378 / 625
第二十二章 一斉捜査
第三百六十八話 伝わらぬ価値観
しおりを挟む
イズミが立ち上がりマスタングの元へ歩き出すと、冒険者ギルドの人間がキマイラの解体を開始した。
どうやらイズミの手向け中は待っていてくれたのだ。
「イズミ、キマイラの素材だけど冒険者ギルドが買い取る気満々だぞ」
「そんなに活用先があるのか?」
「蛇の尻尾からは解毒剤、牙は装飾品、革は色々と使えるし、髭は楽器?とかに使うらしいぞ。キマイラ肉は上質らしいけど、この大きさだとどうなのかな?」
ベリアの説明を聞く限り、上級魔物の素材は希少性と性能の高さで高値での取り引きになると言う。
「キマイラの素材を買い取って、それを売った利益から防壁の改修費に充てたいんだとさ…討伐したのはアタイらだから、一通り解体して素材を採ったら一覧として提示するから、改めて相談させて欲しいって」
「一段落したらな」
イズミはマスタングに乗り込むと、モニターで新規で実体化させた武器を再実体化リストから外した。
今回のような巨大な魔物が相手の場合以外では、あの巨大武器はまともに扱える代物では無いのだ。
「これでよし…一仕事したら腹が減ったよ」
ショルダーバッグに仕舞っていたパンを取り出すと、キマイラを解体中の作業員を見ながら食事をする。
「アタイも結構魔力を使ったから、一気に疲れちまった」
ベリアが助手席に乗り込むと、大きなため息をついて水筒の水を飲む。
「何とかするって言いはしたが、あの巨体を倒せたのは幸運だよな」
「普通に戦ったらこの程度の被害じゃ済まないぞ。町が壊滅してもおかしく無い」
「そうは言っても犠牲者はいるんだ、キマイラを呼び寄せた奴には対価を支払って貰う処置を頼みたいね」
テキパキとした作業でキマイラが解体されてゆく。
いつまでも防壁の外にいるのも変なので、一度冒険者ギルドの馬車置き場へとマスタングを移動させる。
馬車置き場にマスタングを停めると、ソフィアから魔法通信が入って来た。
「イズミさん、今は大丈夫かしら」
「大丈夫ですよ」
「私は証拠資料の回収を終え次第、部隊と共に戻ります。父上達と合流し資料のまとめをしますので」
「では一旦此処で別れると言う事ですか」
「一緒に行動していると、それはそれでイズミさんにも影響がありますし」
ソフィアはイズミの旅路に自分が関わっていると、厄介事が増える可能性を考慮し適度な距離感を保とうとしているように思える。
「ご配慮感謝します。私達はキマイラ討伐後の素材買取りが終わる迄は、この町に滞在しておきますね。その後ヒュミトールに戻ります」
「それが良いと思います」
魔法通信が切れると、イズミは賑やかさを取り戻しつつある通りを見つめた。
「イズミ…これ」
ベリアがアイテムボックスから酒瓶を取り出し、イズミへと手渡した。
キマイラへの手向けとして実体化した酒だった。
「あのまま置いておいたら、誰かが飲むかもしれなかったから回収したんだ。グラスに注いでた分は、勿体無かったけど地面に捨てたよ。ほとんど無くなってたけどさ」
「そうか…」
イズミは酒瓶を受け取ると、蓋を開けて香りを確かめる。
日本酒の柔らかな香りは殆ど抜けていて、何処か間の抜けた感じになっている。
「この酒は今飲んでも美味しくは無いかもな」
「そうなのか?」
「お供えしたからかな、間の抜けたというか…気の抜けたというか」
イズミは言葉を探しながら、自分なりに適切な表現を選んでゆく。
「キマイラの魂が天に帰る時、所持品が何も無いのは寂しいだろ?」
「…イズミ。キマイラは魔物だぞ」
「魔物であってもだ。討伐してハイお終い、解体して素材を売って金にしよう…とは余りなれなくてね」
「魔物ってのは異質な存在なんだ。そんな事をしても、なんにもならないと思うけどな」
