異世界無宿

ゆきねる

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第二十二章 一斉捜査

第三百六十六話 キマイラ防衛戦⑤

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イズミはマスタングから降りると、残り1発のロケットランチャーを取り出してキマイラの胴体と前足の付け根付近を狙いを定める。

「これでキャンセルされれば良いが」

発射されたロケット弾はキマイラに命中し爆発したが、魔法のキャンセルにまでは至らない。
ベリアは蛇の姿をした尻尾をどうにか斬り落としてみせたが、それでも魔法のキャンセルは出来なかった。

「厳しいか…」

イズミは急いでロケットランチャーを収納してマスタングへ乗り込むと、衛兵隊が防壁前に何とか用意したバリケードに向けて走りだす。

イズミとベリアがバリケードに到着する直前、キマイラの魔法攻撃が発動した。
巨大な火球が10個、勢い良く崩壊した防壁へ目掛けて飛んでゆく。

マスタングのアクセルを強く踏み込んだ所で、バリケードから誰かが防御魔法を展開した。
火球が防御魔法へ衝突すると最初の3発が打ち消され、残る7発は弾くようにして町への直撃は回避された。

イズミはマスタングをバリケードの裏で停車させると、対物ライフルと新たな弾倉を持ってバリケードから撃ち込む準備をする。

「アレを防ぎ切るとはな」

バリケードから防御魔法を展開していたのは、冒険者パーティー『燃えゆる明星』のティアとヨルスだった。
2人を守るようにマッコイも剣を構えている。

「アンタのくれた回復薬のお陰だ…本当に不味い代物だったが」

「不味いと感じる余裕があるなら、大丈夫そうだな」

ヨルスの言葉を聞いたイズミはそう返事をすると、キマイラへ向けて対物ライフルを撃ち込んだ。

「今まで生きてきた中で、一番不味かったわ。絶対に忘れる事は出来ない不味さよ」

「俺もそう思うよ…まだ魔力は残っているか?」

キマイラが再度火球を作り始めたので、2人に対応が可能かどうか聞く。

「残っているけど、2人がかりでも弾くのが精一杯だ」

「十分だ」

対物ライフルを弾切れになる迄撃ち込んだイズミは、ショルダーバッグからグレネードランチャーを取り出す。
威力不足であっても、攻撃の手を緩める訳にはいかないのだ。

「やっと着いた」

「着いて直ぐだが、キマイラは待ってくれないみたいだ」

ベリアとも合流したので、改めてキマイラの魔法攻撃への対応を始める。

「マスター。キマイラの魔法攻撃は腕時計で吸収可能です」

「なら使うしかないな、ベリア!」

イズミはナイフに魔力を込めていたベリアに向けて、マスタングから聞いた話を伝える。

「なんだ?」

「キマイラの魔法攻撃は、腕時計で吸収出来るって」

「腕時計…アレか!」

ベリアはアイテムボックスから腕時計を取り出すと、左手に着けてナイフを構え直す。

「お二方、防御魔法の準備だけしておいてくれ」

「分かった、アンタ等はどうするんだ?」

ヨルスの質問に対して一瞬言葉が詰まったイズミだったが、代わりにベリアが答えてくれた。

「どうするって、キマイラを倒す」

ベリアはキマイラの翼や蛇の姿をした尻尾を斬り落とした事で、確かな手応えを持ったようだ。

「ベリア、キマイラを両断出来るような斬撃は出せるか?」

「あの大きさを両断か…かなり魔力を使いそうだ」

「クソ不味い魔力回復ドリンクならあるぞ」

「それは絶対に飲みたくない」

ベリアは頑なに魔力回復薬を飲まないと言うので、イズミは渡すのを諦めてショルダーバッグに収納する。
マスタングから対物ライフルの予備弾倉を取り出すと、交換をして対物ライフルを持ち上げた。

「ここが正念場だ、やってやろうぜ」

イズミはマスタングへ戻ると助手席のウィンドウを下ろして対物ライフルを入れ込むと、運転席に乗りキマイラの右側へ回り込むように走り出した。

自分に向けて攻撃して来るのか、ベリアが居る町側へ攻撃をしてくるのかは分からなかったが、キマイラの魔法攻撃が発動する前に胴体へ対物ライフルを撃ち込む事が出来た。

しかし魔法のキャンセルは出来ず、キマイラの攻撃はベリア達の居る町側へと飛んで行ったが火球の爆発は確認出来ない。

「イズミ…なんとかなったぞ」

ベリアから魔法通信が来た。
キマイラの放った火球は8発まで腕時計で吸収し、残る2発はナイフと風魔法で弾き飛ばしたと言う。

そこまで聞いたイズミは手持ちの武器ではどうしようも無いと判断し、マスタングへ向けて指示を出した。

「マスタング、キマイラへミサイルを撃ち込む。準備をしてくれ」

「かしこまりました」

マスタングがミサイルの発射準備を済ませると、ベリアに指示を出す。

「今からマスタングで攻撃を仕掛ける。恐らく大ダメージを与えられる筈だ…キマイラが俺達の攻撃を受けたタイミングで、ベリアが両断してくれ」

「やるしかないか…よし!」

ベリアも覚悟が決まったようなので、イズミはマスタングにミサイル発射の指示を出した。

「マスタング、ミサイル発射だ」

それを聞いたマスタングは、ミサイルを2発キマイラへ向けて発射した。
ロケットランチャーとは比較にならない威力のミサイルが、キマイラの防御魔法を剥がして胴体へ直撃する。

「ベリア、今だ!」

「どりゃぁ!!」

ベリアは風魔法で大ジャンプをすると、ナイフに魔力を込めてキマイラを斬る動作に入る。
その瞬間、ベリアのナイフには風魔法の巨大な刀身が現れ、その刃には火魔法が宿り赤く燃え盛っている。

その巨大な刀身はキマイラを文字通り、一刀両断した。
両断した所から火魔法が発動し、キマイラの肉体を激しく燃焼させる。

悲鳴のような咆哮を上げたキマイラだったが、両断された肉体の再生はされる事無く、まだ残っている防壁へぶつかるようにして倒れた。
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