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番外編 悪役令嬢たちの心変わり
君の幸せをただ願う
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(よ、よりにもよって今?!それに王族の方々が揃いも揃って!)
「いつものガゼボにお通しして、私もすぐ向かう。」
そう返事した夕の代わりを務めるレイヴンにダリアは顔を真っ青にしながら裾をクイクイっと訴えかけるように引っ張る。
「ま、まって、、、行ってしまうの?」
不安げなダリアにレイヴンは黙って首を横に振る。
「主に皆さんをダリア様にご紹介するよう言付かっております。」
「え?な、、、なんでそんなこと。」
「あなたの不安を取り除いて欲しいと。」
少し俯くとダリアは小さい声で「あ、あなたが一緒なら」と呟いた。
その言葉を確かに聞き受けたレイヴンはダリアの身支度に戻る。
「本日は珍しくベルファ殿下もおいでのようですね。主も驚いているかと。」
「ベルファ殿下?夕と交流があったかしら、、、」
「ダリア様に心当たりは?」
「そ、そりゃあ公爵家の令嬢ですもの。何かのパーティでお見かけしたことくらいはあるはずよ。」
(でも、、向こうがそれを覚えているかどうか。アルベルト様よりはるかに無愛想で近寄り難いお方だったから。)
ダリアがベルファのことを思い出しているとレイヴンが彼女の心の声に答えるかのように「王位継承第一位という立場もありますから下手に言葉を口にできないのかもしれませんね。」と言う。
当然ダリアは「へ?」と間の抜けた声を出してしまいレイヴンは仕方なく手を止めてドレッサーの鏡に映ったダリアと自分を見つめながら心の中での会話も可能であるのだと説明した。
「そ、そっか。元々私の魔力だから。」
「何か口にし難いことを仰りたい場合は今のように心の中で仰ってください。」
「わかったわ。」
「ドレスはこちらからお好きなのをお選びください。主がダリア様が着る用にと用意したものでございます。」
「こ、こんなに?!」
クローゼットの中には美しいドレスが選り取り揃えられていた。
「はい、こちらはヒナ様に勝手にドレスを譲ってしまったお詫びだとか。」
様々なドレスを手に取りながら
(そんなこと、、、気にしなくてもいいのに。)
と心の中でつぶやいた。
「このドレス。」
「主もそのドレスが一番お気に召しているようですよ。」
そう言ってダリアが手に取ったドレスは彼女と同じミッドナイトブルーの装飾が派手すぎない流れるようなフォーマルのものだった。
「あなたにとてもよくお似合いだろうと。」
【かつて、こんなに想われたことはあるだろうか。
かつて、こんなに損得なしに接してくれた人は居たのだろうか。
かつて、こんなに喜びを感じたことがあるだろうか。
かつて、こんなに生きていると実感したことは、、、、あるのだろうか。
彼女は何故、、、わたしを憎まないのだろう。
悪女に人生を奪われ、自分という存在も消され。赤の他人に成り代わって生きるしかない選択肢のみを与えられ。
それでもなお わたしのためだと嬉しそうに話すのだ。
】
<まったく、世話のやける妹だな君は。>
<見て!アストルム騎士団と名付けたんだ。え?名前の由来?それはね、、、>
<名前を考えている時に夜空のような君の瞳を思い出した。それだけだよ。>
<まったく世の男は見る目がないな。こんなに美しいのに奴らは公爵家という爵位しか見えてないのか?!>
<大丈夫、君が大切にしたものは必ず守り抜くよ。例え君を傷付けたやつでもね。あまり納得はしていないが、、、>
<もう一度この世界に戻ったら何が食べたい?探しておいてあげよう!>
【こんな大罪を犯したわたしに、、、ダリアという存在を消さずに残そうとしてくれる。】
「このドレスにするわ。」
涙を浮かべながら笑顔でレイヴンに告げるとレイヴンも小さく微笑んだ。
「ではお召変え致しましょう。」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
「いつものガゼボにお通しして、私もすぐ向かう。」
そう返事した夕の代わりを務めるレイヴンにダリアは顔を真っ青にしながら裾をクイクイっと訴えかけるように引っ張る。
「ま、まって、、、行ってしまうの?」
不安げなダリアにレイヴンは黙って首を横に振る。
「主に皆さんをダリア様にご紹介するよう言付かっております。」
「え?な、、、なんでそんなこと。」
「あなたの不安を取り除いて欲しいと。」
少し俯くとダリアは小さい声で「あ、あなたが一緒なら」と呟いた。
その言葉を確かに聞き受けたレイヴンはダリアの身支度に戻る。
「本日は珍しくベルファ殿下もおいでのようですね。主も驚いているかと。」
「ベルファ殿下?夕と交流があったかしら、、、」
「ダリア様に心当たりは?」
「そ、そりゃあ公爵家の令嬢ですもの。何かのパーティでお見かけしたことくらいはあるはずよ。」
(でも、、向こうがそれを覚えているかどうか。アルベルト様よりはるかに無愛想で近寄り難いお方だったから。)
ダリアがベルファのことを思い出しているとレイヴンが彼女の心の声に答えるかのように「王位継承第一位という立場もありますから下手に言葉を口にできないのかもしれませんね。」と言う。
当然ダリアは「へ?」と間の抜けた声を出してしまいレイヴンは仕方なく手を止めてドレッサーの鏡に映ったダリアと自分を見つめながら心の中での会話も可能であるのだと説明した。
「そ、そっか。元々私の魔力だから。」
「何か口にし難いことを仰りたい場合は今のように心の中で仰ってください。」
「わかったわ。」
「ドレスはこちらからお好きなのをお選びください。主がダリア様が着る用にと用意したものでございます。」
「こ、こんなに?!」
クローゼットの中には美しいドレスが選り取り揃えられていた。
「はい、こちらはヒナ様に勝手にドレスを譲ってしまったお詫びだとか。」
様々なドレスを手に取りながら
(そんなこと、、、気にしなくてもいいのに。)
と心の中でつぶやいた。
「このドレス。」
「主もそのドレスが一番お気に召しているようですよ。」
そう言ってダリアが手に取ったドレスは彼女と同じミッドナイトブルーの装飾が派手すぎない流れるようなフォーマルのものだった。
「あなたにとてもよくお似合いだろうと。」
【かつて、こんなに想われたことはあるだろうか。
かつて、こんなに損得なしに接してくれた人は居たのだろうか。
かつて、こんなに喜びを感じたことがあるだろうか。
かつて、こんなに生きていると実感したことは、、、、あるのだろうか。
彼女は何故、、、わたしを憎まないのだろう。
悪女に人生を奪われ、自分という存在も消され。赤の他人に成り代わって生きるしかない選択肢のみを与えられ。
それでもなお わたしのためだと嬉しそうに話すのだ。
】
<まったく、世話のやける妹だな君は。>
<見て!アストルム騎士団と名付けたんだ。え?名前の由来?それはね、、、>
<名前を考えている時に夜空のような君の瞳を思い出した。それだけだよ。>
<まったく世の男は見る目がないな。こんなに美しいのに奴らは公爵家という爵位しか見えてないのか?!>
<大丈夫、君が大切にしたものは必ず守り抜くよ。例え君を傷付けたやつでもね。あまり納得はしていないが、、、>
<もう一度この世界に戻ったら何が食べたい?探しておいてあげよう!>
【こんな大罪を犯したわたしに、、、ダリアという存在を消さずに残そうとしてくれる。】
「このドレスにするわ。」
涙を浮かべながら笑顔でレイヴンに告げるとレイヴンも小さく微笑んだ。
「ではお召変え致しましょう。」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
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