異世界無宿

ゆきねる

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第二十一章 武器が出来るまで

第三百十一話 力試し

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ドワーフ工房近くまで馬車で移動し、徒歩で工房まで向かう。
昨日とは何か雰囲気が違うような気がするが、原因が分からない。

「職人達からの視線が強い」

ベリアはドワーフ達の視線が自分の武器に向けられているように感じ、妙にソワソワしている。
工房の前に到着すると、ドワーフが出迎えに来た。

「アンタらか。奥で大親方が待っている」

ドワーフの案内で工房の奥へ向かうと、1人の老ドワーフが広間に座っていた。
その前には、何本もの剣が並べられている。

「…魔法剣の所有者は、獣人のお嬢さんかい?」

「はい、ベリアと言います」

ベリアが老ドワーフの前に座ると、ナイフをゆっくりと床に置いた。

「儂はボンネビル、この地のドワーフ工房の7代目大親方をしている。魔法剣、拝見させて頂くぞ」

ボンネビルと名乗った老ドワーフは、魔改造ククリナイフを鋭い眼光で観察し始めた。
しんと静まり返った広間で、イズミの隣にいるフラウリアの呼吸音まで聞こえてきそうな静寂に包まれている。

「誠に、不思議な造りのナイフ…魔法剣だ」

ナイフを鞘に仕舞ったボンネビルは、丁寧にベリアの前にナイフを戻す。

「ここまで研ぎ澄まされたナイフは、そうそうお目にかかれぬ代物だ」

「はい」

「しかし、ナイフは悲鳴をあげている。ベリア…お前さんの力に耐えられなくなっている」

そこまで言ったボンネビルが並べていた剣を手に取ると、ゆっくりと鞘から刀身を見せる。

「この剣を構えてくれないか?」

ボンネビルに促されるままに、ベリアは剣を受け取り鞘から抜いた。
両手で構えた瞬間、剣がバキンと音をたてて折れてしまった。

「ぬぅ…この剣では耐えられぬか」

「これは一体?」

老ドワーフは立ち上がると、近くにあった水を飲んで説明をし始める。

「普通の作り方で仕上げた剣では、お前さんの力に耐えられぬと言う事だ」

深呼吸をしたボンネビルが、改めてベリアの前に座る。

「ベリアよ…儂が責任を持ってお前さんの力にも耐え、魔法剣に成り得る剣を作ってみせる。その剣が完成した暁には、その魔法剣を儂等ドワーフ工房に譲ってはくれないだろうか」

やはり譲渡の依頼だった。

「無論、物々交換のみとは言わん。条件を提示してくれれば、可能な限り応えさせて頂く」

「…」

ベリアは深呼吸をしてから、ボンネビルの目を見て答えた。

「分かりました。幾つかの条件を飲んでくれるならば、応じます」

ボンネビルにベリアが条件を提示すると、大きく頷いて承諾した。

「条件は分かった…少し時間はあるか?力量の確認をしておきたい」

そう言って並べられた剣をベリアに渡すと、先程と同じように構えさせる。

ある剣を構えれば刀身が折れ、ある剣は鞘から抜いた瞬間にバラバラになる。
何故そうなるのかは不明だが、魔法や魔力を込めようとすると、剣が直ぐに限界を迎えてしまうようだ。

「もしや、あの剣ならば…」

うわ言のように呟いたボンネビルが、別の部屋から持って来た剣をベリアに渡す。

「…重いな」

小太刀くらいの長さの剣だが、ベリアは何かを感じ取ったようだ。
鞘から抜けた刀身は、西洋剣の形でありながら波模様がある。

「なんと!」

ベリアがしっかりと剣を構えた瞬間、刀身が風を纏ったのだ。
それだけでは終わらない。
風を纏った刀身が炎まで纏ったのだ。

その後目に見えていた風と炎が消えると、刀身が淡く輝いているのが分かる。

ベリアが用意された木の板で試し斬りをすると、刀身が木の板に触れる前に風魔法で両断され炎に包まれた。

「こりゃ凄いな」

「凄いけど…普通に使うには難があるかもな」

イズミが炭になった木の板を見ながら呟くと、ベリアが剣に魔力を込めるの止めて刀身を確認する。

ベリアから剣を渡されたボンネビルが、刃にゆっくりと触れる。

「刃が少し丸くなっているな…耐えられはするが、まだ甘いか」

「作れそうか?」

「…必ず作ってみせる。ドワーフ工房の大親方として、作らねばならない」

それだけ言うと、ボンネビルは使用する鋼材選びを始めた。

「本格的に造り始めるのは明日からになる。進捗と強度確認をしてもらうのに、定期的に工房に来てくれ」

「分かった。ではまた」

ベリアはナイフを定位置に戻すと、イズミ達と一緒に工房を後にした。
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