43 / 44
㊸平穏の訪れ(クロード)
しおりを挟む「陛下!!すごい怪我じゃないですか!」
シドが慌てて俺の傷を見る。
「シド、俺はまだ大丈夫だ。先にレイラの傷を診てやってくれ、鞭に打たれたんだ。」
「何言ってるの!ミカも打たれたのよ!それにひどい怪我をしているの!ミカの背中、わたくしを庇って落ちたから傷だらけなのよ!ミカを診て!」
「うん、解りましたから、まず陛下です。かなり血を流してるでしょ!それに、右足も・・・感覚あります?」
さすがシド、少しの間でよく見ている。
「ああ、徐々に感覚は戻ってきている。」
俺はシドに診てもらいながらライルに宮廷への早馬を頼んだ。
シーリカ王国を攻める為の準備は既にルーファスとアルファスト侯爵が済ませているだろう。何時でも動ける状態だ。
オリビアが自国に戻って立て直す前に攻め込む。
「この状態でよく動いてましたね。何人倒したんですか?」
シドがなかば呆れたように俺に質問する。
「数える余裕なかったからわからん。多分二十人くらいだろ?普段の状態ならこんな無様なことにはならなかったのにな。」
「そうですね、陛下が通常なら俺達が来る前に一人で片付けちゃってたでしょうね。」
シドは傷を消毒すると、俺の傷を縫い始めた。
「おい、痛いんだが・・・縫うならなんか言え!」
「あれ?陛下なら平気かと思ったんですけど、針の痛みよりキズの痛みで気を失ってもおかしくないくらいなのに、平気な顔していたんで。」
コイツ・・・俺が弱ってるといじめてくるのは昔から変わらんな・・・
「好きにしてくれ。」
縫われる俺をハラハラと見つめるレイラ。
「怖いなら見なくていいぞ。」
「う、うん・・・痛いわよね・・・」
そう言うレイラも鞭を当てられた左肩から血を滲ませている。
「レイラ、今度からは絶対俺の前には出ないでくれ、レイラに傷が残ったら俺は一生後悔する。」
「うん・・・ごめんなさい。」
しょんぼりして俺を見るレイラ。
「でも、まさかレイラがあの場面で俺を庇ってくれるとは思わなかった。驚いたけど、嬉しかったよ。ありがとう。」
そう言って、俺はレイラの頭を撫でた。
「レイラ嬢、けっこう根性座ってますね。カッコイイですよ。」
シドにカッコイイと言われてレイラは照れていた。そうか、可愛いは言われ慣れてるだろうけど、俺はカッコイイは言ったことなかったな。
俺の治療が終わると、シドが今度はレイラの傷を診始めた。
その頃に残りの護衛とミーナが到着した。
護衛六人の内、四人が岩に当たって落ちてしまったらしく、残っていたのは二人だった。
「レイラお嬢様!良くぞご無事で・・・」
ミーナが涙を流しながらレイラを抱きしめている。
「レイラお嬢様、お怪我が酷いです。痛かったでしょう?」
「ミカが庇ってくれたからわたくしは大丈夫よ。」
レイラの言葉に、ミーナが俺を見る。
「陛下っ!!」
俺の状況を見てミーナが驚いていたけど、レイラを守ってくれてありがとうございますと泣きながら礼を言われた。
その後、道まで馬で移動して、用意された馬車に乗ると、ルシリア帝国に入った。
俺が宮廷に着いた頃には帝国軍はシーリカ王国の城を取り囲んでいた。
俺の状態を見て怒り狂った隊が後から参加したことによってシーリカ王国は呆気なく陥落した。
オリビアは城には入らずこっそり身を隠していた所を見つかり、逃げた所を後ろから切られ、捕えられる前に自決したと聞いた。
旅の最後に後味の悪い出来事が起こったせいで、レイラも少し気を病んでいる。
俺もさすがに無理したせいか、宮廷に戻ってからしばらく寝込んでしまい、その間レイラがずっとそばに居てくれた。
右足の痺れは徐々に引いてきて動けるようになった。戻って良かったとほっとした。
レイラとの結婚は一ヶ月後だ。
今回の件で先延ばしにする意見も出たが、シーリカ王国を落とした事により湧いている今、皇帝の存在を確かなものにする好機だという意見も出たのだ。
今日も俺は仕事を半分もしていない。優秀な部下が沢山出来たことで、俺の負担が随分減った。
さて、一段落したし時間もある。
「陛下、どちらへ?」
おもむろに立ち上がって部屋を出る俺にライルが問いかけてくる。
「離宮へ向かう。」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
冷酷な王の過剰な純愛
魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、
離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。
マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。
そこへ王都から使者がやってくる。
使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。
王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。
マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。
・エブリスタでも掲載中です
・18禁シーンについては「※」をつけます
・作家になろう、エブリスタで連載しております
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
最強と言われるパーティーから好きな人が追放されたので搔っ攫うことにしました
バナナマヨネーズ
恋愛
文武に優れた英雄のような人材を育てることを目的とした学校。
英雄養成学校の英雄科でそれは起こった。
実技試験当日、侯爵令息であるジャスパー・シーズは声高らかに言い放つ。
「お前のような役立たず、俺のパーティーには不要だ! 出て行け!!」
ジャスパーの声にざわつくその場に、凛とした可憐な声が響いた。
「ならば! その男はわたしがもらい受ける!! ゾーシモス令息。わたしのものにな―――……、ゴホン! わたしとパーティーを組まないかな?」
「お……、俺でいいんだったら……」
英雄養成学校に編入してきたラヴィリオラには、ずっと会いたかった人がいた。
幼い頃、名前も聞けなかった初恋の人。
この物語は、偶然の出会いから初恋の人と再会を果たしたラヴィリオラと自信を失い自分を無能だと思い込むディエントが互いの思いに気が付き、幸せをつかむまでの物語である。
全13話
※小説家になろう様にも掲載しています。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる