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本編
第十九話 お祝い、いただきました
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杉下さんが運転する車が止まったのは、都内にある某高級料亭。
「ここってアレだよね、ほら、政治家の先生達が密談する場所」
廊下をお店の人案内されて歩きながら信吾さんにヒソヒソと囁いた。
お店の奥にあるお座敷席は離れのような形になっていて他の客がやってくることは無い静かな席。更に正面とは別に出入口が用意されている、まさに密談向きの場所。なんだかドラマのセットみたいだよ。
「信吾さん、ここには来たことあるの?」
「何度か。重光さんとの会合はここを使わせてもらっている」
「へー……凄いね、政治の世界って。なんだか別世界の話だなあ」
案内された部屋に入ると重光先生と沙織さんが座っていた。
「遅くなりまして」
信吾さんが軽く会釈しながら先生達の前に設けられた席についた。私はその隣。
「昨晩は大変だったようだね」
「少なくともこれであの男も当分は刑務所から出てこれないでしょう。警察の話だとどうやら幾つかの余罪があるようですし」
「奈緒君も大丈夫だったかい?」
「お陰さまで」
横で信吾さんがなんかブツブツ言うので肘で小突いた。
「自分にも捕まえるのを手伝わせろと煩くて困りましたよ……」
「さすが自衛官の嫁と言ったところか」
「おだてないでください、つけあがりますから。大人しくしていてくれた方が自分は安心です」
「なによー、それぇ……」
まるで私がはねっかえりのお嬢さんみたいじゃない。今回はただ信吾さんの役に立ちたいって思っただけなのにぃ。
「ところで、先週末に片倉さんと顔を合わせる機会があってね。奈緒君の結婚のお祝いを述べさせていただいたんだが、良かったんだろうか?」
「えーと、どうなんでしょう……」
良かったんだろうか?ってニッコリ笑いながら聞くなんて先生も人が悪い。父親がどんな反応するか分かってるくせに。
「どんな顔してましたか、片倉議員は」
「んー……何て言うか、苦虫を噛み潰したような顔ってやつだな。私にだけは言われたくないという顔でもあった。いやあ、悪いことしたかもしれないなあ。私がお祝いを言ってしまったせいで他の議員にも話が広がってしまったみたいで」
先生、その顔は悪いことしたって思っている顔じゃないよね? なんだかとっても面白がってる。
「たまには良いでしょう、いつも言いたい放題な人ですし。たまには嫌な思いをしてちょうど良いぐらいですよ。こちらには秘書から電話がかかってきましたよ、奈緒の携帯電話にですが」
「ほお、お祝いでも言うつもりで?」
「まさか。結婚するらしいというのは本当かと確認の電話ですよ」
信吾さんも何を言っているんだか。二人してアハハとか笑ってるけどそれってどうなのかな。ここにその片倉議員の娘がいるんですけどーってちょっと言ってみたい。言ったところで二人が改めるとは思えないけどね。
「あの、先生? 議員さん達の間ではどんな話になってるんですか? 父と私のことって……」
「ん? 気になるかい?」
「気になると言うか、ちょっと興味があると言うか、そんな感じです。母とのこともありますし」
「私は奈緒君のお母さんの実家がある甲府選挙区の議員と割と親しいから、片倉さんと奈緒君のお母さんとの話は聞いている。あっちでは結構知られている話らしいからね」
失礼いたしますと仲居さんの声がして襖が開くとお料理が運ばれてきた。さすが高級料亭、器も盛り付けもとっても綺麗だ。先生が遠慮せずに食べなさいって勧めてくれるので話の途中だけれど箸を取る。
「ただ、奈緒君の実情のことを知ったのは本当に最近なんだよ。彼は嘘と本当を上手く使い分けて誤魔化していたから全く分からなかった。もっと早く知っていたら、お母さんの実家と話をして奈緒君をお爺さんの家に引き取るように手配できたんだが」
重光先生は本当にすまなかったねと言い添えた。
