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だが気が進まない。第一ロイが作ったとはいえ、安全性が分からない魔力のこもった薬を大切な友に飲ませてよいものなのか。そして彼にとって思い入れのある、故郷の酒をこんな風に使うことにも抵抗を覚えた。そんな不実なことをしたら、もう今後彼を真っ直ぐに見られる自信が無い。
(ああ、やっぱり俺には無理だ。正直に話して、口裏を合わせるしか……)
「あのさ、エドは誰か申し込みたい相手がいるの?」
「ユーディアそれは……」
『お前も俺と一緒に上花会に行きたいってことなのか? 俺を誘っている?』
「へ、あ?」
『嬉しい。俺はお前と上花会に行きたかった』
一瞬頭がついて行かれなくて、頭の中で今までの話の流れを確認しようと、ぐるぐると会話を反芻してしまう。
(ええ、もしかして。エドゥアルド、俺から申し込まれていると思ってる? どうしよう)
困ったけど、ぶわあっと熱いものが胸の中にこみ上げてくる。
(エドゥアルド、俺の事嫌いになったわけじゃないんだ。上花会に一緒に行きたい、相手になりたいって思ってくれるほどには、俺の事好きなんだ)
「え、あ、あの……」
すっかり動転して、また言葉が上手く出ない。だから大きく息を吸おうと口を開けた拍子にあろうことか、魔石をこくんっと飲み込んでしまったのだ。
「うわあ! まずい! 飲み込んだ」
「大丈夫か? 何を飲み込んだ? 」
『何をだ? まさかここの植物か? それともさっきの果物のどれかか?』
「違うけど、どどどど……、どうしよう。どうしよう。魔石飲み込んじゃった」
「魔石?」
『なんでそんなものを口の中に入れてたんだ?』
「だってそりゃ、君の……、ってあ」
(し、しまった……、今喋ってない方の声に返事してしまったかも。エドゥアルド無口だからどっちが喋ってる方か心の声か分かりくい)
「ご、ごめん。俺、とりあえず、ちょっと、もう、寮に帰る」
逃げようとソファーの上から転がり降りたが、手首をしっかりと掴まれていたため、鎖につながれた犬のようにジタバタしてしまった。
「逃がすか!」
そのまま腰を攫うように片腕で持ち上げられる。流石武芸の達人な上、土や植物相手に鍛えた男は逞しい。そのままどかっとソファーに座ったエドゥアルドの膝の上に向かい合わせに抱きかかえられてしまった。
「どういうことなんだ? ユーディア。素直に白状しろ」
『何を隠してるんだ? 様子がおかしい』
膝に載ってもまだ少し視線が高い。覗き込んでくる賢そうな深い紺碧の瞳に身を竦ませ、口をぐっと噤む。
「な、なんでもない。ねぼけただけだ……」
『そっちがそういう態度にでるなら、俺にも考えがある』
探るような「声」に思わず反応してしまった。
「え、何すんの? 怖い、あ、しまった……」
「ユーディア? お前、俺の心を読んでるだろ」
(察しが良すぎる! そうだった。エドはいつも俺の行動を先回りしてなんでも手伝ってくれようとする、そんな奴だった)
「よ、読めるわけないだろ。そんな高等魔法、俺ができるか?」
「怪しいな? お前にはロイがついてる」
「う……」
顔をぷいっと背けたら、心の中の声すら低く色っぽくエドゥアルド囁いた。
『じゃあ、これからお前にキスするが、いいか?』
「え!」
思わず戒められていない方の手で唇を隠したら、悪辣だが魅力的な顔でにやりと笑われた。
「は、はめたな」
「ほらな。俺の心を読んでる。素直に白状した方が身のためだぞ?」
