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「元々俺の家はさっきの能力を使って敵を倒してきた一族だ。兄さんたちもみな魔法学校を出た後は魔導騎士になるためにそのまま大国へ留学する。だけど俺は性に合わないと思った。人を殺すより生かすことをしたいんだ。どんなに強い戦士だって、食べ物にありつけなければ死ぬだけだろ。大事なのは皆が飢えない国を作ることだ。この街に来て、寮に入って、そのことをお前に話したことがあったよな?」
「自分が魔力で品種改良した植物で、飢えない国を作りたいって言ってた。僕と同い年の子どもなのにすごいなって思ったよ」
「お前だけが俺の考えを笑わないで褒めてくれた。俺は魔力も兄弟の中でも強い方だ。家系の力を使うべきだと散々言われてきたが、お前だけが俺を肯定してくれた。だけどお前は親が決めた婚約者の弟で、恋して許されるべき相手じゃなかった」
「エド。あの時、あの花酒を飲んだ晩、俺たちの間に何があったの?」
エドゥアルドはもう躊躇わずに真っ直ぐユーディアを見つめ返した。
「花酒に酔って……、お前は上機嫌で、俺に好きだと言ってくれた」
「え……」
「あの花酒には、月光花が漬け込んである。魔力が宿る花だ。飲めば心の中で言いたくてわだかまっていたことが解れて零れ落ちる。分かっていてお前に飲ませたんだ。俺もお前と同じ、ずるいんだ。だがどうしてもお前の心の奥をこじ開けたかった」
「エドゥアルド」
「俺もお前が好きだと言った。俺と一緒に生きて欲しいと告げたんだ。だがお前は姉さんを裏切れないと泣いた。態度ではリリールーを煙たがっていても、心の中では大切に想っている。俺を愛していても、家族を裏切れない。それがお前の本心だ。お前を泣かせた自分が許せなかった。だから距離を置いたんだ」
「覚えてないよ……」
「だから俺は決心した。上位の鍵を手に入れて、ちゃんと王都で職を見つけて、独り立ちする。一族も、お前の祖父さんにも誰にも何の文句を言われぬようになってから、お前に改めて告白して、攫いに行こうと」
「諦めては、ないんだ」
「諦めるなんて選択肢、俺にはハナからない。俺にとってはお前が唯一だから」
精悍で迷いのない顔つきで、真っすぐに告げられた言葉。
(こんな熱烈な言葉を聞いて、心が動かないわけないじゃないか)
まるで光る矢に射貫かれたように、ユーディアの胸に突き刺さった。
「それにリリールーは別に俺の事が好きなわけじゃないだろ。好きな奴に相手にされないから拗ねているんだ。そういうところは、ちょっとお前に似ていて可愛いと思う」
「か、可愛いとかいうな」
「なんだ、恥ずかしいのか? お前は可愛い。初めて見た時、あの花みたいな髪色だなと思った。だけど一晩で散る儚い月光花と違ってお前はいつでも傍で見られる。それはどんなに贅沢なことなんだろうと思った」
そう言いながら、エドゥアルドはユーディアの前髪、こめかみ、そして頬に口づけてきた。
「お前、俺の事が嫌いじゃないよな? 姉さんを裏切れないって言ってた。心が俺に傾いていなければ言えない台詞だ」
「今日のエドはすごく良く喋るね」
「もう、我慢しなくていいと思ってた。今宵、月光花が咲いたら寮の部屋にお前を攫いに行こうと思ってた」
気障な台詞めいた言葉に、ユーディアは頬はおろか耳まで真っ赤に染まってしまった。
「そんな、強引な」
「お前が俺を受け入れて頷いてくれるまで、この温室に魔法をかけて外に出さないつもりだったんだ。だけどお前の方から来てくれて……。これは運命だなと感じた」
だとしたら自分は自ら檻に飛び込んだ、間抜けなウサギだったということになる。
「こっ、こわっ。お前そんなこと考えてたのか? そんなすました顔して」
「愛しているから、絶対にお前を逃したくない」
「……」
長い指、節高の手がユーディアの手を取り、指を絡めて握ってきた。目を合わせたままゆっくりと甲にキスをされた。普段は実直な男の眼差しの熱に炙られ、蕩けてしまいそうになる。
「お前が俺を選んでくれるなら、生涯お前の傍に居る。寂しい思いは二度とさせない。俺にお前の全てを委ねて欲しい」
「エドゥアルド……」
音楽が途切れた。ゆっくりとソファーに押し倒され、どうしてよいのか分からずユーディアは饒舌になった。