「確かに甲府に引き取られていたら子供時代はもっと幸せだったかもしれませんけど、そうなったらきっと信吾さんには会えなかったですし……」
「ああ、それはそうだ。森永君との出会いは無かっただろうね。そうなったら森永君、寂しい余生を送ることになったんだねえ……本当に良かったよ、彼が奈緒君と出会えて」
「余生とか言わないでください、自分はまだそんな年寄りじゃありませんよ」
信吾さんが憤慨したように口を挟んできた。
「ま、なんだ。奈緒君も片倉の家を出て森永君の奥さんになったんだから、これからは自分達の家族のことを第一に考えなさい。二人なら良い家庭が築けるだろう」
「ありがとうございます」
そこからは沙織さんも交えて世間話に花を咲かせた。私はもっぱら重光先生のところお子さん達の話を沙織さんから聞かせてもらっていた。お兄ちゃんの幸斗君と妹ちゃんの結花ちゃん。まだ六歳と三歳なのだそうだ。もっと大きなお子さんがいると思っていたのでちょっと意外な感じがする。
「あれ、今日は良かったんですか、お子さん」
「ええ。うちの母親達が昨晩から遊びに来ていてね、たまには二人で出掛けてきなさいって言ってくれたのよ。だから二人を食事に誘ったってわけ。二人だけだと会話が難しい話になっちゃって楽しくないのよ」
沙織さんは重光先生の元私設秘書。だから先生の仕事の事も詳しいから自然とそうなっちゃうらしい。でもそれだとせっかく夫婦でデートしても楽しくないのよってはっきり言われちゃって、先生は何だか面白くなさそう。
「でも重光先生は沙織さんと二人っきりになりたさそうですよ?」
「え、そうかしら。そうなの?」
いきなり話を振られて先生がギョッとした顔になってるのがおかしい。やっぱり家とは全然違うなあ、あんまり覚えてないけど。
「え? いや、そうだなあ、たまには?」
「なんでそこで疑問形なの?」
「そんなこと言われてもだな……おい、笑うな」
信吾さんがそんな先生の顔を見てニヤニヤしていたらしく睨まれている。
「いいですよねー、沙織さんと先生、ラブラブじゃないですかあ」
「奈緒ちゃんと森永さんほどじゃないわよ。良いわよね、新婚さんって。なんだか羨ましいわ」
「あんまり言うと先生が拗ねちゃいますよ?」
「大丈夫、この人が拗ねたちゃった時の対処方法は分かってるから。何と言っても私、彼の秘書だったんですからね」
そのうち沙織さんと二人っきりで会った時にでも重光先生との馴れ初めを聞いてみようと頭の隅っこにメモ書きをした。
そして食事が終わってしばらく色々な話をしたところで、信吾さんが戻らなきゃいけない時間が迫ってきたのでまた機会があったら一緒に食事をしようと約束をしてお開きになった。本当は二人でゆっくりしたかったけど、たまにはこういうのも良いよね?
「ところで、二人の新居は決まっているのかい?」
席を立ったところで重光先生が信吾さんに尋ねている。
「いえ、まだです。お互いに通える場所が良いとは考えているのですが」
「もし良ければ信用のできる不動産会社を紹介するよ。森永君の場合、あまり駐屯地から離れた場所では都合が悪いだろ?」
「それはそうなんですが、奈緒の大学のこともありますし難しいですね」
「なるほど。心当たりがあるから一度相手に聞いてみるよ。それから森永君に連絡しよう」
そんな男性二人の後ろ姿を眺めながら私は沙織さんにヒソヒソと尋ねる。
「あのう、あんなに色々とお世話してもらってて良いんでしょうか、私達。先生、忙しいんでしょ?」
「もともと世話好きなのよ、ああ見えて。幸太郎さん、兄弟姉妹がいないから奈緒ちゃん達にあれこれしてあげるのが楽しくて仕方がないみたい。申し訳ないけど結婚のお祝いだと思って付き合ってあげて? それにね」
沙織さんはそこでちょっと声を落とした。
「忙しいのは秘書の杉下だから」
「あー……」
なんだか腑に落ちたと言うか何と言うか。そんな私達のクスクス笑いを男連中は不思議そうな顔で眺めていた。
+++++