唇を突き出すようにつんと噤んで、ユーディアはだんまりを決め込もうとした。日が落ちた後の温室の外は真っ暗闇だが、花と作業台を照らしている灯りでお互いの顔はよく見える。エドゥアルドは眉を寄せ、『仕方がないな』と心の声でそう吐き捨て綺麗な双眸を閉じた。
(ああ、やっぱり俺には無理だ。正直に話して、口裏を合わせるしか……)
「あのさ、エドは誰か申し込みたい相手がいるの?」
「ユーディアそれは……」
『お前も俺と一緒に上花会に行きたいってことなのか? 俺を誘っている?』
「へ、あ?」
『嬉しい。俺はお前と上花会に行きたかった』
一瞬頭がついて行かれなくて、頭の中で今までの話の流れを確認しようと、ぐるぐると会話を反芻してしまう。
(ええ、もしかして。エドゥアルド、俺から申し込まれていると思ってる? どうしよう)
困ったけど、ぶわあっと熱いものが胸の中にこみ上げてくる。
(エドゥアルド、俺の事嫌いになったわけじゃないんだ。上花会に一緒に行きたい、相手になりたいって思ってくれるほどには、俺の事好きなんだ)
「え、あ、あの……」
すっかり動転して、また言葉が上手く出ない。だから大きく息を吸おうと口を開けた拍子にあろうことか、魔石をこくんっと飲み込んでしまったのだ。
「うわあ! まずい! 飲み込んだ」
「大丈夫か? 何を飲み込んだ? 」
『何をだ? まさかここの植物か? それともさっきの果物のどれかか?』
「違うけど、どどどど……、どうしよう。どうしよう。魔石飲み込んじゃった」
「魔石?」
『なんでそんなものを口の中に入れてたんだ?』
「だってそりゃ、君の……、ってあ」
(し、しまった……、今喋ってない方の声に返事してしまったかも。エドゥアルド無口だからどっちが喋ってる方か心の声か分かりくい)
「ご、ごめん。俺、とりあえず、ちょっと、もう、寮に帰る」
逃げようとソファーの上から転がり降りたが、手首をしっかりと掴まれていたため、鎖につながれた犬のようにジタバタしてしまった。
「逃がすか!」
そのまま腰を攫うように片腕で持ち上げられる。流石武芸の達人な上、土や植物相手に鍛えた男は逞しい。そのままどかっとソファーに座ったエドゥアルドの膝の上に向かい合わせに抱きかかえられてしまった。
「どういうことなんだ? ユーディア。素直に白状しろ」
『何を隠してるんだ? 様子がおかしい』
膝に載ってもまだ少し視線が高い。覗き込んでくる賢そうな深い紺碧の瞳に身を竦ませ、口をぐっと噤む。
「な、なんでもない。ねぼけただけだ……」
『そっちがそういう態度にでるなら、俺にも考えがある』
探るような「声」に思わず反応してしまった。
「え、何すんの? 怖い、あ、しまった……」
「ユーディア? お前、俺の心を読んでるだろ」
(察しが良すぎる! そうだった。エドはいつも俺の行動を先回りしてなんでも手伝ってくれようとする、そんな奴だった)
「よ、読めるわけないだろ。そんな高等魔法、俺ができるか?」
「怪しいな? お前にはロイがついてる」
「う……」
顔をぷいっと背けたら、心の中の声すら低く色っぽくエドゥアルド囁いた。
『じゃあ、これからお前にキスするが、いいか?』
「え!」
思わず戒められていない方の手で唇を隠したら、悪辣だが魅力的な顔でにやりと笑われた。
「は、はめたな」
「ほらな。俺の心を読んでる。素直に白状した方が身のためだぞ?」
唇を突き出すようにつんと噤んで、ユーディアはだんまりを決め込もうとした。日が落ちた後の温室の外は真っ暗闇だが、花と作業台を照らしている灯りでお互いの顔はよく見える。エドゥアルドは眉を寄せ、『仕方がないな』と心の声でそう吐き捨て綺麗な双眸を閉じた。
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