ベリアが言うには、魔物はこの世界における異質な存在であり、魔力が溜まり淀む場所で発生する物らしい。
人間や獣人、エルフ族や魔族の様に子を宿し産むのとは全く別の存在であり、魔力が生み出す負の存在と言うのが一般的な考え方のようだ。
「それでも、何故か手向けとして供えた方が良い気がしたんだ。俺が昔聞いた話だと、死ぬ直前ってのは喉が渇くらしくてな…酒より水が良かったかな?」
「どっちでも良いんじゃないかな。アタイはイズミがそうしたいってんなら、別に気にしないけどさ」
「こっちには輪廻転生って考え方はあるのか?」
「輪廻転生?なんだそりゃ」
ベリアはまるで初めて聞いたかのような反応だったので、輪廻転生の考え方を持つ者は少数派なのかもしれない。
「…いや、何でもない」
イズミは酒瓶をショルダーバッグに収納すると、運転席のシートに身体を預けた。
どうやらイズミの手向け中は待っていてくれたのだ。
「イズミ、キマイラの素材だけど冒険者ギルドが買い取る気満々だぞ」
「そんなに活用先があるのか?」
「蛇の尻尾からは解毒剤、牙は装飾品、革は色々と使えるし、髭は楽器?とかに使うらしいぞ。キマイラ肉は上質らしいけど、この大きさだとどうなのかな?」
ベリアの説明を聞く限り、上級魔物の素材は希少性と性能の高さで高値での取り引きになると言う。
「キマイラの素材を買い取って、それを売った利益から防壁の改修費に充てたいんだとさ…討伐したのはアタイらだから、一通り解体して素材を採ったら一覧として提示するから、改めて相談させて欲しいって」
「一段落したらな」
イズミはマスタングに乗り込むと、モニターで新規で実体化させた武器を再実体化リストから外した。
今回のような巨大な魔物が相手の場合以外では、あの巨大武器はまともに扱える代物では無いのだ。
「これでよし…一仕事したら腹が減ったよ」
ショルダーバッグに仕舞っていたパンを取り出すと、キマイラを解体中の作業員を見ながら食事をする。
「アタイも結構魔力を使ったから、一気に疲れちまった」
ベリアが助手席に乗り込むと、大きなため息をついて水筒の水を飲む。
「何とかするって言いはしたが、あの巨体を倒せたのは幸運だよな」
「普通に戦ったらこの程度の被害じゃ済まないぞ。町が壊滅してもおかしく無い」
「そうは言っても犠牲者はいるんだ、キマイラを呼び寄せた奴には対価を支払って貰う処置を頼みたいね」
テキパキとした作業でキマイラが解体されてゆく。
いつまでも防壁の外にいるのも変なので、一度冒険者ギルドの馬車置き場へとマスタングを移動させる。
馬車置き場にマスタングを停めると、ソフィアから魔法通信が入って来た。
「イズミさん、今は大丈夫かしら」
「大丈夫ですよ」
「私は証拠資料の回収を終え次第、部隊と共に戻ります。父上達と合流し資料のまとめをしますので」
「では一旦此処で別れると言う事ですか」
「一緒に行動していると、それはそれでイズミさんにも影響がありますし」
ソフィアはイズミの旅路に自分が関わっていると、厄介事が増える可能性を考慮し適度な距離感を保とうとしているように思える。
「ご配慮感謝します。私達はキマイラ討伐後の素材買取りが終わる迄は、この町に滞在しておきますね。その後ヒュミトールに戻ります」
「それが良いと思います」
魔法通信が切れると、イズミは賑やかさを取り戻しつつある通りを見つめた。
「イズミ…これ」
ベリアがアイテムボックスから酒瓶を取り出し、イズミへと手渡した。
キマイラへの手向けとして実体化した酒だった。
「あのまま置いておいたら、誰かが飲むかもしれなかったから回収したんだ。グラスに注いでた分は、勿体無かったけど地面に捨てたよ。ほとんど無くなってたけどさ」
「そうか…」
イズミは酒瓶を受け取ると、蓋を開けて香りを確かめる。