自分の部屋に入るとホッと一息ついた。ホテルや重光先生のお宅で贅沢に過ごすのは楽しいけれど、やっぱり自分の家が一番落ち着く。ここを出た時、まさか次に戻ってくる時には自分が結婚しているだなんて思ってもみなかった。表札とか届く郵便物はまだ片倉奈緒だけど、もう私、森永奈緒なんだよね。
「あ、パスポートも変更しなきゃ……」
他にも銀行口座とか色々あるなあ。休みの間にしておこう。やることは結構たくさんある気がするから忘れないようにメモ書きしておかなくちゃ。着替えを片付ける前にお茶でも飲もうとキッチンに行ったところで電話のランプが点滅しているのに気付く。留守の間にメッセージが入っているということだけど……なんとなく嫌な予感しかしないよね、この場合。
そろそろと電話に歩み寄って再生ボタンを押してみる。
『こちらデイリー東都の~』
『毎朝新聞の~』
『週刊ウィークリーの~』
個人情報保護法って一体何なの?って誰かに問い詰めたい。なんでここの電話番号が漏れるかなあ、電話帳も何にも載せてないのに。とりあえず電話の着信音を無音にしておこうっと。そう思っていると次のメッセージが流れた。
『片倉事務所の館林ですが……一度お電話を頂きたいのですが。緒方の携帯電話の方にお願いできませんでしょうか』
そう言えば緒方さんの携帯電話って信吾さんが着信拒否にしちゃったんだっけ。面倒臭いなあ……。
『奈緒ちゃん、覚えてくれているかどうかは分からないが透叔父さんだ。一度、電話くれないか?』
そして次に流れてきたメッセージの主は透叔父さん、お母さんの弟にあたる人だ。お葬式の時に会ったっきりかな。
「……」
でも何だか電話のかかり具合が尋常じゃないよね。私のことだけでこんな大騒ぎになるはずがないもの。もしかしたら私の知らないところで何かあったのかな。だけどこれって誰に電話したら良いの? マスコミは論外で残りは叔父さんとお父さんの秘書の緒方さん。緒方さんは信吾さんが着拒したから、やっぱりここは叔父さんに電話すべき?
「先ずはお茶煎れよ……」
叔父さんが残したメッセージで告げられていた電話番号をメモに控えると、あとはまとめて消去しちゃう。いっぱい過ぎて入らなくなってたみたいだし。そして電話には出たくないので更に留守電をセット。
「ふぅ……」
家に戻った途端に疲れちゃうって一体なんなんだろう。ポットに入れたお水が沸くのを待ちながら急須とお湯飲みを食器棚から出した。なんて言うかこの一ヶ月、私って濃い人生を送ってるよね?なんて他人事のように思ってしまった。
溜め息をつきながらスツールで頬杖をついた時に目に入ったのは信吾さんから贈られた指輪。右手でその指輪を撫でていると嫌なことなんて何処かに消えて自然と笑みがこぼれてくる。森永信吾さん、私の旦那様。酔っ払ってぶつかってからまだ一ヶ月ぐらいしか経ってないなんて嘘みたい。
「えへっ……」
自分でも何デレデレしてるんだって感じで指輪を眺めながらにやけちゃった。そんな時に鳴ったインターホン。ううむ、なんか嫌な予感しかしないんだけど。
恐る恐る出てみると、小さなモニターに映っていたのはみゅうさん。何やら大きな紙袋をこちらに向けてブンブン振っている。
「やっほーい、お祝い持って来たよーん♪」
「タイミング良過ぎて怖いですよ~」
「これも後輩を思う愛の力ってやつよ。早く開けてー」
「はーい」
オートロックを解除するとみゅうさんがこっちに投げキッスをよこして画面から消えた。何だかいつも以上にテンション高いよ、みゅうさん。玄関でドアを開けて直ぐに差し出されたのはケーキの箱。
「こっちに戻ってきたばかりなんでしょ? きっと何もないと思ったからケーキの差し入れも持ってきたわよ。感謝しなさいよね」
「わおっ、ここのケーキ、一度食べたいと思ってたんですよ。すごーい、みゅうさんってもしかして超能力者?」
「うふふ、実は私も食べてみたかったの、ここのアップルタルト。お茶、煎れてくれるわよね?」
「ティーバッグで良ければ」
リビングのソファ ―― これもみゅうさんが選んでくれたもの ―― に落ち着いてもらうと、キッチンでお茶とケーキの用意をして持っていった。みゅうさんは手提げ袋の中からあれやこれやと出して並べている。一体どんだけ買ってきたの?
