異世界無宿

ゆきねる

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第二十二章 一斉捜査

第三百六十七話 キマイラへの手向け

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倒れたキマイラの生死確認をする為、ベリアがナイフを構えて接近する。
イズミもマスタングへ乗り込むと、キマイラをスキャンしつつ走ってゆく。

「マスター、キマイラはまだ生きています」

「両断されたってのに、凄まじい生命力だな」

イズミはベリアに魔法通信でその事を伝えたが、キマイラは最後の力を振り絞ってファイアブレスを吐いた。
崩れた防壁やその奥に居た衛兵隊へ向けてのファイアブレスだったが、間一髪で冒険者パーティー『燃えゆる明星』の魔術師2人が防御魔法を展開してファイアブレスを防ぎきった。

「しぶとい奴め!」

ベリアが再度ナイフに魔力を込め、キマイラへ止めを刺す。
今度こそキマイラは動かなくなり、マスタングのスキャンでも生命反応は確認出来なくなった。

「…終わったな」

「アタイもクタクタだ…イズミ、かなり汚れたな」

「土煙をガッツリ浴びたからな、何処かで綺麗サッパリしたい所だ。何か飲むか?」

ベリアと合流したイズミは、戦いで消耗した身体の火照りを静める為に飲み物を取り出した。

「酒が飲みたい!」

「それはまだ早いな。一段落してから、まったりと飲むとしよう」

スポーツドリンクを実体化すれば良かったと考えながらも、何気無く実体化させたラムネをベリアに渡す。

「ありがと…甘さとシュワシュワが沁みるぜ」

ベリアがラムネを飲みつつキマイラの処理をどうするか思案していると、何処からか討伐完了の知らせを聞き付けた冒険者ギルドの人間と衛兵隊の人間がやって来た。

「居ました…ベリアさん!」

小太りの男が甲冑を着込んだ男達と一緒にベリアの下までやって来ると、ナイフを仕舞ったベリアの手を取り感謝の言葉を述べた。

「ありがとうございます!あの巨大なキマイラから、町を救って下さって」

「いやいや、アタイも何とかなって安心した所で…」

ベリアは冒険者ギルドの男の勢いにタジタジになっていたが、それは冒険者ギルドに所属する者として仕方のない事である。

イズミはそんなやり取りを横目にマスタングに頼み、酒を1本実体化させる。

「マスタング、キマイラに手向ける酒を1本用意してくれないか?」

「…かしこまりました」

マスタングが酒を選んでいる間に、ソフィアへと魔法通信を繋ぎ状況を報告する。

「ソフィア?こちらイズミ、聞こえますか」

「…聞こえているわ」

「キマイラの討伐が完了した。その他被害は町の冒険者ギルドや衛兵隊から確認して下さい」

「討伐出来たのね。流石と言うべきかしら」

「感謝するならベリアに頼みます…私が出来たのは足止め位で、主な攻撃はベリアがやりましたので。対象はどうなりましたか」

「身柄を完全に拘束し、一度元老院にて断罪処理に入ります。その後はラミア族との協議に入りますが、恐らくラミア族へ身柄を引き渡す事になるかと。その後はラミア族次第であり、我々の知る所ではありません」

種族間問題は国を滅ぼしかねない事案であり、特に魔族との関係を拗らせるのは自殺行為と言って良いだろう。

「では、その件についてはソフィアさんから報告をした方が良いですね」

「そうね。イズミにもお礼をしないといけないわね、私の部隊の支援どころか部隊よりも大きな戦いを頼んでしまったもの」

「そんなに考えなくて良いですよ…先ずは被害状況と規模の把握が最優先ですし、確保した者から色々と話を聞く必要もあるでしょうし」

「…分かったわ。私達の仕事が一段落したら、改めて話をしましょう」

そこまで話をして魔法通信を切ると、イズミはマスタングが実体化させた酒を取り出して降車する。

「この酒は…ジンか?」

「手向けの酒との事でマスターの生まれの地、日本の酒を実体化しました」

「じゃあ日本酒か」

「純米大吟醸酒です」

「随分と上等な酒だな」

イズミは死んだキマイラの身体を一度優しく撫でると、ショルダーバッグからグラスを取り出しキマイラの前で酒を注ぎ地面へ置く。
その後キマイラの頭の前で正座をすると、目を閉じて静かに両手を合わせた。

「本当に強かったよ。せめて安らかに眠ってくれ」

そんなイズミの姿を、珍しいものでも見たかのような表情で衛兵隊や冒険者ギルドの人間が見ていた。
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