異世界無宿

ゆきねる

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第二十章 火山地帯で小休止

第三百十話 奉納の儀

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翌朝。
雲一つない快晴の空模様の下、イズミとベリアはフラウリアの案内の元で、火の女神像が祀られていると言う場所へと向かっている。

「昔あるエルフ族の彫刻家が工房で眠りこけていた時、夢の中に女神様が現れて微笑んだらしいわ。その時に見た女神様の御姿を、全財産を注ぎ込んで購入した大理石で表現したと言われていますわ」

「昔って?」

「5000年以上昔の事よ」

「桁がおかしく思えるが、それは俺が人間だからかな」

フラウリアの説明を聞いたイズミが、遠くに見える教会の様な建物を睨みながら呟いた。

「この建物自体は80年前に作られました。老朽化に伴う建て替えですね。教会風の外観ですが、建て替え前と形は同じです」

建物に近付くにつれて女神像へ祈りを捧げる信徒や、信徒向けに商売をしている商人の姿が増えてゆく。
活気がある街並みは、見ていて良いものがある。

「…先日予約をしたフラウリアです」

「女神様への奉納でしたね。どうぞ此方へ」

手続きをしたフラウリアと一緒に、建物の一室へ案内される。

「お待ちしておりました」

部屋には礼服を着た人間の男性がいた。
3人が椅子に座ると、男が自己紹介をした。

「私は女神像の管理責任者をしております、リーベルトと申します。教会にも所属はしておりますが、本職は女神像の管理の方です」

「イズミです、どうぞよろしく」

全員が挨拶を済ませると、早速奉納の説明が始まった。

「事前準備として、奉納品を置く台は設置しておきました。私と一緒に女神像の前まで向かいまして一礼をします。次に私が女神様への祝詞を読みまして、それが終わり次第奉納品を台に置いて頂きます。最後に一礼をしたら、奉納の儀は終了となります」

「祝詞を呼んでいる間、私達は礼をしたままですか?」

「いえいえ、一礼をしましたら椅子に座って頂きまして、祈りを捧げて頂ければ問題ありません。祈り方は種族や生まれた土地で違いがありますので、特定の祈り方と言うものではありませんのでご安心下さい」

寛容なのか大雑把なのか判断に悩む所ではあるが、イズミはそれを言葉にはせずに軽く頷いた。

「今日の今日で確認するのも変ですが、奉納してはならない物とかはありますか?」

「邪悪な物の類で無ければ、問題はありませんよ」

奉納品も問題無い事を確認したイズミは、リーベルトの先導で女神像の元へと移動する。
到着した先で女神像を見たイズミとベリアは目を見開いた。
女神像の姿が、先日見た女神ヘスティアそのものだったのだ。

「…そっくりだな」

「本当だ」

イズミとベリアが一礼をする前に呟くと、リーベルトが振り向いた。

「何かありましたか?」

「「いえ、大丈夫です」」

2人の声がハモるのを見たフラウリアは思わず笑いそうになるが、女神像を前にして笑ってしまうのは失礼と判断し表情を作っていた。

リーベルトが女神像へ一礼をしたので皆も一礼をすると、用意してあった椅子に座り祈りを捧げつつ祝詞を読み終えるのを待つ。

始まる前は信者達の声が聞こえていたが、祝詞が始まるとシンも静まり返る。

「イズミさん、この台に奉納をお願い致します」

「分かりました」

祝詞を読み終えたリーベルトの指示で、女神像の前に置かれた台に奉納品をアイテムボックスから取り出し並べてゆく。
イズミの背後で奉納品の数と物を見ていたリーベルトの表情が硬くなったが、作業中のイズミは気付かなかった。

「女神様、こちらが奉納品となります。酒を複数、その他飲料を複数、そして菓子類を複数となります。飲料には現在ラミア族が試作品として少量生産している飲料も含まれております」

簡単な説明した後で一礼して自分の座っていた椅子に戻ろうとした時、台が一瞬光りに包まれる。
椅子に座り女神像の方を確認すると、台に置いた奉納品が全て消えていた。

最後に皆で一礼をして奉納の儀を終えると、真剣な表情をしたリーベルトから確認が入った。

「イズミさんでしたね…あの奉納品はどういった基準で選定したのでしょうか?」

「求められた気がした…それだけですよ」

昨日女神様とお会いして酒の奉納や、マスタングを通じて菓子類の奉納を頼まれたとかは言わない方が良いだろう。

建物を後にしたイズミは身体を伸ばすと、妙な視線を感じたので周囲を確認する。
ベリアも何かを察したのか、戦闘モードとまではいかないが意識を索敵に集中していた。

「お二方、この場所では戦闘にはなる事はありませんから、安心して下さい」

フラウリアが笑顔でイズミ達の前に出ると、近くで待たせていた馬車を呼び付ける。

「ドワーフ工房に向かいましょうか」

「そうですね。大親方でしたっけ?その方との話になるとかならないとか」

馬車に乗り込んだイズミはアイテムボックスをフラウリアに返すと、念の為にマグナムを取り出せるように備えだけしてため息をついた。
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