「あ、これもちろん他の子からのお祝いも入ってるわよ? 新学期になったら洗いざい吐いてもらうから覚悟しとくようにって伝言付きで」
「わあ……」
「それで? 少しは結婚したっていう実感は沸いた?」
「まだ一週間ちょっとですし一緒に暮らしているわけじゃないのでイマイチ……」
「確かに。ずっとホテル住まいだったものね」
みゅうさんが私の左手の指輪に気が付いて、手を引っ張った。
「ふむ、オジサンにしては良い趣味よね、見直したわ、陸自の自衛官。それで? 新居はどうするつもり? ここじゃないわよね?」
「信吾さんの仕事の都合もあるみたいなので、もうちょっと都心にお引越しの予定です。物件に関しては重光先生が紹介してくださるって。それが決まるまでは週末婚ですね、きっと」
「ふーん……ここはどうするの? なおっちの名義ではあるのよね、ここの部屋?」
お茶を飲みながら首を傾げているみゅうさん。
「そうですけど、別に持ち続けるつもりもないので新居が決まったら売りに出そうかなあって」
「せっかく色々と家具をコーディネイトしたから勿体無い気はするけど、その方が良いかもね。元々はなおっち父が買った物件だし、持っていたら呪われそう」
「呪われるって、うちの父親、政治家であって悪霊じゃないですよ?」
「似たようなもんよ」
「そうかなあ……」
そんな私の前に置かれる箱。可愛いリボンと光沢のある包装紙で包まれた何とも上品なケース。
「先ずはこれ。私からの結婚祝いよ、開けてみて?」
「なんだろー」
リボンを解いて丁寧に包装紙をはがす。中から出てきたのは……。
「こ、これわあ……」
「新婚さんと言えばやっぱりこれでしょ?」
「い、いやあ……そうなんですか?」
薄いシルクとレースで作られたベビードール一式。手にとって見ると凄く柔らかくて軽くてまるで羽みたい。
「わあ……みゅうさん、すっけすけですよ、これ。布越しにあっちの窓が見えてる」
「なおっちったら色気の無い感想ねえ」
ちょっと呆れたように笑われたけど、それが私の正直な感想なんだもん。これ、本当に透けるんじゃないかな。こんな薄くて着る意味あるの?
「それが恥ずかしいんだったら、こっちのナイティとガウンも素敵よ?」
「わおっ、みゅうさんってば太っ腹ですね」
パールピンクのシンプルなデザイン。何だかこれって女の子の夢そのものだ。だけど、ちょーっと気になる箇所を発見した。
「みゅうさん……」
「なに?」
「このスリットは一体どこまで……」
「うーんと、この辺まで?」
ニッコリ笑って自分の太腿辺りを指で指す。
「……こんなの着たら足が丸見えじゃないですか」
自慢じゃないけど、私、信吾さんに会うまで寝る時はパジャマしか着たことなかったんだよ? しかも結構厚手で色気も何にも無いやつ。こんなの着たらめくれちゃわないか心配で落ち着いて寝られなよ?
「どうせ寝る時は何も着ない状態になっちゃうんだから問題ないんじゃないの? あのオジサンのことだから、毎晩のようにしちゃうんだろうし」
いやいや、みゅうさん。そんなキッパリハッキリとなんてこと言うんですか。その通りではあるけど、そんなハッキリと断定口調で言わなくてもいいのにっ。
「あら、違うの?」
「え……まあ、そうなんですけど、こんなの着たら信吾さん、手がつけられなくなるんじゃないのかなあとか、そっちの意味で心配です」
うん、それが一番の心配。今でさえ激しいのに更にブーストかかったら私、体が壊れちゃうかも。
「困ったオジサンね、そんなに盛っちゃってるんだ? ま、それだけ痕をつけられてるんだもの、聞くだけ野暮ってもんよね」
「え?!」
見えるところについてないって朝ホテルで確認したのに? どこ? 一体どこについてるの?! そんな私の様子を見てクスクス笑い出すみゅうさん。
「冗談よ冗談。そんなに真に受けないでよー」
「え、違ったんですか? 脅かさないでくださいよ。さっきまで重光先生達とお昼をご一緒してたんです。その時に見られていたかもしれないって、本気で焦っちゃったじゃないですかあ」
