合成師

盾乃あに

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引き抜き

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「うし!これで明日も楽しみだな」
 俺は店の中に飾られた属性武器を眺めて一息つく。
 ここは『tortie』の東京支店。
 そして俺が店長を務める俺の店だ!

「榊原店長ー、そろそろ上がりましょ?」
「だな、戸締りはしたか?」
「もうあとは裏口だけですよ」
 とサブマネージャーの瀬戸が言ってくる。
 こいつも出来るやつだから、そのうち上に上がってくるだろうな。

「んじゃ今日はあがるか」
「はい」
 裏口から出てシャッターを下ろしてロックをかけるとまるで要塞だな。
 前の件があるから厳重になったのはよかった。

『あら?もう店じまいなの?』
 と英語で喋りかけてくる女が一人。
『すいません。営業時間はとっくに過ぎてますから』
 身構えるがそれを悟られないように気丈に振る舞う。

『ようやく仕入れ先がわかったのに、残念ね』
 こいつはとびきりやばいかもな。
 仕入れ先ってのはルカのことか?
『さて?なんのことでしょうか?』
『属性武器をここで取引してるのはわかってるのよ?そんなに警戒してもしょうがないでしょ?』
『あはは、まぁそうですとは商売なんで言えないですね』
 ルカのことまでは知らないようだな。

『判断を見誤ると酷い目に遭うわよ?』
『そちらこそ、ここが日本で、俺が誰だかわかって言ってるのか?』
 こっちだってそれなりに修羅場はあったからな?そう簡単にルカに辿り着けると思うなよ!

『良い目ね、私は『Cyan'sシアンズ』の社長よ』

 シアンズか、アメリカで1、2を争うミスリル専門店だな。

『悪いが同業他社はお断りだ。他を当たれ』
 専属契約してるルカの引き抜きか。
『私は執念深い女なの。率直に言うとあなたの店の鍛冶士を紹介してくれない?貴方も一緒に『Cyan'sシアンズ』の席を用意するわ』

 はぁ、『tortie』も舐められたもんだな。
『答えはノーだ。いくら積まれても俺はこの店を一流にする』

『そう、それじゃあ仕方ないわね。瀬戸?こっちに来なさい』
『はい』
「なっ!?瀬戸!」
 瀬戸は女の横に立つと、
「店長?ここは乗るべきですよ?一流ブランドの『Cyan's』がこうして来てるんですから」
 瀬戸の裏切りは頭になかった。
 サブマネとしてこいつは信頼できると思っていたのに。

「瀬戸、『tortie』のサブマネがそんな事をすればどうなるかわからないわけじゃないだろ?」
 流石に情報は流れて他のブランド店には就職出来ないぞ?

「店長がどう思っても、引き抜かれたのは俺です。これで俺は一流のチーフマネージャになる」
「よく考えろ!」
「考えた結果です」
 そう言われると、
『瀬戸、行くわよ?』
「はい、それじゃ店長。長い間ありがとうございました」
 と言って瀬戸と女は帰って行く。

「クソッ!目をかけてたのに、簡単に裏切りやがって!」
 腹が立つが、『tortie』はまだ一流に上がったばかりだ。
 老舗のブランド店には負けるのか。

 だが、こちらの属性武器を真似できるはずもなく、焦っているのはあちらの方だろうな。
 だからサブの瀬戸に取り入った。

「はぁ、まぁ、いいか。別に人はいる……」
 そう、人は補充がきくからな。
 サブまで育てたのに……俺の目が間違ってただけのことか。
 ただルカのことが知られたのはヤバいな。

 今のところ属性武器を作れるのはルカだけだからな。

「ルカのことも瀬戸は知ってるからな。とりあえず連絡しておくか」
 スマホを取り出しルカに電話をする。

 連絡してとりあえずは話はしておいた。
 まぁ、『tortie』以外に売るつもりはないと言われたし大丈夫だろ。

 だが、さすがに信頼してる従業員に裏切られたのはキツイなぁ。

「はぁ、今日は飲むか……」

ーーー

「分かった。大丈夫だ」
 と言って電話を切ると、
「どうしたの?」
 カグヤが隣にいたので聞いてくる。
「『tortie』のサブが引き抜かれたらしい」
「そう、それで電話してきたのね」
 ツネにしか卸さないのにサブを引き抜くなんてな。

「『Cyan's』ってとこらしいな」
「有名なとこね。使ってる探索者も大勢いるわ」
「そうなのか。狙いは属性武器だろうな」
 属性武器は今のところ俺とシオンしか作れないし、シオンのはまだ世に出してないからな。

 と、ここでスマホが鳴る。
「はい」
「あ、お久しぶりです!『tortie』にいた瀬戸ですが」
「あぁ、辞めたんだろ?何の用だ?」
「もう話がいってるんですね。自分は今『Cyan's』のチーフマネージャーなんですが、属性武器を卸していただけないでしょうか?」

 引き抜かれたことはそっちのけで俺がツネのダチなのも知ってるはずなのに図々しいやつだな。

「悪いがお断りだ!もうかけてくるんじゃないぞ!」
 と電話を切る。

 するとまたスマホが鳴り、
「なんだ?」
「Hello、私は『Cyan's』のキンベル・ブレアよ。少し話をしないかしら?」
 っとに、めんどくさいな。
「俺は『tortie』の榊原だから売るのであって、それ以外には売らない!どれだけ金を積まれてもだ!」
 サブマネが引き抜かれたツネの気持ちを考えると、こんなやつには売りたくない。

「これはビジネスよ?代金だって話によっては」
 と言うブレアの話はわかるが、
「だから売らない。金より大事なものがあるからな!」
 とスマホを切って電源を落とした。
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