐えきれず、膝をつく。
すると油断した何人かが俺を見下ろすようにやってきたので、下から上に向かって首の隙間に刃を突き立てた。
すると今度は一斉に剣を突き立ててくる。
片膝をついた状態で剣を受けるが、キツイ。
何回かは剣がかすって手や体を薄く切る。
「ミカ、ミカ、もうわたくしはいいから降参して!」
「何を言っている。そんなこと出来るわけないだろう。俺はレイラの為なら死ぬことも怖くない。」
「そんな事言わないで!」
レイラが泣きながら訴えるけど、この子を置いて俺だけ助かるなんて考えは何処にもない。
「あら、皇帝陛下のそんな甘い言葉が聞けるなんて、私にも言ってくれないかしら。」
オリビアが片膝をついた俺の元へやってくる。そんなに大きな声で話してないのに、地獄耳か。
俺は剣を向けられた状態でオリビアを睨む。
「レイラには何もするな!」
「そんな事言われても・・・じゃあ、奴隷にして私とクロードが楽しんでいる所を見せつけてやろうかしら?いい考えだと思わない?ねぇ、クロード。」
うふふと笑うオリビア。
「誰がお前なんかと。吐き気がする!」
俺の言葉に、オリビアは顔色を変えて俺を睨む。
「自分の立場が分かっていないようね!」
そう言うと、ドレスの裾を上げて鞭を取り出す。
どこにそんなもの隠していたんだ・・・と思う間もなく、俺に鞭を浴びせる。
二発目が来る前に手で止めようとしたら、レイラが両手を広げて俺の前に出た。
「レイラ!!」
咄嗟に叫んだけれど、鞭は止まらずレイラの身体を打つ。
レイラはぎゅっと目を瞑って痛みに耐える。
「アハハ!自分から打たれに来たの?良いわよ、思う存分痛めつけてあげる。」
「これ以上陛下に酷いことをしないで!」
訴えるレイラに容赦なく鞭がふりおとされる。俺は立ち上がってレイラにあたる前に鞭を掴みオリビアを睨みつけた。
「あら、誰が立っていいって言ったの?貴方は膝まづいていなさい。」
「生憎俺はお前の駒じゃない。」
俺は今、右手に剣を持って、左手で鞭を掴み。周りは鎧達が向ける剣に囲まれている。
圧倒的不利な状況だ。
だけど、レイラを痛めつける奴は許すわけにはいかない。
無茶をしてレイラが酷い目に合うリスクを考えていないわけじゃない。俺の耳には少し前から聞こえている音がある。
俺はオリビアの持つ鞭を勢いよく引っ張った。オリビアは馬鹿ではないらしく、俺に力で叶わないと思ったのか、素直に鞭を離した。俺は奪い取った鞭をそのまま左手で後ろに向かって振り切るように投げると、剣を向けていた奴らが避けようとしてスキが出来る。
その期に俺はレイラを左手で抱き寄せた。
その時、後ろの方で馬の嘶きと、鎧達の撃ち合う音が聞こえてくる。
「陛下!!遅くなりました!」
馬に乗ったまま鎧兵を蹴散らしてやってきたのはシドだ。
シドは馬から降りると、俺の周りにいた奴らをなぎ払いながらすぐに俺の元へやって来た。後ろではライルが戦っている。
「シド様!」
シドの登場にレイラが安堵の表情を浮かべる。
「遅い。」
俺は背を向けるシドに向かって悪態をついた。俺も、安堵したのもあるのだろう。
「申し訳ございません!」
「まぁ、今からの活躍次第で帳消しにしてやる。」
俺はふっと笑ってシドとライルを見た。
二人はあっと言う間にほとんどを片付けてしまった。
残るはオリビアを護る兵のみ。
「オリビア女王、ルシリア帝国皇帝の俺に対する暴言、暴力、ルシリア帝国に対する宣戦布告と受け取らせてもらう。精々今から国へ帰って準備をしておくことだな。」
俺がそう言うと、オリビアは悔しそうに逃げていった。
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