「元々俺の家はさっきの能力を使って敵を倒してきた一族だ。兄さんたちもみな魔法学校を出た後は魔導騎士になるためにそのまま大国へ留学する。だけど俺は性に合わないと思った。人を殺すより生かすことをしたいんだ。どんなに強い戦士だって、食べ物にありつけなければ死ぬだけだろ。大事なのは皆が飢えない国を作ることだ。この街に来て、寮に入って、そのことをお前に話したことがあったよな?」
「自分が魔力で品種改良した植物で、飢えない国を作りたいって言ってた。僕と同い年の子どもなのにすごいなって思ったよ」
「お前だけが俺の考えを笑わないで褒めてくれた。俺は魔力も兄弟の中でも強い方だ。家系の力を使うべきだと散々言われてきたが、お前だけが俺を肯定してくれた。だけどお前は親が決めた婚約者の弟で、恋して許されるべき相手じゃなかった」
「エド。あの時、あの花酒を飲んだ晩、俺たちの間に何があったの?」
エドゥアルドはもう躊躇わずに真っ直ぐユーディアを見つめ返した。
「花酒に酔って……、お前は上機嫌で、俺に好きだと言ってくれた」
「え……」
「あの花酒には、月光花が漬け込んである。魔力が宿る花だ。飲めば心の中で言いたくてわだかまっていたことが解れて零れ落ちる。分かっていてお前に飲ませたんだ。俺もお前と同じ、ずるいんだ。だがどうしてもお前の心の奥をこじ開けたかった」
「エドゥアルド」
「俺もお前が好きだと言った。俺と一緒に生きて欲しいと告げたんだ。だがお前は姉さんを裏切れないと泣いた。態度ではリリールーを煙たがっていても、心の中では大切に想っている。俺を愛していても、家族を裏切れない。それがお前の本心だ。お前を泣かせた自分が許せなかった。だから距離を置いたんだ」
「覚えてないよ……」
「だから俺は決心した。上位の鍵を手に入れて、ちゃんと王都で職を見つけて、独り立ちする。一族も、お前の祖父さんにも誰にも何の文句を言われぬようになってから、お前に改めて告白して、攫いに行こうと」
「諦めては、ないんだ」
「諦めるなんて選択肢、俺にはハナからない。俺にとってはお前が唯一だから」
精悍で迷いのない顔つきで、真っすぐに告げられた言葉。
(こんな熱烈な言葉を聞いて、心が動かないわけないじゃないか)
まるで光る矢に射貫かれたように、ユーディアの胸に突き刺さった。
「それにリリールーは別に俺の事が好きなわけじゃないだろ。好きな奴に相手にされないから拗ねているんだ。そういうところは、ちょっとお前に似ていて可愛いと思う」
「か、可愛いとかいうな」
「なんだ、恥ずかしいのか? お前は可愛い。初めて見た時、あの花みたいな髪色だなと思った。だけど一晩で散る儚い月光花と違ってお前はいつでも傍で見られる。それはどんなに贅沢なことなんだろうと思った」
そう言いながら、エドゥアルドはユーディアの前髪、こめかみ、そして頬に口づけてきた。
「お前、俺の事が嫌いじゃないよな? 姉さんを裏切れないって言ってた。心が俺に傾いていなければ言えない台詞だ」
「今日のエドはすごく良く喋るね」
「もう、我慢しなくていいと思ってた。今宵、月光花が咲いたら寮の部屋にお前を攫いに行こうと思ってた」
気障な台詞めいた言葉に、ユーディアは頬はおろか耳まで真っ赤に染まってしまった。
「そんな、強引な」
「お前が俺を受け入れて頷いてくれるまで、この温室に魔法をかけて外に出さないつもりだったんだ。だけどお前の方から来てくれて……。これは運命だなと感じた」
だとしたら自分は自ら檻に飛び込んだ、間抜けなウサギだったということになる。
「こっ、こわっ。お前そんなこと考えてたのか? そんなすました顔して」
「愛しているから、絶対にお前を逃したくない」
「……」
長い指、節高の手がユーディアの手を取り、指を絡めて握ってきた。目を合わせたままゆっくりと甲にキスをされた。普段は実直な男の眼差しの熱に炙られ、蕩けてしまいそうになる。
「お前が俺を選んでくれるなら、生涯お前の傍に居る。寂しい思いは二度とさせない。俺にお前の全てを委ねて欲しい」
「エドゥアルド……」
音楽が途切れた。ゆっくりとソファーに押し倒され、どうしてよいのか分からずユーディアは饒舌になった。
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