異世界無宿

ゆきねる

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第十八章 手掛かりを探して

第二百五十五話 瓜二つの女

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イズミは椅子に座ったままゆっくりと右手がショルダーホルスターに向かうも、その手がグリップを握る事は無かった。
右手は何かに掴まれたように、途中で動かなくなったのだ。

「大丈夫ですよ」

女は笑顔でイズミへと話しかける。

「昨日会った者と瓜二つだ」

「なんの事でしょうか。私は今朝この町に到着したのですよ?」

近付いて来た女の声を良く聞くと微妙に声が違った。
昨晩聞いた声の方が落ち着きがあったように感じるし、不思議な感覚があったのだ。
目の前にいる女には、それが無い。
人違いだ。

「…いやすまない、コッチの話だ」

イズミは右手を下ろすと、女に質問をする。

「先程の光はなんです?」

「ごめんなさいね。私とこの教会にいらっしゃる女神様との相性が良くて、来ると何時もこうなるのです」

女が説明をしていると、背後から男性が現れた。

「お嬢様、あまり勝手に動き回らないで下さいませ。我々の胃が可笑しくなってしまいます」

「あらフリード。光の上級治癒魔法を求めている方が居ると言うから、わざわざ遠方から来たのですけれど」

長時間の移動もあったからか、少しくらい自由な時間が欲しいと言わんばかりの口振りで、女が男性を軽く睨みつける。

「依頼者への面会時間はまだ先でしょう?私はこの男性に興味があります」

女はイズミへと視線を移し、ジッとイズミの目を覗き込む。
吸い込まれそうで嫌な感覚がイズミの背筋を通り抜けた。

「…貴方、何者?」

女は一度目を閉じてから、改めて問いかけてきた。

「只の旅人ですよ?」

「嘘。貴方の目を見た瞬間からずっと、今まで感じた事の無い異物感?違和感があります。まるで薬草の束に1本だけある毒草を見つけたかのよう」

イズミは異物感と聞いた時、風の女神の言葉が浮かんで来た。
『理の外から来られし者』
それを思い出し、つい言葉が口から出てしまった。

「当たらずとも遠からず」

「なんです?」

椅子から立ち上がり女へと近付こうとするも、女の背後にいた男性が間に割り込んで来た。

「失礼、部外者のお嬢様への接近は許可されておりません」

「そうかい」

イズミは昨晩出会った不思議な女と瓜二つな女に向け、胸ポケットに仕舞っていた髪飾りを取り出すと投げ渡した。
カクテルへの報酬だと思っていたが、急にこの髪飾りを利用しろとの意味に思えて来たのだ。

「人違いをした謝罪代わりだ」

両手で髪飾りを掴んだ女の動きが止まる。
信じられない物を見たかのような表情をしているが、それはもうベリアと共に教会から出ようと動き出したイズミには関係の無い話だ。
女の表情の事など知る由も無く、イズミはベリアに声をかけると教会を後にした。


「イズミ、さっきの女の話聞いたか?」

「…もう覚えてない」

正直に答えた。
髪飾りを投げ渡しておきながら、相手の名前も聞かずに去っているのだ。

「上級治癒魔法を施す必要がある奴ってのはさ、基本金持ちなんだよ」

「商人の多い町だろ?金持ちが居ても可笑しくは無い」

「アタイは、商人ギルドの副ギルド長だと思う」

ベリアの真剣な声に、イズミは一度立ち止まる。

「だとしてだ。尾行するのか?」

「尾行は直ぐに悟られると思うから、別の手段を使う」

辺りの匂いを確かめたベリアが小道へと入って行くので付いていくと、数匹の猫がまったりとしている場に遭遇した。

「あの子らに頼んでみる」

ベリアが猫に近付き、何かを話し込んでいる。
同時翻訳機能があるイヤリングでも聞き取れないので、完全に猫語なのかもしれない。
イズミの耳にはニャーとかゴロニャーとしか聞こえない。

ベリアからの頼み事を聞いた猫達が起き上がり身体を伸ばすと、のそのそと別の小道へと消えてしまった。

「手伝う代わりに美味しいご飯をくれって言ってくれたぞ。ご飯はイズミの準備な」

「唐突だな」

ベリアはご飯を交渉材料にしたらしいので、イズミは仕方なくマスタングに通信を繋いだ。
猫好みのご飯を作れる自信が皆目無いからである。

「マスタング、済まないが猫用の餌を幾つか実体化しておいてくれ。好みは分からないから、とりあえずウェット系にしておこう」

「かしこまりました」

報酬予定の猫餌は確保したので、今度はベリアと一緒に冒険者ギルドへと歩き始めた。
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