皆様覚悟してくださいませ。偽聖女の義妹から全て取り戻します。今まで受けた仕打ちは倍にしてお返し致します。

くろねこ

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二十ニ

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義母タミア・フォン・ハーベルトの功績

結論から言えば――
義母タミアに、語るべき功績はほとんどない。

彼女は元・男爵家の娘である。
若い頃は美貌と愛想を武器に、社交の場を渡り歩いた。

先代公爵夫人――
ミリアージュ・フォン・ヴェルトリナス・ハーベルトが健在だった頃、
タミアは「従順で控えめな後妻候補」として屋敷に迎えられた。

当時の彼女の評価は、こうだ。

・前に出ない
・決断しない
・責任を取らない
・すべてを「先代夫人の判断」に委ねる

つまり、何もしないことが評価された女だった。ミリアージュ亡き後、タミアは公爵夫人の座を得る。だが、そこで初めて“何もできない”ことが露呈する。

領地経営への関与:なし
王家・貴族間の調整:なし
神殿との折衝:なし

彼女が行ったのは、主に次の三つだけだった。

・宝飾品の購入
・衣装と調度品への散財
・社交界での「公爵夫人らしい振る舞い」の模倣

社交と呼ばれていたが、
実態は「情報を持ち帰らない挨拶回り」に過ぎない。

結果として――屋敷の財務は逼迫し、領地は“貧しいふり”を強いられ、不正な減税申請と補助金依存が常態化した。

さらに。

娘マリエルを“聖女”として担ぎ上げたこと。これは、タミア唯一の「行動」と言える。だがそれも、神殿の権威にすがり、公爵家の立場を守ろうとした保身の選択だった。

聖女を育てたのではない。
聖女という“肩書き”に娘を押し込めただけ。

そして何より――
公爵家の正当な後継者であるオリビアを排除し、屋敷の加護と均衡を崩した。

それが、タミア・フォン・ハーベルト最大の“功績”である。



初社交戦

――タミア・フォン・ハーベルト、大失態

その夜、王都の小宮殿は華やいでいた。

白を基調とした回廊。
水晶灯の光。
香水と権力の匂いが混じる空気。

――社交戦の舞台。

公爵夫人タミア・フォン・ハーベルトは、久しぶりに“前”に立っていた。

新調したドレス。
控えめだが高価な宝飾。
鏡の前で何度も練習した微笑み。

(大丈夫……)
(私は、公爵夫人なのよ)

そう言い聞かせながら、会場に足を踏み入れる。

だが。

最初の違和感は、すぐに現れた。

一つ目の失態:挨拶の順番

声をかけた相手は、侯爵夫人。

だが――
その背後に立っていたのは、実質的な資金提供者である伯爵令嬢だった。

タミアは、気づかない。

「ご機嫌よう、侯爵夫人」

伯爵令嬢の視線が、冷える。

――あ、これ終わった。

周囲の貴族たちは、笑顔の裏で察した。

「“見えていない”」

それは、致命傷だ。

二つ目の失態:金の話

話題は、自然と慈善事業へ。

「最近は、寄付も大変で……」

タミアは、ここぞとばかりに言った。

「ええ、本当に」
「宝飾も控えておりますし、苦労しているのですの」

――沈黙。

苦労?

この三ヶ月で、
彼女の宝石購入履歴は王都上位。

数字を知る者ほど、顔を伏せた。

三つ目の失態:名前を間違える

決定打。

「まあ、これはこれは」
「デュラン男爵様……でしたかしら?」

相手は、子爵。

しかも、最近叙爵されたばかり。

男の笑顔が、固まる。

「……いいえ。子爵でございます」

「まあ! 失礼しましたわ!」

笑って済ませようとする。

済まない。

社交とは、“間違えないこと”が最低条件だ。空気が、完全に凍った。観察者たち
端の方で、王太子セドリックは頭を抱えていた。

「……うわぁ」

側近の文官が、小声で言う。

「殿下、あれは……」

「失点の見本市だな」

武官は、目を逸らす。

「……止めなくてよろしいのですか」

「いや」

セドリックは、ゆっくりと息を吐く。

「止めたら、彼女は“自分が悪い”と理解しない」

視線は、ただ一人へ。

♦︎


オリビアの介入

会場の奥。

浮遊クッションではなく、今日はきちんと立っていた。金の髪。穏やかな表情。だが、目は完全に冷静だ。

(……想定より、酷い)

一歩、前に出る。空気が、変わる。木々はない。だが、場が自然と整う。

「皆さま」

澄んだ声。

「本日は、お集まりいただきありがとうございます」

自然な導入。誰もが、無意識に耳を傾ける。

「先ほどの件ですが」

微笑みながら、さらりと修正する。

「我が家の慈善事業は、港湾再整備への支援が中心です。宝飾の話は、私の管理不足でした」

一言で、責任を“自分に集約”。空気が、戻る。続けて。

「デュラン子爵」
――正確に。

「先日の提案、前向きに検討しております」

子爵の顔が、わずかに緩む。タミアは、立ち尽くしていた。理解している。

――自分は、何もしていない。

社交戦、終了会が終わる頃。噂は、すでに回っていた。

「公爵夫人は、もう前に出ない方がいい」
「娘の方が、完全に格上だ」

それが、結論。その後屋敷に戻り、応接間。タミアは、椅子に沈んでいた。

「……私……」

オリビアは、淡々と言う。

「失敗しましたね」

容赦はない。

「でも、想定内です」

タミアが、顔を上げる。

「次は」

静かな声。

「“前に出ない社交”を教えます」

一拍。

「あなたは、矢面に立つ人間じゃない」

言い切り。

「それを、今日やっと理解できたなら」
「この失態も、価値があります」

タミアは、何も言えなかった。

オリビアは、背を向ける。

「次は、私の後ろに立ちなさい」

「喋る必要はありません」
「笑って、黙って、頷くだけ」

「それができたら」
「また一段、戻してあげます」

扉が閉まる。

残されたタミアは、
初めて理解した。

――自分は、教育されているのだと。

そしてそれは、
慈悲ではなく、運用だということも
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