それに一週間会えないからって信吾さんってば今朝方の時、あちらこちらにキスマークをつけてくれちゃったんだよね。だからそれが見えてるのかって本気で焦っちゃった。
そして他の人達からのお祝いの品々みゅうさんとわいわい言いながら開けていく。本当にもう何て言ったら良いのか……皆、どうしてそんなセクシー系にこだわるの? 私って普段そんな色気無い? ちょっとぼやきたくなっちゃった。
「ここってアレだよね、ほら、政治家の先生達が密談する場所」
廊下をお店の人案内されて歩きながら信吾さんにヒソヒソと囁いた。
お店の奥にあるお座敷席は離れのような形になっていて他の客がやってくることは無い静かな席。更に正面とは別に出入口が用意されている、まさに密談向きの場所。なんだかドラマのセットみたいだよ。
「信吾さん、ここには来たことあるの?」
「何度か。重光さんとの会合はここを使わせてもらっている」
「へー……凄いね、政治の世界って。なんだか別世界の話だなあ」
案内された部屋に入ると重光先生と沙織さんが座っていた。
「遅くなりまして」
信吾さんが軽く会釈しながら先生達の前に設けられた席についた。私はその隣。
「昨晩は大変だったようだね」
「少なくともこれであの男も当分は刑務所から出てこれないでしょう。警察の話だとどうやら幾つかの余罪があるようですし」
「奈緒君も大丈夫だったかい?」
「お陰さまで」
横で信吾さんがなんかブツブツ言うので肘で小突いた。
「自分にも捕まえるのを手伝わせろと煩くて困りましたよ……」
「さすが自衛官の嫁と言ったところか」
「おだてないでください、つけあがりますから。大人しくしていてくれた方が自分は安心です」
「なによー、それぇ……」
まるで私がはねっかえりのお嬢さんみたいじゃない。今回はただ信吾さんの役に立ちたいって思っただけなのにぃ。
「ところで、先週末に片倉さんと顔を合わせる機会があってね。奈緒君の結婚のお祝いを述べさせていただいたんだが、良かったんだろうか?」
「えーと、どうなんでしょう……」
良かったんだろうか?ってニッコリ笑いながら聞くなんて先生も人が悪い。父親がどんな反応するか分かってるくせに。
「どんな顔してましたか、片倉議員は」
「んー……何て言うか、苦虫を噛み潰したような顔ってやつだな。私にだけは言われたくないという顔でもあった。いやあ、悪いことしたかもしれないなあ。私がお祝いを言ってしまったせいで他の議員にも話が広がってしまったみたいで」
先生、その顔は悪いことしたって思っている顔じゃないよね? なんだかとっても面白がってる。
「たまには良いでしょう、いつも言いたい放題な人ですし。たまには嫌な思いをしてちょうど良いぐらいですよ。こちらには秘書から電話がかかってきましたよ、奈緒の携帯電話にですが」
「ほお、お祝いでも言うつもりで?」
「まさか。結婚するらしいというのは本当かと確認の電話ですよ」
信吾さんも何を言っているんだか。二人してアハハとか笑ってるけどそれってどうなのかな。ここにその片倉議員の娘がいるんですけどーってちょっと言ってみたい。言ったところで二人が改めるとは思えないけどね。
「あの、先生? 議員さん達の間ではどんな話になってるんですか? 父と私のことって……」
「ん? 気になるかい?」
「気になると言うか、ちょっと興味があると言うか、そんな感じです。母とのこともありますし」
「私は奈緒君のお母さんの実家がある甲府選挙区の議員と割と親しいから、片倉さんと奈緒君のお母さんとの話は聞いている。あっちでは結構知られている話らしいからね」
失礼いたしますと仲居さんの声がして襖が開くとお料理が運ばれてきた。さすが高級料亭、器も盛り付けもとっても綺麗だ。先生が遠慮せずに食べなさいって勧めてくれるので話の途中だけれど箸を取る。
「ただ、奈緒君の実情のことを知ったのは本当に最近なんだよ。彼は嘘と本当を上手く使い分けて誤魔化していたから全く分からなかった。もっと早く知っていたら、お母さんの実家と話をして奈緒君をお爺さんの家に引き取るように手配できたんだが」
重光先生は本当にすまなかったねと言い添えた。
