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第三章
家族の真実 2
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そこには藤堂さんによく似た男性と、おそらく真一くんだろうと思われる赤ちゃんを抱いて笑顔を見せる女性が写っている。
「真一は、ここに写っている浩一と由香さんとの間に生まれた子で、賢二はあの子の叔父にあたるの」
真一くんの生い立ちについて、藤堂さんのお母さんが口にする。
その言葉に、それまで抱いていた違和感の原因がこれだと確信した。
真一くんとはまだ数回しか顔を合わせたことがないけれど、藤堂さんのことを「パパ」や「おとうさん」と呼んだことが一度もなかったのだ。
さっきも藤堂さんのことを「けんじにいちゃん」と呼んでいた。
家庭内のことだからと私は余計な口を挟まないほうがいいと思って黙っていたけれど、どうやら正解だったようだ。
ようやく藤堂さんの家庭の事情を知り納得した私は、藤堂さんのお母さんの言葉に頷いた。
「真一の両親は二年前、事故で……」
言葉が一瞬途切れた。私は自然と背筋を伸ばす。
「その日、由香さんが妊婦健診で病院へ行くのに、浩一が付き添いで出掛けていて。賢二が保育所へ迎えに行くはずだったの。でも仕事が長引いて行けなくなってね。それで診察を終えた二人が迎えに行く途中で、信号無視の車に……」
そこから先は聞かなくてもわかった。胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
藤堂さんが、その時のことをどう受け止めているのか。
残業という、自分ではどうにもできない事情。それでも『自分が行っていれば』と何度も思ったに違いない。そう想像するだけで、喉の奥が熱くなる。
「事故のあと、真一を引き取って育てているの。まだ三十になるかならないかで、急に父親代わりよ」
お母さんの声には、心配が混ざっていた。
「賢二はね、真一をすごく可愛がってるけど……同時に、自分を責めてもいるの。あの子から両親と、新しい家族を取り上げてしまったから。……だから、あまり突っ込まないであげてね」
私は静かに頷いた。胸の奥で、何かが強く芽生えるのを感じた。守りたい、寄り添いたい、そういう感情だった。
その時、客間の入口の方から低い声が聞こえた。
「……母さん、なんで勝手に人を上げてるんだ」
振り返ると、スーツ姿の藤堂さんが立っていた。濡れた前髪が額にかかり、少し険しい顔をしている。
その手には、今日の夕飯の食材を買いに行っていたのだろう。スーパーの買い物袋があった。
「賢二、お帰り。松下さんが来てくれたのよ」
お母さんがさらりと言うと、彼は一瞬私を見て、視線をそらした。
「真一は、ここに写っている浩一と由香さんとの間に生まれた子で、賢二はあの子の叔父にあたるの」
真一くんの生い立ちについて、藤堂さんのお母さんが口にする。
その言葉に、それまで抱いていた違和感の原因がこれだと確信した。
真一くんとはまだ数回しか顔を合わせたことがないけれど、藤堂さんのことを「パパ」や「おとうさん」と呼んだことが一度もなかったのだ。
さっきも藤堂さんのことを「けんじにいちゃん」と呼んでいた。
家庭内のことだからと私は余計な口を挟まないほうがいいと思って黙っていたけれど、どうやら正解だったようだ。
ようやく藤堂さんの家庭の事情を知り納得した私は、藤堂さんのお母さんの言葉に頷いた。
「真一の両親は二年前、事故で……」
言葉が一瞬途切れた。私は自然と背筋を伸ばす。
「その日、由香さんが妊婦健診で病院へ行くのに、浩一が付き添いで出掛けていて。賢二が保育所へ迎えに行くはずだったの。でも仕事が長引いて行けなくなってね。それで診察を終えた二人が迎えに行く途中で、信号無視の車に……」
そこから先は聞かなくてもわかった。胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
藤堂さんが、その時のことをどう受け止めているのか。
残業という、自分ではどうにもできない事情。それでも『自分が行っていれば』と何度も思ったに違いない。そう想像するだけで、喉の奥が熱くなる。
「事故のあと、真一を引き取って育てているの。まだ三十になるかならないかで、急に父親代わりよ」
お母さんの声には、心配が混ざっていた。
「賢二はね、真一をすごく可愛がってるけど……同時に、自分を責めてもいるの。あの子から両親と、新しい家族を取り上げてしまったから。……だから、あまり突っ込まないであげてね」
私は静かに頷いた。胸の奥で、何かが強く芽生えるのを感じた。守りたい、寄り添いたい、そういう感情だった。
その時、客間の入口の方から低い声が聞こえた。
「……母さん、なんで勝手に人を上げてるんだ」
振り返ると、スーツ姿の藤堂さんが立っていた。濡れた前髪が額にかかり、少し険しい顔をしている。
その手には、今日の夕飯の食材を買いに行っていたのだろう。スーパーの買い物袋があった。
「賢二、お帰り。松下さんが来てくれたのよ」
お母さんがさらりと言うと、彼は一瞬私を見て、視線をそらした。
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