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王子様との出会い
25.おめでたいことがたくさん
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わたくしの九歳の誕生日にあたって、わたくしは色々と気を付けなければいけないことがあった。
それは、婚約のことについてお父様やお母様やお兄様に口を滑らせないようにしなければいけないということだった。
王子様とわたくしの婚約は、正式には発表されていないが、国王陛下と王妃殿下と、ベルトラン家のお義父様とお義母様との間で、約束が取り交わされていた。わたくしはよく分からないが、コンラッドお義兄様がわたくしに教えてくれた。
「フィーネ嬢をベルトラン家の養子にする話を持ち出したときから、レオ殿下はフィーネ嬢との婚約を考えていたのです」
「わたくしが知らないうちに!?」
「レオ殿下はフィーネ嬢に夢中でしたからね」
そんなころから国王陛下と王妃殿下にも話を通していたというのだから、驚きである。
「エルネスト子爵家のご両親に話を通すときに、将来高貴な方に嫁ぐためにベルトラン公爵家の養子にさせてほしいと説明していたはずですから、エルネスト子爵家のご両親も、フィーネ嬢がいずれレオ殿下と婚約することは感じ取っていると思います」
「お父様もお母様も気付いているのね」
「そうだと思いますよ。ですが、お茶会の席では誰が聞いているか分かりませんので、口にしないように気を付けてください」
「はい」
「王弟殿下の件も何とかなりましたので、エルネスト子爵夫妻とアデル殿がベルトラン公爵家に滞在しているときには、話をしてもいいかもしれません」
コンラッドお義兄様の言葉に、わたくしは薄茶色の目を輝かせる。
「お父様とお母様とお兄様に話してもいいの?」
「エルネスト子爵夫妻とアデル殿が滞在する部屋でだけにしてくださいね。それ以外の場所では話してはいけません」
「はい!」
素直に返事をすると、コンラッドお義兄様はにっこり笑ってわたくしに付け加えるように聞いてきた。
「義理の妹になったので、フィーネ嬢のことをフィーネと呼んでいいですか?」
「わたくし、そう呼ばれたかったの! コンラッドお義兄様がお義兄様になったときから!」
「それでは、今後は、フィーネと呼びますね」
コンラッドお義兄様との距離も縮まった気がして、わたくしは嬉しかった。
わたくしが喜んでいると、同席していたお姉様が頬を染めて目を伏せる。なんだろうと思っていたら、お姉様がそっとわたくしに教えてくれた。
「フィーネの誕生日のお茶会のときに正式に発表しようとコンラッド様と相談していたのですが、わたくし、実は、お腹に赤ちゃんがいます」
「本当、お姉様!?」
思わずソファから飛び降りて、わたくしはお姉様のところに駆けよっていた。お姉様のふくらみのないお腹に触れると、お姉様がくすくすと笑う。
「まだ妊娠初期なので、赤ちゃんが動きませんよ」
「そうなの!? 触っても分からない?」
「分かりませんね。お腹が大きくなってくれば分かると思います」
「そうなったら、触ってもいい?」
「もちろんですよ、フィーネ」
お姉様のお腹に赤ちゃんがいる。
お姉様がお母様になるのだ。
お姉様はわたくしと十一歳年が離れているので、今二十歳である。赤ちゃんが生まれてくるころには二十一歳になっているだろう。
「お姉様、コンラッドお義兄様、本当におめでとうございます」
「ありがとうございます、フィーネ」
「わたくし、とても幸せです。ありがとうございます、フィーネ、コンラッド様」
ふくらみのないお腹を押さえて、お姉様は幸せそうに微笑んでいた。
わたくしのお誕生日のお茶会の前日には、エルネスト子爵家からお父様とお母様がやってきた。クラヴィス伯爵家に滞在しているお兄様も顔を出してくれて、お姉様も一緒に家族だけの時間を持つことができた。
そのときに、わたくしとお姉様は嬉しい報告を家族にした。
「わたくし、内緒なのだけれど、王子様と婚約することが決まったの。正式に発表されるのは王子様が学園に入学する十二歳になってからだけれど」