「確かに甲府に引き取られていたら子供時代はもっと幸せだったかもしれませんけど、そうなったらきっと信吾さんには会えなかったですし……」
「ああ、それはそうだ。森永君との出会いは無かっただろうね。そうなったら森永君、寂しい余生を送ることになったんだねえ……本当に良かったよ、彼が奈緒君と出会えて」
「余生とか言わないでください、自分はまだそんな年寄りじゃありませんよ」
信吾さんが憤慨したように口を挟んできた。
「ま、なんだ。奈緒君も片倉の家を出て森永君の奥さんになったんだから、これからは自分達の家族のことを第一に考えなさい。二人なら良い家庭が築けるだろう」
「ありがとうございます」
そこからは沙織さんも交えて世間話に花を咲かせた。私はもっぱら重光先生のところお子さん達の話を沙織さんから聞かせてもらっていた。お兄ちゃんの幸斗君と妹ちゃんの結花ちゃん。まだ六歳と三歳なのだそうだ。もっと大きなお子さんがいると思っていたのでちょっと意外な感じがする。
「あれ、今日は良かったんですか、お子さん」
「ええ。うちの母親達が昨晩から遊びに来ていてね、たまには二人で出掛けてきなさいって言ってくれたのよ。だから二人を食事に誘ったってわけ。二人だけだと会話が難しい話になっちゃって楽しくないのよ」
沙織さんは重光先生の元私設秘書。だから先生の仕事の事も詳しいから自然とそうなっちゃうらしい。でもそれだとせっかく夫婦でデートしても楽しくないのよってはっきり言われちゃって、先生は何だか面白くなさそう。
「でも重光先生は沙織さんと二人っきりになりたさそうですよ?」
「え、そうかしら。そうなの?」
いきなり話を振られて先生がギョッとした顔になってるのがおかしい。やっぱり家とは全然違うなあ、あんまり覚えてないけど。
「え? いや、そうだなあ、たまには?」
「なんでそこで疑問形なの?」
「そんなこと言われてもだな……おい、笑うな」
信吾さんがそんな先生の顔を見てニヤニヤしていたらしく睨まれている。
「いいですよねー、沙織さんと先生、ラブラブじゃないですかあ」
「奈緒ちゃんと森永さんほどじゃないわよ。良いわよね、新婚さんって。なんだか羨ましいわ」
「あんまり言うと先生が拗ねちゃいますよ?」
「大丈夫、この人が拗ねたちゃった時の対処方法は分かってるから。何と言っても私、彼の秘書だったんですからね」
そのうち沙織さんと二人っきりで会った時にでも重光先生との馴れ初めを聞いてみようと頭の隅っこにメモ書きをした。
そして食事が終わってしばらく色々な話をしたところで、信吾さんが戻らなきゃいけない時間が迫ってきたのでまた機会があったら一緒に食事をしようと約束をしてお開きになった。本当は二人でゆっくりしたかったけど、たまにはこういうのも良いよね?
「ところで、二人の新居は決まっているのかい?」
席を立ったところで重光先生が信吾さんに尋ねている。
「いえ、まだです。お互いに通える場所が良いとは考えているのですが」
「もし良ければ信用のできる不動産会社を紹介するよ。森永君の場合、あまり駐屯地から離れた場所では都合が悪いだろ?」
「それはそうなんですが、奈緒の大学のこともありますし難しいですね」
「なるほど。心当たりがあるから一度相手に聞いてみるよ。それから森永君に連絡しよう」
そんな男性二人の後ろ姿を眺めながら私は沙織さんにヒソヒソと尋ねる。
「あのう、あんなに色々とお世話してもらってて良いんでしょうか、私達。先生、忙しいんでしょ?」
「もともと世話好きなのよ、ああ見えて。幸太郎さん、兄弟姉妹がいないから奈緒ちゃん達にあれこれしてあげるのが楽しくて仕方がないみたい。申し訳ないけど結婚のお祝いだと思って付き合ってあげて? それにね」
沙織さんはそこでちょっと声を落とした。
「忙しいのは秘書の杉下だから」
「あー……」
なんだか腑に落ちたと言うか何と言うか。そんな私達のクスクス笑いを男連中は不思議そうな顔で眺めていた。
+++++
自分の部屋に入るとホッと一息ついた。ホテルや重光先生のお宅で贅沢に過ごすのは楽しいけれど、やっぱり自分の家が一番落ち着く。ここを出た時、まさか次に戻ってくる時には自分が結婚しているだなんて思ってもみなかった。表札とか届く郵便物はまだ片倉奈緒だけど、もう私、森永奈緒なんだよね。
