合成師

盾乃あに

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工房

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「親方ぁー!」
 大声で走ってくる若い男。
「何だこのヤロゥ!」
 ハンマー片手に叫ぶ親方と言われる男。
「俺には大吉って名前があるって言ってるでしょ!」
「うっせぇ!今大事なとこだ!!」
 と大吉に言うと少し待つ大吉。
 ここはとある工房だ。

 親方の作業が終わると駆け寄って行く大吉。

「まーた属性武器の刻印っすよ!」
「お!今度は何だ?前の氷の属性剣は良くできてたな!」
「そんなんだから属性武器に刻印なんか付けろって言われるんすよ!」
 頭に巻いたタオルを取ると長い髪がハラリと流れる。

「あ?だからオメェは半人前なんだよ!オメェならこいつを作れるのか?」
 と属性武器を持ち上げる。
「……無理っす。で、でも、俺だって!」
「オメェはまだ若いからわからねぇんだ。これを作るやつは相当レベルを上げたんだ」
 親方はハンマーを腰袋に戻すと椅子に腰掛ける。
 生産職がレベルを上げるのは至難の業だ。

「オメェのレベルは?」
「15っす」
「上げる気はねぇのか?」
「む、無理っすよ!俺だって死にたくねぇ!」
 とロン毛の男は向かいの椅子に座る。
 一人で行ける所まで行ったが、所詮、生産職。生きて帰るので精一杯だったのだ。

「俺ぁレベル30で限界だった。それでもミスリルが打てるってので天狗になってたが、ミスリルの上があるなんてな」
「作れるっすよ!親方にだって!」
「無理だ。……こりゃ、レベルが高い奴が作ったものだ」
 属性武器を見てそう言うと、仲間達が休憩から戻ってくる。

「おっ!今度はどんな武器だ?」
「ほぉ、こりゃすげぇな!」
 と、楽しそうに見ている。
 みんな武器が好きで、こうして工房で働いている。

「オメェならまだ望みがある。俺が頼んでやるよ」
「嫌だね!親方からまだ学ぶことは沢山あるんだ!」
 とタオルで頭を巻いて後ろで縛ると腰袋からハンマーを取り出す。
 大吉はまだミスリルを打てないので鉄製品を主に扱っている。
 そんな大吉を見てため息をつくと、大声でみんなに言う。

「っとに、さぁ、みんな!仕事だ!」
「「「「おうっ!」」」」

 工房を後にする親方はみんなに声をかけて工房を出て行く。

 外に出ると冷たい風が気持ちいい。
「あ、親方!いつもお世話になってます!」
 榊原恒吉はスーツを着て親方の前に走る。
 ここは『tortie』の専属工房だ。

「おう、またいい武器が増えたな!」
「はい!刻印ばかりお願いしてすいません」
「なーに、俺もあれくらい作れればいいんだがな」
 と親方はバンダナを取ると光る頭を撫でる。

「いえ、親方達の作るミスリル武器も売れてますよ!」
「へへっ!そうかい。そりゃ何よりだ」
 二人は背も歳も離れているが昔からの友達のように話す。

「あの話はまだですか?」
「あぁ、どうしても言うこと聞かねぇんだよ」
 ツネが聞くと親方は遠い目をしてそう言う。

「大丈夫ですって!そのうちわかってくれますよ!」
「だな。それより今度酒でも飲もうや」
「いいですね!居酒屋でいいですか?」
「おう!俺らは堅苦しいとこは苦手だ」
 と二人で笑う。

 ツネはここが大好きだった。
 社長に連れられて来た時はまだ若く、ミスリルの良し悪しも分からなかったが、自分より上の親方達がハンマーを生き生きと振るう姿。
 この人達の作ったものを売ることが仕事になると、なぜか誇らしく思えた。

 ツネは車に向かってジェスチャーでこっちに来いと言って一人の男が走ってくる。
 短髪でスーツの似合うスラッとした男だ。
「あ、こいつがサブマネージャーの瀬戸と言います」
 ツネは瀬戸と言う男を親方に紹介する。
「初めまして!瀬戸と言います」
 ハキハキと喋る瀬戸に同じ思いをして欲しくてここに連れて来たのだ。

「おう、瀬戸か。よろしくな!」
「はい!」
 瀬戸は工房を見て周り、他の職人にも挨拶して行った。

 そして帰り道、瀬戸の運転で店に戻る途中で話をする。
「里見さんは工房があるんですか?」
「ん?あるぞ。ルカは秘密にしてるがな」
「やっぱりそうなんですね!見てみたいです」
「それは無理だ。『ヴァーミリオン』の工房なんて俺でも入れないぞ?」

「へぇ、榊原店長でもですか」
 不思議な顔の瀬戸だが、ダチが秘密にしてるんだからそれはしょうがないことだ。
「まぁ、ルカは生産職でも特殊だからな」
「へぇ、やっぱり」

「それよりちゃんと運転に集中しろよ?事故るなよ?」
「わかってますよ」
 とルカのことばかり聞く瀬戸には、あの工房の良さが分からなかったのかと少し落胆するツネ。

 窓の外を見ると木は緑が映える、ちょうどいい季節になって来た春の訪れに少しだけ心躍る。

 店に着くと親方から預かった武器を運び入れる。

 普通なら店長がやることじゃないが、これはツネのこだわりだ。

「やっぱり親方の打ったミスリルソードは惚れ惚れするな」
「俺はやっぱりこの属性武器がいいですけどね?」
「お前は主力製品のミスリルをもう少し敬え!」
 と瀬戸に向かって説教をする。

 瀬戸はサブマネなんだから分かって欲しいのだ。
 いつかこの店を任せられるように。
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