皆様覚悟してくださいませ。偽聖女の義妹から全て取り戻します。今まで受けた仕打ちは倍にしてお返し致します。

くろねこ

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十八

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黒騎士――そう呼ばれる理由

 カイザス・フォン・ヴァンサイトが
 “黒騎士”と呼ばれるようになったのは、
 称号でも、正式な叙勲でもない。

――戦場が、そう呼んだ。

彼は、黒を纏っていた。ただの色ではない。光を拒む黒。夜に溶け、血を吸い、存在感だけを残す黒。

漆黒の鎧は、儀礼用ではない。
装飾は一切なく、紋章すら刻まれていない。

 無駄を削ぎ落とした直線的な造形。
 関節部は柔軟で、音を立てずに動く。
 刃を弾くための厚みと、致命打を避けるための軽さを、異常なバランスで両立していた。

兜は、つけない。

理由は単純だ。

――敵が、顔を見た方が早く折れる。

 鋭く切れ長の目。
 感情の読めない、深い灰色の瞳。
 戦場にあっても、呼吸一つ乱さない表 
 情。

怒りも、殺意も、誇りも見せない。

ただ、
「前に立つ者」の目をしている。

その異名が、決定的になったのは――
隣国との小競り合いだった。



 国境沿いの要塞都市。
 名目は“偶発的な衝突”。

実態は、隣国による領土の切り崩しだった。正規軍を出すほどではない。だが、放置すれば確実に削られる。そこで派遣されたのが、ヴァンサイト公爵家の部隊。

総指揮は兄アレックス。だが、先頭に立ったのはカイザスだった。

 夜明け前。
 霧の濃い渓谷。

隣国の傭兵団が進軍を開始した、その瞬間。

 ――黒が、現れた。

音もなく。気配もなく。前衛の兵が倒れるまで、誰一人、存在に気づかなかった。
剣は、振り回さない。突きでも、斬撃でもない。必要な距離だけ詰め、必要な箇所だけを破壊する。

 喉。
 腱。
 指。
 武器を握る力だけを、奪う。

血は出る。だが、無駄に殺さない。逃げようとした者は、後ろから“地形ごと”追い詰められた。崖が崩れ、足場が消え、退路だけが、静かに閉じる。

 ――あれは、魔法ではない。

戦場を読む力だ。

 地形。
 風向き。
 恐怖の伝播。

敵の士気は、戦う前に崩壊していた。誰かが、叫んだ。

「黒だ……!黒騎士がいる!!」

 その声が合図だった。

 剣を捨てる者。
 膝をつく者。
 泣き叫ぶ者。

戦闘は、半刻で終わった。

 被害は最小。
 成果は最大。

そして何より。

隣国側の報告書に、こう記された。

 ――
 「黒騎士が前線に立った瞬間、
 戦場そのものが敵に回ったようだった」



それ以降。

彼が出る戦場では、
敵が無駄に深追いをしなくなった。

正確には――近づかなくなった。

カイザスは、それを誇りに思わない。

武功を語らず、酒宴にも出ず、名を売ることもない。

 ただ、必要な場所に立ち、
 終われば去る。

だからこそ。人々は、彼をこう呼んだ。

 ――黒騎士。

王家に属さず。神殿にも従わず。だが、戦場が最も信頼する存在。

そして今。

その黒騎士が、剣を抜く理由を見つけてしまった。

 敵ではない。
 戦場でもない。

世界の中心を、守るために。


それが、彼が“守護者”と呼ばれる理由だっ
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