「あ、パスポートも変更しなきゃ……」
他にも銀行口座とか色々あるなあ。休みの間にしておこう。やることは結構たくさんある気がするから忘れないようにメモ書きしておかなくちゃ。着替えを片付ける前にお茶でも飲もうとキッチンに行ったところで電話のランプが点滅しているのに気付く。留守の間にメッセージが入っているということだけど……なんとなく嫌な予感しかしないよね、この場合。
そろそろと電話に歩み寄って再生ボタンを押してみる。
『こちらデイリー東都の~』
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個人情報保護法って一体何なの?って誰かに問い詰めたい。なんでここの電話番号が漏れるかなあ、電話帳も何にも載せてないのに。とりあえず電話の着信音を無音にしておこうっと。そう思っていると次のメッセージが流れた。
『片倉事務所の館林ですが……一度お電話を頂きたいのですが。緒方の携帯電話の方にお願いできませんでしょうか』
そう言えば緒方さんの携帯電話って信吾さんが着信拒否にしちゃったんだっけ。面倒臭いなあ……。
『奈緒ちゃん、覚えてくれているかどうかは分からないが透叔父さんだ。一度、電話くれないか?』
そして次に流れてきたメッセージの主は透叔父さん、お母さんの弟にあたる人だ。お葬式の時に会ったっきりかな。
「……」
でも何だか電話のかかり具合が尋常じゃないよね。私のことだけでこんな大騒ぎになるはずがないもの。もしかしたら私の知らないところで何かあったのかな。だけどこれって誰に電話したら良いの? マスコミは論外で残りは叔父さんとお父さんの秘書の緒方さん。緒方さんは信吾さんが着拒したから、やっぱりここは叔父さんに電話すべき?
「先ずはお茶煎れよ……」
叔父さんが残したメッセージで告げられていた電話番号をメモに控えると、あとはまとめて消去しちゃう。いっぱい過ぎて入らなくなってたみたいだし。そして電話には出たくないので更に留守電をセット。
「ふぅ……」
家に戻った途端に疲れちゃうって一体なんなんだろう。ポットに入れたお水が沸くのを待ちながら急須とお湯飲みを食器棚から出した。なんて言うかこの一ヶ月、私って濃い人生を送ってるよね?なんて他人事のように思ってしまった。
溜め息をつきながらスツールで頬杖をついた時に目に入ったのは信吾さんから贈られた指輪。右手でその指輪を撫でていると嫌なことなんて何処かに消えて自然と笑みがこぼれてくる。森永信吾さん、私の旦那様。酔っ払ってぶつかってからまだ一ヶ月ぐらいしか経ってないなんて嘘みたい。
「えへっ……」
自分でも何デレデレしてるんだって感じで指輪を眺めながらにやけちゃった。そんな時に鳴ったインターホン。ううむ、なんか嫌な予感しかしないんだけど。
恐る恐る出てみると、小さなモニターに映っていたのはみゅうさん。何やら大きな紙袋をこちらに向けてブンブン振っている。
「やっほーい、お祝い持って来たよーん♪」
「タイミング良過ぎて怖いですよ~」
「これも後輩を思う愛の力ってやつよ。早く開けてー」
「はーい」
オートロックを解除するとみゅうさんがこっちに投げキッスをよこして画面から消えた。何だかいつも以上にテンション高いよ、みゅうさん。玄関でドアを開けて直ぐに差し出されたのはケーキの箱。
「こっちに戻ってきたばかりなんでしょ? きっと何もないと思ったからケーキの差し入れも持ってきたわよ。感謝しなさいよね」
「わおっ、ここのケーキ、一度食べたいと思ってたんですよ。すごーい、みゅうさんってもしかして超能力者?」
「うふふ、実は私も食べてみたかったの、ここのアップルタルト。お茶、煎れてくれるわよね?」
「ティーバッグで良ければ」
リビングのソファ ―― これもみゅうさんが選んでくれたもの ―― に落ち着いてもらうと、キッチンでお茶とケーキの用意をして持っていった。みゅうさんは手提げ袋の中からあれやこれやと出して並べている。一体どんだけ買ってきたの?