日本酒の柔らかな香りは殆ど抜けていて、何処か間の抜けた感じになっている。
「この酒は今飲んでも美味しくは無いかもな」
「そうなのか?」
「お供えしたからかな、間の抜けたというか…気の抜けたというか」
イズミは言葉を探しながら、自分なりに適切な表現を選んでゆく。
「キマイラの魂が天に帰る時、所持品が何も無いのは寂しいだろ?」
「…イズミ。キマイラは魔物だぞ」
「魔物であってもだ。討伐してハイお終い、解体して素材を売って金にしよう…とは余りなれなくてね」
「魔物ってのは異質な存在なんだ。そんな事をしても、なんにもならないと思うけどな」
ベリアが言うには、魔物はこの世界における異質な存在であり、魔力が溜まり淀む場所で発生する物らしい。
人間や獣人、エルフ族や魔族の様に子を宿し産むのとは全く別の存在であり、魔力が生み出す負の存在と言うのが一般的な考え方のようだ。
「それでも、何故か手向けとして供えた方が良い気がしたんだ。俺が昔聞いた話だと、死ぬ直前ってのは喉が渇くらしくてな…酒より水が良かったかな?」
「どっちでも良いんじゃないかな。アタイはイズミがそうしたいってんなら、別に気にしないけどさ」
「こっちには輪廻転生って考え方はあるのか?」
「輪廻転生?なんだそりゃ」
ベリアはまるで初めて聞いたかのような反応だったので、輪廻転生の考え方を持つ者は少数派なのかもしれない。
「…いや、何でもない」
イズミは酒瓶をショルダーバッグに収納すると、運転席のシートに身体を預けた。
21
あなたにおすすめの小説
彼に勇者は似合わない!
プリン伯爵
ファンタジー
連日の残業で終電帰りのサラリーマン、神無月無名21歳。
ある夜、突然足元の光に包まれ異世界へと召喚されてしまう。
そこは豪華絢爛な王宮。
第一王女ラクティスは、彼を含む男女5人を「勇者」として召喚したと告げる。
元の世界では時間がほぼ止まっているという説明を受け、半ば強制的に魔国との戦いに協力することになった無名たち。
発現した無名の紋章は歴代でも最高クラスを示し万能の勇者と称され、周囲を驚愕させる。
元の世界への帰還を条件に口頭で協力を約束する勇者たちだが、無名だけは王家に対し警戒心を抱き、王に元の世界への帰還とこの世界で得た力を持ち帰ることを書面で約束させる。
協調性がないと周囲から思われながらも、己の最適解を優先する無名は、果たして他の勇者たちと協力し、魔国を打ち倒して元の世界へ帰ることができるのか。
それぞれの思惑が交錯する中、勇者たちの戦いが幕を開ける。
これは社会不適合者が歩む成長の物語。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
龍と旅する。
水無月
ファンタジー
治安が良くない島々や国を龍と旅する物語。
主人公たちが探すのは「龍の卵」。だがそれを狙うのは彼らだけではなく、「龍狩り」や貴族とも争うことになる。
出会いと別れを繰り返して、ロッドとレリスは大海原を渡る。
・海龍 ロッド……最強。頼りになる。こいつ一人でいいんじゃないかと思われるが、とある理由からレリスと行動している。威厳のある話し方をするが、中身は幼い男の子。
・人間 レリス……男性。人間基準で言えば強いが、あくまで人間の枠組みの中でのこと。お人好し。
※注意
〇喧嘩しまくりの異種族同士ですが、彼らはお互いを家族だと認識しています。家族愛です。
〇レリスが生まれ持った性質のせいで「龍の卵」なみに狙われる時があります。徐々に巻き込まれヒロインみたいになります。
〇上記のふたつが無理な方はお気を付けください。表紙と挿絵は手描きです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる