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結界
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俺はそれから神殿の結界について調べてみた。結界術についての本はあるけれども、神殿の結界という項目になるとほとんど情報がない。特に古い結界で飛ばされるという話はどこにも出てこなかった。
もちろんリーフにも相談してみた。
「結界に巻き込まれるという話ですか? はじかれる、ではなくて?」
リーフは首をかしげる。
「場所と時間が飛ぶ? そんな作用は結界にはないはずですよ」
「でも、実際に飛ばされたんだよ」
俺は自分の体験を話した。
「授業を欠席した下手な言い訳だと思われますよ」
「いや、だから、本当なんだって」
リーフは首をひねった。
「僕の知る限り、そういう話は聞いたことがないですけどね。兄さんに聞いてみましょうか」
「本屋のローレンスに?」
「嫌ですか?」
「いや、嫌というか……彼、俺のこと、嫌っているから……」
リーフがほっとした笑顔を浮かべた。
「兄さんも、今のラークさんなら嫌いにならないと思いますよ。大丈夫。その話、兄さんだったらすごく興味を持つと思うんですよ」
なんで、そんなにニコニコするのかな。そんなに本屋のローレンスは結界を愛しているのか? 人の趣味はそれぞれだから文句は言わないけれど。
「それはそうと、リーフ。お前、神官どもから何か言われなかったか?」
リーフは首をかしげて、ああ、といった。
「特別奨学金についての話でしょうか? 僕達、平民に特別に与えられているお金ですね。良く励むようにと、心身を鍛えて、悪い誘惑に耳を貸すなというお話でした」
「それを打ち切るとか、そういう脅しを受けたのか?」
俺は頭に来た。
「いえいえ、そんな話はありませんでしたよ。それに、成績だけなら僕は自信がありますから。ただ、剣術がちょっと……」
「剣術なんてとっているのか」
俺は驚いた。
「ええ。必修なので」
うらやましい。うらやましいぞ。
「俺が代わりに出たらダメかな?」
単位をすべて落とした伝説のローレンスなら、もう一度受けられるのでは……あれ、なぜ今年その授業が受けられないのだろうか?
俺はドネイ先生に交渉しに行った。
「剣術、ですか? 貴方はあの授業の単位はとれていますよ。ローレンス」
「えええ? そうなのですか?」
「出席率は……貴方にしては上出来ですね」
まさかのローレンス、剣術の単位を取っていた?
あれ、でも、イーサンはローレンスがそんな授業全く出ていなかったといっていなかったか?
「イーサンは上級者ですので、初級剣術には出ていませんよ。それに、平民と合同クラスで人気がないクラスですからね」
ローレンスは平民も大嫌いだったはずなのに。なぜだ?
「ほかの剣術の授業を受けるというのはできませんか? 魔法学の代わりに」
ドネイ先生は諭すような笑顔を浮かべた。
「今のあなたの成績を考えると、今の時間割で頑張る必要があると思いますよ。剣術は来年にでも取れますからね。いけませんよ、ローレンス。苦手な科目から逃げるのは」
疑問はイーサンが応えてくれた。
「あの授業は、上級生が下級生に剣術を指南する授業なんだよ。なんというか、親睦を兼ねて? 去年は王族自ら指南するということで、ラークも受けていたんだよ」
「王族自ら……それは厳しい指導だな。死人が出そうだ」
俺は兄貴の指導を思い出した。兄貴の愛の指導は小さいころから慣れている俺ですら逃げ出したくなるものだった。早くあの指導について行けるようになりたいとずっとおもっていたものだ。
「?? 平民を王族方の相手にすることはできないだろう?」
「ふーん、そこでローレンスは第一王子と組んでいたんだな?」
「第一王子? アーサー様と? 違うぞ。ラークはフェリクス様の組だった」
「え? フェリクス様ってあの変態野郎? あいつがローレンスに剣術を教えていたのか?」
俺は驚いた。
「あいつ、剣を使えるの?」
「……また、不敬なことをいう」
イーサンが文句をつけた。
「そりゃあ、アーサー様には劣るかもしれないが、フェリクス様も剣術をたしなんでおられる。少なくとも、ラークよりはずっと実力は上だったぞ」
「俺はあいつに教わるのは嫌だぞ。気持ち悪い」
ちょっと殴られたくらいでいつまでも根に持つ奴は嫌いだ。
「誰も君に教えるとはいっていない。それにあの授業は親睦だといっただろう。剣術の真似事をするだけ。本来は貴族階級と平民の差をなくすとか何とかという目的だったみたいだけれどね」
俺の授業で気晴らしをしたいという願いはかなえられなかった。イーサンはよい先生だと思うが、他の人の帝国剣術も知りたかったのに。
仕方なく、俺は夜も座学に励んだ。結界のことを知るためには、まずは基礎から。そういってノートの束をリーフは貸してくれた。
もちろんリーフにも相談してみた。
「結界に巻き込まれるという話ですか? はじかれる、ではなくて?」
リーフは首をかしげる。
「場所と時間が飛ぶ? そんな作用は結界にはないはずですよ」
「でも、実際に飛ばされたんだよ」
俺は自分の体験を話した。
「授業を欠席した下手な言い訳だと思われますよ」
「いや、だから、本当なんだって」
リーフは首をひねった。
「僕の知る限り、そういう話は聞いたことがないですけどね。兄さんに聞いてみましょうか」
「本屋のローレンスに?」
「嫌ですか?」
「いや、嫌というか……彼、俺のこと、嫌っているから……」
リーフがほっとした笑顔を浮かべた。
「兄さんも、今のラークさんなら嫌いにならないと思いますよ。大丈夫。その話、兄さんだったらすごく興味を持つと思うんですよ」
なんで、そんなにニコニコするのかな。そんなに本屋のローレンスは結界を愛しているのか? 人の趣味はそれぞれだから文句は言わないけれど。
「それはそうと、リーフ。お前、神官どもから何か言われなかったか?」
リーフは首をかしげて、ああ、といった。
「特別奨学金についての話でしょうか? 僕達、平民に特別に与えられているお金ですね。良く励むようにと、心身を鍛えて、悪い誘惑に耳を貸すなというお話でした」
「それを打ち切るとか、そういう脅しを受けたのか?」
俺は頭に来た。
「いえいえ、そんな話はありませんでしたよ。それに、成績だけなら僕は自信がありますから。ただ、剣術がちょっと……」
「剣術なんてとっているのか」
俺は驚いた。
「ええ。必修なので」
うらやましい。うらやましいぞ。
「俺が代わりに出たらダメかな?」
単位をすべて落とした伝説のローレンスなら、もう一度受けられるのでは……あれ、なぜ今年その授業が受けられないのだろうか?
俺はドネイ先生に交渉しに行った。
「剣術、ですか? 貴方はあの授業の単位はとれていますよ。ローレンス」
「えええ? そうなのですか?」
「出席率は……貴方にしては上出来ですね」
まさかのローレンス、剣術の単位を取っていた?
あれ、でも、イーサンはローレンスがそんな授業全く出ていなかったといっていなかったか?
「イーサンは上級者ですので、初級剣術には出ていませんよ。それに、平民と合同クラスで人気がないクラスですからね」
ローレンスは平民も大嫌いだったはずなのに。なぜだ?
「ほかの剣術の授業を受けるというのはできませんか? 魔法学の代わりに」
ドネイ先生は諭すような笑顔を浮かべた。
「今のあなたの成績を考えると、今の時間割で頑張る必要があると思いますよ。剣術は来年にでも取れますからね。いけませんよ、ローレンス。苦手な科目から逃げるのは」
疑問はイーサンが応えてくれた。
「あの授業は、上級生が下級生に剣術を指南する授業なんだよ。なんというか、親睦を兼ねて? 去年は王族自ら指南するということで、ラークも受けていたんだよ」
「王族自ら……それは厳しい指導だな。死人が出そうだ」
俺は兄貴の指導を思い出した。兄貴の愛の指導は小さいころから慣れている俺ですら逃げ出したくなるものだった。早くあの指導について行けるようになりたいとずっとおもっていたものだ。
「?? 平民を王族方の相手にすることはできないだろう?」
「ふーん、そこでローレンスは第一王子と組んでいたんだな?」
「第一王子? アーサー様と? 違うぞ。ラークはフェリクス様の組だった」
「え? フェリクス様ってあの変態野郎? あいつがローレンスに剣術を教えていたのか?」
俺は驚いた。
「あいつ、剣を使えるの?」
「……また、不敬なことをいう」
イーサンが文句をつけた。
「そりゃあ、アーサー様には劣るかもしれないが、フェリクス様も剣術をたしなんでおられる。少なくとも、ラークよりはずっと実力は上だったぞ」
「俺はあいつに教わるのは嫌だぞ。気持ち悪い」
ちょっと殴られたくらいでいつまでも根に持つ奴は嫌いだ。
「誰も君に教えるとはいっていない。それにあの授業は親睦だといっただろう。剣術の真似事をするだけ。本来は貴族階級と平民の差をなくすとか何とかという目的だったみたいだけれどね」
俺の授業で気晴らしをしたいという願いはかなえられなかった。イーサンはよい先生だと思うが、他の人の帝国剣術も知りたかったのに。
仕方なく、俺は夜も座学に励んだ。結界のことを知るためには、まずは基礎から。そういってノートの束をリーフは貸してくれた。
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