「おめでとう、フィーネ」
「よかったですね。ベルトラン公爵家から養子の話が来たときには、そうなるだろうと思っていました」
「よかったね、フィーネ」
お父様とお母様とお兄様にお祝いされて、わたくしは嬉しくて跳ねてしまいそうになる体を必死に我慢していた。こういうときに跳ねてはいけないというのを、行儀作法の先生から学んでいた。
「わたくしからも、嬉しい報告があります。わたくし、お腹に赤ちゃんがいます」
お姉様の報告に、お父様とお母様は感激して泣き出してしまうし、お兄様は喜びでソファから立ち上がっていたので、わたくしは先に聞かされていたよかったと思った。
その上、お兄様からも報告があったのだ。
「文官として認められて昇進が決まって、上司の娘さんと見合いをしたんだ。それで、その令嬢と結婚することになった」
「お兄様が結婚!?」
「おめでとうございます、お兄様」
お兄様のおめでたい話まで飛び込んできて、エルネスト子爵家の滞在する部屋は、幸福な空気に包まれていた。
わたくしのお誕生日のお茶会はベルトラン公爵家で開かれて、そのときにお姉様の妊娠が明かされた。ベルトラン公爵家の嫡男であるコンラッドお義兄様に子どもができたということはとてもおめでたく、お祝いに来てくださっていた王子様もとても喜んでいた。
「王子様、わたくし、末っ子で下に弟妹がいないでしょう?」
「わたしも一人っ子ですね」
「お姉様に赤ちゃんができて、とても嬉しいのです」
「わたしにとっても、コンラッド兄様は兄のような存在。サラ夫人に赤ちゃんができてとても嬉しく思います」
そこで、わたくしは気付いてしまった。
お姉様に赤ちゃんが生まれたら、わたくしはどうなるのだろう。
「わたくし、叔母になるのですか!?」
「そうなりますね」
「生まれてきた赤ちゃんは、甥か姪ですか?」
「そうですね」
わたくしは今日九歳になったばかり。
叔母になるというのが実感がわかない。
わたくしが九歳のうちに甥か姪が生まれてくるのだったら、わたくしと甥か姪との年の差より、わたくしとお姉様の年の差の方が大きくなる。
衝撃の事実に愕然としていると、王子様がわたくしの手を取る。
「フィーネ嬢、一曲踊ってくれませんか?」
お茶会会場の端では、音楽隊が音楽を奏でていて、そこで踊っているひとたちもいた。
「喜んで」
わたくしが王子様の手を取って一曲踊ったところで、わたくしに声がかかる。
「フィーネ嬢、お誕生日おめでとうございます」
わたくしに声をかけてきたのは、以前わたくしと踊ったことがあるアラミス侯爵家のミシェル様だった。
ミシェル様はわたくしの方に手を差し伸べている。
「よろしければ、わたしとも一曲踊っていただけませんか?」
誘われて、わたくしは王子様の方を見る。以前ミシェル様と踊ったときに、王子様はもう踊らないでほしいと言っていた気がするのだ。
王子様の表情を見ていると、にこやかだがなんとなく迫力がある気がする。
「申し訳ない、ミシェル殿。フィーネ嬢はこれから、わたしとお茶をしますので、失礼します」
「ごめんなさい、ミシェル様」
はっきりと王子様が断ったので、わたくしもミシェル様に謝って、お茶の席についた。
わたくしと王子様はお隣に配置されていた。
踊って喉が乾いていたので、わたくしは紅茶に牛乳を入れて一口飲む。お茶菓子は何にしようかとテーブルの上を見ていると、王子様が紅茶を飲んで、わたくしに話しかけてきた。
「ミシェル殿が今後誘って来ても、絶対に断ってくださいね」
「はい」
「フィーネ嬢はわたしとしか踊ってはいけませんよ」
「はい」
王子様の言うことだから素直に返事をしつつ、わたくしはお茶菓子に気を取られていた。
わたくしの大好きな苺のムースがある。苺のジャムを挟んだマカロンも食べたい。苺のケーキだって食べたい。
いそいそと取り分けるわたくしに、王子様は自分の分を取り分けながら、優しく問いかけた。
「フィーネ嬢はわたしのフィーネ嬢ですよね?」
「はい!」
「わたしは、フィーネ嬢の王子ですよね?」
「はい!」
