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王都の午後は、春めいた陽射しに包まれていた。
レベッカとリリーは久しぶりの休暇を取り、広場近くのカフェのテラス席でくつろいでいた。
通りを行き交う人々の声と、焼き菓子の甘い匂い。
どこか懐かしい穏やかな時間が流れていた。
「ねぇ、昔は“完璧少女リリアンヌ様”、なんかちょっと近づきがたかったのに!」
カップを片手に、レベッカがにやりと笑う。
「今はすっかり柔らかい雰囲気してるじゃない。ドジっ子騎士リリーがいいスパイスになったのかしら?」
「何よそれ!」
リリーは思わず吹き出して、頬を少し染めた。
「でも……ありがとう。レベッカ、本当にあなたのおかげよ。」
「おやおや、今日は素直じゃない。これは事件ね!」
「もう、からかわないで!」
二人の笑い声が、風に乗ってカフェの外へと広がっていく。
ふとレベッカが、リリーの首元を見て目を細めた。
「――ねぇ、それ。見えてるよ?」
「え、なにが?」
「ほら、そこ。首筋」
にやにやと指差す視線に、リリーはハッとして手で押さえる。
「ちょ、ちょっとレベッカ! 見ないで!」
「いやぁ~これは見逃せないわぁ。リリアンヌ様にこんな生々しい印がつくなんて! いいなぁ、私も恋したいなぁ!」
わざとらしくため息をつきながら、レベッカはカップをくるくる回した。
「ねぇ、リリー。結局騎士団どうするの? リリアンヌ様に戻ったんなら、任務なんてわけないでしょ?」
「もちろん、続けるわ。今の私なら大丈夫って、自信があるもの!」
その言葉は、どこか誇らしげだった。
剣を振っても、もうあの重さは感じない。
頭の中の霧も晴れ、不運もどこかへ吹き飛んだ気がする。
「おお、さすがリリアンヌ様。懐かしいわね、その感じ。……あ、でもさ」
レベッカの目が意味深に細まる。
「避妊はしっかりしなよ? 騎士団完全覚醒リリアンヌ様が次の王太子様妊娠なんてことになったら、即座に退団だよ!」
「な、なっ……ちょっとレベッカーー!」
リリーの声が裏返る。
「だってさぁ、そんなこれ見よがしにキスマーク付けられてさ。なんか私の中のアシュレイ王子像が野獣と化したわよ!」
「ちょ、ちょっとやめてってば!」
レベッカの見たては、あながち間違っていなかった。
最近のアシュレイは、以前よりも“男”を増していた。
会うたびにその熱が増していく。
触れられるたび、リリーは思う。――もしかしたら、彼は“触れてもいい”と“求めてもいい”を、少し取り違えているのかもしれない、と。
でも、不思議と嫌ではなかった。
それどころか、触れられるたびに“生きている”と実感する。
愛される痛みも、今は心地よい。
「ねぇ、リリー」
レベッカがカップを置いて微笑んだ。
「……幸せ?」
リリーは一瞬だけ空を見上げて、柔らかく笑った。
「うん。今は、ちゃんと幸せよ。」
その笑顔を見て、レベッカも微笑む。
午後の陽射しの中、二人のカップが小さく触れ合う音がした。
レベッカとリリーは久しぶりの休暇を取り、広場近くのカフェのテラス席でくつろいでいた。
通りを行き交う人々の声と、焼き菓子の甘い匂い。
どこか懐かしい穏やかな時間が流れていた。
「ねぇ、昔は“完璧少女リリアンヌ様”、なんかちょっと近づきがたかったのに!」
カップを片手に、レベッカがにやりと笑う。
「今はすっかり柔らかい雰囲気してるじゃない。ドジっ子騎士リリーがいいスパイスになったのかしら?」
「何よそれ!」
リリーは思わず吹き出して、頬を少し染めた。
「でも……ありがとう。レベッカ、本当にあなたのおかげよ。」
「おやおや、今日は素直じゃない。これは事件ね!」
「もう、からかわないで!」
二人の笑い声が、風に乗ってカフェの外へと広がっていく。
ふとレベッカが、リリーの首元を見て目を細めた。
「――ねぇ、それ。見えてるよ?」
「え、なにが?」
「ほら、そこ。首筋」
にやにやと指差す視線に、リリーはハッとして手で押さえる。
「ちょ、ちょっとレベッカ! 見ないで!」
「いやぁ~これは見逃せないわぁ。リリアンヌ様にこんな生々しい印がつくなんて! いいなぁ、私も恋したいなぁ!」
わざとらしくため息をつきながら、レベッカはカップをくるくる回した。
「ねぇ、リリー。結局騎士団どうするの? リリアンヌ様に戻ったんなら、任務なんてわけないでしょ?」
「もちろん、続けるわ。今の私なら大丈夫って、自信があるもの!」
その言葉は、どこか誇らしげだった。
剣を振っても、もうあの重さは感じない。
頭の中の霧も晴れ、不運もどこかへ吹き飛んだ気がする。
「おお、さすがリリアンヌ様。懐かしいわね、その感じ。……あ、でもさ」
レベッカの目が意味深に細まる。
「避妊はしっかりしなよ? 騎士団完全覚醒リリアンヌ様が次の王太子様妊娠なんてことになったら、即座に退団だよ!」
「な、なっ……ちょっとレベッカーー!」
リリーの声が裏返る。
「だってさぁ、そんなこれ見よがしにキスマーク付けられてさ。なんか私の中のアシュレイ王子像が野獣と化したわよ!」
「ちょ、ちょっとやめてってば!」
レベッカの見たては、あながち間違っていなかった。
最近のアシュレイは、以前よりも“男”を増していた。
会うたびにその熱が増していく。
触れられるたび、リリーは思う。――もしかしたら、彼は“触れてもいい”と“求めてもいい”を、少し取り違えているのかもしれない、と。
でも、不思議と嫌ではなかった。
それどころか、触れられるたびに“生きている”と実感する。
愛される痛みも、今は心地よい。
「ねぇ、リリー」
レベッカがカップを置いて微笑んだ。
「……幸せ?」
リリーは一瞬だけ空を見上げて、柔らかく笑った。
「うん。今は、ちゃんと幸せよ。」
その笑顔を見て、レベッカも微笑む。
午後の陽射しの中、二人のカップが小さく触れ合う音がした。
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