「あ、これもちろん他の子からのお祝いも入ってるわよ? 新学期になったら洗いざい吐いてもらうから覚悟しとくようにって伝言付きで」
「わあ……」
「それで? 少しは結婚したっていう実感は沸いた?」
「まだ一週間ちょっとですし一緒に暮らしているわけじゃないのでイマイチ……」
「確かに。ずっとホテル住まいだったものね」
みゅうさんが私の左手の指輪に気が付いて、手を引っ張った。
「ふむ、オジサンにしては良い趣味よね、見直したわ、陸自の自衛官。それで? 新居はどうするつもり? ここじゃないわよね?」
「信吾さんの仕事の都合もあるみたいなので、もうちょっと都心にお引越しの予定です。物件に関しては重光先生が紹介してくださるって。それが決まるまでは週末婚ですね、きっと」
「ふーん……ここはどうするの? なおっちの名義ではあるのよね、ここの部屋?」
お茶を飲みながら首を傾げているみゅうさん。
「そうですけど、別に持ち続けるつもりもないので新居が決まったら売りに出そうかなあって」
「せっかく色々と家具をコーディネイトしたから勿体無い気はするけど、その方が良いかもね。元々はなおっち父が買った物件だし、持っていたら呪われそう」
「呪われるって、うちの父親、政治家であって悪霊じゃないですよ?」
「似たようなもんよ」
「そうかなあ……」
そんな私の前に置かれる箱。可愛いリボンと光沢のある包装紙で包まれた何とも上品なケース。
「先ずはこれ。私からの結婚祝いよ、開けてみて?」
「なんだろー」
リボンを解いて丁寧に包装紙をはがす。中から出てきたのは……。
「こ、これわあ……」
「新婚さんと言えばやっぱりこれでしょ?」
「い、いやあ……そうなんですか?」
薄いシルクとレースで作られたベビードール一式。手にとって見ると凄く柔らかくて軽くてまるで羽みたい。
「わあ……みゅうさん、すっけすけですよ、これ。布越しにあっちの窓が見えてる」
「なおっちったら色気の無い感想ねえ」
ちょっと呆れたように笑われたけど、それが私の正直な感想なんだもん。これ、本当に透けるんじゃないかな。こんな薄くて着る意味あるの?
「それが恥ずかしいんだったら、こっちのナイティとガウンも素敵よ?」
「わおっ、みゅうさんってば太っ腹ですね」
パールピンクのシンプルなデザイン。何だかこれって女の子の夢そのものだ。だけど、ちょーっと気になる箇所を発見した。
「みゅうさん……」
「なに?」
「このスリットは一体どこまで……」
「うーんと、この辺まで?」
ニッコリ笑って自分の太腿辺りを指で指す。
「……こんなの着たら足が丸見えじゃないですか」
自慢じゃないけど、私、信吾さんに会うまで寝る時はパジャマしか着たことなかったんだよ? しかも結構厚手で色気も何にも無いやつ。こんなの着たらめくれちゃわないか心配で落ち着いて寝られなよ?
「どうせ寝る時は何も着ない状態になっちゃうんだから問題ないんじゃないの? あのオジサンのことだから、毎晩のようにしちゃうんだろうし」
いやいや、みゅうさん。そんなキッパリハッキリとなんてこと言うんですか。その通りではあるけど、そんなハッキリと断定口調で言わなくてもいいのにっ。
「あら、違うの?」
「え……まあ、そうなんですけど、こんなの着たら信吾さん、手がつけられなくなるんじゃないのかなあとか、そっちの意味で心配です」
うん、それが一番の心配。今でさえ激しいのに更にブーストかかったら私、体が壊れちゃうかも。
「困ったオジサンね、そんなに盛っちゃってるんだ? ま、それだけ痕をつけられてるんだもの、聞くだけ野暮ってもんよね」
「え?!」
見えるところについてないって朝ホテルで確認したのに? どこ? 一体どこについてるの?! そんな私の様子を見てクスクス笑い出すみゅうさん。
「冗談よ冗談。そんなに真に受けないでよー」
「え、違ったんですか? 脅かさないでくださいよ。さっきまで重光先生達とお昼をご一緒してたんです。その時に見られていたかもしれないって、本気で焦っちゃったじゃないですかあ」
それに一週間会えないからって信吾さんってば今朝方の時、あちらこちらにキスマークをつけてくれちゃったんだよね。だからそれが見えてるのかって本気で焦っちゃった。
そして他の人達からのお祝いの品々みゅうさんとわいわい言いながら開けていく。本当にもう何て言ったら良いのか……皆、どうしてそんなセクシー系にこだわるの? 私って普段そんな色気無い? ちょっとぼやきたくなっちゃった。
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