その通りだったので何も気にせずに返事をすると、近くに来ていたミシェル様に聞こえたようで、その場でしばらく立ち尽くした後、すごすごと離れていったが、わたくしはお茶菓子に夢中で気にしていなかった。
それは、婚約のことについてお父様やお母様やお兄様に口を滑らせないようにしなければいけないということだった。
王子様とわたくしの婚約は、正式には発表されていないが、国王陛下と王妃殿下と、ベルトラン家のお義父様とお義母様との間で、約束が取り交わされていた。わたくしはよく分からないが、コンラッドお義兄様がわたくしに教えてくれた。
「フィーネ嬢をベルトラン家の養子にする話を持ち出したときから、レオ殿下はフィーネ嬢との婚約を考えていたのです」
「わたくしが知らないうちに!?」
「レオ殿下はフィーネ嬢に夢中でしたからね」
そんなころから国王陛下と王妃殿下にも話を通していたというのだから、驚きである。
「エルネスト子爵家のご両親に話を通すときに、将来高貴な方に嫁ぐためにベルトラン公爵家の養子にさせてほしいと説明していたはずですから、エルネスト子爵家のご両親も、フィーネ嬢がいずれレオ殿下と婚約することは感じ取っていると思います」
「お父様もお母様も気付いているのね」
「そうだと思いますよ。ですが、お茶会の席では誰が聞いているか分かりませんので、口にしないように気を付けてください」
「はい」
「王弟殿下の件も何とかなりましたので、エルネスト子爵夫妻とアデル殿がベルトラン公爵家に滞在しているときには、話をしてもいいかもしれません」
コンラッドお義兄様の言葉に、わたくしは薄茶色の目を輝かせる。
「お父様とお母様とお兄様に話してもいいの?」
「エルネスト子爵夫妻とアデル殿が滞在する部屋でだけにしてくださいね。それ以外の場所では話してはいけません」
「はい!」
素直に返事をすると、コンラッドお義兄様はにっこり笑ってわたくしに付け加えるように聞いてきた。
「義理の妹になったので、フィーネ嬢のことをフィーネと呼んでいいですか?」
「わたくし、そう呼ばれたかったの! コンラッドお義兄様がお義兄様になったときから!」
「それでは、今後は、フィーネと呼びますね」
コンラッドお義兄様との距離も縮まった気がして、わたくしは嬉しかった。
わたくしが喜んでいると、同席していたお姉様が頬を染めて目を伏せる。なんだろうと思っていたら、お姉様がそっとわたくしに教えてくれた。
「フィーネの誕生日のお茶会のときに正式に発表しようとコンラッド様と相談していたのですが、わたくし、実は、お腹に赤ちゃんがいます」
「本当、お姉様!?」
思わずソファから飛び降りて、わたくしはお姉様のところに駆けよっていた。お姉様のふくらみのないお腹に触れると、お姉様がくすくすと笑う。
「まだ妊娠初期なので、赤ちゃんが動きませんよ」
「そうなの!? 触っても分からない?」
「分かりませんね。お腹が大きくなってくれば分かると思います」
「そうなったら、触ってもいい?」
「もちろんですよ、フィーネ」
お姉様のお腹に赤ちゃんがいる。
お姉様がお母様になるのだ。
お姉様はわたくしと十一歳年が離れているので、今二十歳である。赤ちゃんが生まれてくるころには二十一歳になっているだろう。
「お姉様、コンラッドお義兄様、本当におめでとうございます」
「ありがとうございます、フィーネ」
「わたくし、とても幸せです。ありがとうございます、フィーネ、コンラッド様」
ふくらみのないお腹を押さえて、お姉様は幸せそうに微笑んでいた。
わたくしのお誕生日のお茶会の前日には、エルネスト子爵家からお父様とお母様がやってきた。クラヴィス伯爵家に滞在しているお兄様も顔を出してくれて、お姉様も一緒に家族だけの時間を持つことができた。
そのときに、わたくしとお姉様は嬉しい報告を家族にした。
「わたくし、内緒なのだけれど、王子様と婚約することが決まったの。正式に発表されるのは王子様が学園に入学する十二歳になってからだけれど」
「おめでとう、フィーネ」
「よかったですね。ベルトラン公爵家から養子の話が来たときには、そうなるだろうと思っていました」
「よかったね、フィーネ」
お父様とお母様とお兄様にお祝いされて、わたくしは嬉しくて跳ねてしまいそうになる体を必死に我慢していた。こういうときに跳ねてはいけないというのを、行儀作法の先生から学んでいた。
「わたくしからも、嬉しい報告があります。わたくし、お腹に赤ちゃんがいます」
お姉様の報告に、お父様とお母様は感激して泣き出してしまうし、お兄様は喜びでソファから立ち上がっていたので、わたくしは先に聞かされていたよかったと思った。
その上、お兄様からも報告があったのだ。
「文官として認められて昇進が決まって、上司の娘さんと見合いをしたんだ。それで、その令嬢と結婚することになった」
「お兄様が結婚!?」
「おめでとうございます、お兄様」
お兄様のおめでたい話まで飛び込んできて、エルネスト子爵家の滞在する部屋は、幸福な空気に包まれていた。
わたくしのお誕生日のお茶会はベルトラン公爵家で開かれて、そのときにお姉様の妊娠が明かされた。ベルトラン公爵家の嫡男であるコンラッドお義兄様に子どもができたということはとてもおめでたく、お祝いに来てくださっていた王子様もとても喜んでいた。
「王子様、わたくし、末っ子で下に弟妹がいないでしょう?」
「わたしも一人っ子ですね」
「お姉様に赤ちゃんができて、とても嬉しいのです」
「わたしにとっても、コンラッド兄様は兄のような存在。サラ夫人に赤ちゃんができてとても嬉しく思います」
そこで、わたくしは気付いてしまった。
お姉様に赤ちゃんが生まれたら、わたくしはどうなるのだろう。
「わたくし、叔母になるのですか!?」
「そうなりますね」
「生まれてきた赤ちゃんは、甥か姪ですか?」
「そうですね」
わたくしは今日九歳になったばかり。
叔母になるというのが実感がわかない。
わたくしが九歳のうちに甥か姪が生まれてくるのだったら、わたくしと甥か姪との年の差より、わたくしとお姉様の年の差の方が大きくなる。
衝撃の事実に愕然としていると、王子様がわたくしの手を取る。
「フィーネ嬢、一曲踊ってくれませんか?」
お茶会会場の端では、音楽隊が音楽を奏でていて、そこで踊っているひとたちもいた。
「喜んで」
わたくしが王子様の手を取って一曲踊ったところで、わたくしに声がかかる。
「フィーネ嬢、お誕生日おめでとうございます」
わたくしに声をかけてきたのは、以前わたくしと踊ったことがあるアラミス侯爵家のミシェル様だった。
ミシェル様はわたくしの方に手を差し伸べている。
「よろしければ、わたしとも一曲踊っていただけませんか?」
誘われて、わたくしは王子様の方を見る。以前ミシェル様と踊ったときに、王子様はもう踊らないでほしいと言っていた気がするのだ。
王子様の表情を見ていると、にこやかだがなんとなく迫力がある気がする。
「申し訳ない、ミシェル殿。フィーネ嬢はこれから、わたしとお茶をしますので、失礼します」
「ごめんなさい、ミシェル様」
はっきりと王子様が断ったので、わたくしもミシェル様に謝って、お茶の席についた。
わたくしと王子様はお隣に配置されていた。
踊って喉が乾いていたので、わたくしは紅茶に牛乳を入れて一口飲む。お茶菓子は何にしようかとテーブルの上を見ていると、王子様が紅茶を飲んで、わたくしに話しかけてきた。
「ミシェル殿が今後誘って来ても、絶対に断ってくださいね」
「はい」
「フィーネ嬢はわたしとしか踊ってはいけませんよ」
「はい」
王子様の言うことだから素直に返事をしつつ、わたくしはお茶菓子に気を取られていた。
わたくしの大好きな苺のムースがある。苺のジャムを挟んだマカロンも食べたい。苺のケーキだって食べたい。
いそいそと取り分けるわたくしに、王子様は自分の分を取り分けながら、優しく問いかけた。
「フィーネ嬢はわたしのフィーネ嬢ですよね?」
「はい!」
「わたしは、フィーネ嬢の王子ですよね?」
「はい!」
その通りだったので何も気にせずに返事をすると、近くに来ていたミシェル様に聞こえたようで、その場でしばらく立ち尽くした後、すごすごと離れていったが、わたくしはお茶菓子に夢中で気にしていなかった。
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