彼と私と空と雲

鏡野ゆう

文字の大きさ
28 / 38
今年は一緒に飛びません!

第三話 緊急事態発生?

しおりを挟む
 医務室に行くと、制服姿の見るからに肝っ玉母さんって感じの女の人が待っていてくれた。

「すみません、彼女が気分が悪くなったんで」
「桧山君から話は聞いてるわ。模擬空戦の動画を見ていたら酔ったんですって? 災難だったわね」
「飛行機が苦手とは聞いていましたが、まさか画面で酔うなんて思ってなくて」

 葛城さんが私をベッドに座らせながら、その人に言った。

「乗り物酔いはね、目から入ってきた情報に脳の処理が追いつかなくて混乱して起きる場合もあるの。だから画面を見ていて気分が悪くなることもあるのよ。自分の恋人でしょ? 葛城君みたいな、叩いても壊れないような頑丈な三半規管の持ち主ばかりじゃないんだから、もう少し考えてあげなさい」
「へいへい、相変わらずオッカサンは怖い怖い」

 軽く睨まれた葛城さんは、肩をすくめながら大人しく頷いている。自衛隊ってもっと上下関係が厳しくて敬語が飛び交っている職場だと思っていたけれど、葛城さんと付き合いだしてからは、そんなイメージとは随分と違う面もあるんだなってことを知った。

「優、この人は野々村二佐。医官というやつで学校でいうところの保健室の先生ってやつなんだが、その実、この基地で一番偉い真の支配者ってやつだ」
「そうなの?」

 葛城さんの言葉に、野々村さんが顔をしかめた。

「ちょっと。人をラスボスか何かみたいに言わないでくれる?」
「似たようなものでしょ。うちの司令を尻にしている鬼嫁なんだから」
「鬼嫁……」

 私の方を見て葛城さんがニヤリと笑う。

「ここの司令、野々村空将補の奥さんだ。常に司令を尻に敷いているって話でな」
「そんな無駄話はしなくて良いから。ほら、彼女のことは私が診ていてあげるから、貴方はさっさと自分のことをしてきなさい」
「こんな調子で司令のことも顎で使ってるらしい」
「そうなの……」

 もしかして女傑とかいうやつ?なんて、まじまじと野々村さんのことを見詰めてしまった。

「違うからね。このトンでもパイロットの言うことは信じなくて良いから。それで? ちゃんと送ってあげるんでしょうね?」
「そのつもりでいます。許可が出たらですが」
「出ないようなら私に言いなさい。ちゃんと口添えをしてあげるから」

 葛城さんは“ほらな?”と私の方を見て口元に変な笑みを浮かべる。

「その時は頼みます。じゃあ優、あとでな」

 そう言って葛城さんは部屋から出て行った。

「オッカサンさんってなんでまた?」

 ベッドに横にならせて貰いながら、葛城さんが最初に言っていた言葉を思い出す。

「ああ、あれね」

 溜め息をつくと困ったように笑った。

「ここに赴任してきた時からどうしてだか、私のことを皆して“この基地のお袋さんだからオッカサンって呼びます”って言い出しちゃってね。不本意ながら、年上から年下まで、物凄い人数の子持ちになっちゃったってわけ」
「年上さん達もですか……」
「そうなのよ。しかも今年から旦那がここの司令として赴任してきたものだから。適度に旦那の尻をひっぱたきつつ内助の功で支えているつもりなのに、いつのまにか鬼嫁扱いなんて酷いと思わない? ああ、えっと槇村さんよね、改めて初めまして、ここで医官をしている野々村です」

 軽く敬礼をしてから右手を差し出されたので握手をする。

「今日は申し訳ありません、仕事を増やしちゃって」
「航空祭の時はね、たくさんの人が来るから、少なからず気分が悪くなって医務室のお世話になる人がいるのよ。だから気にしないで。ま、一般のお客さん達が運び込まれるのは、表にある医務室の方なんだけど」

 槇村さんは身内のようなものだから特別ねと、片目を瞑って見せる。

「ところでどう? 吐き気を止める薬ならあるけど、お薬は飲んでも大丈夫かしら?」

 酔い止めは今更よねと言いながら、お薬が仕舞われている棚の前に立ってから、薬を手にすると私の方を見て首を傾げた。

「特に薬のアレルギーは無いですけど」

 そう言うと“そうじゃなくて”と野々村さんは面白がるような顔をする。

「なにせ相手があの葛城君でしょ? 米軍相手の合同訓練でも、ワンホースは直ぐにキルコールするせっかち野郎だって嫌がられているって話だから、もしかしてと思って」
「え?」

 野々村さんが何のことを言っているのか分からなくて首を傾げた。

「画面を観て酔った可能性の方が高いとは思うけど、もしかしたらせっかち君のことだから、既に赤ちゃんを仕込んでるかしらと思ってね。あらやだ、言い方が下品よね。男ばかりの職場にいると、本当に会話に品が無くなっちゃって困るわ」

 アハハハと豪快に笑っている野々村さんを前に顔が赤くなるのを感じながら、ちょっと待ってと少し冷静になって頭の中でカレンダーを広げてみる。……あれ? そう言えば遅れてるかもしれない? あれれ?

「あら、もしかして本当にやめておいた方が良さそうなのかしら?」

 私の顔つきを見た野々村さんがニッコリと微笑んで、薬を元の場所に戻した。

「じゃあ、レモン味の炭酸水でも飲んだら少しは吐き気がましになるかもしれないから買ってきてあげる。ちょっと待っててね」

 そう言うと野々村さんは部屋から出て行ってしまった。

「…………」

 そして一人取り残された私は、ベッドで天井を見詰めながら考え込んでしまった。いつから来てない? 少なくとも二か月前には間違いなく生理があった筈。あの時はお腹が痛くて、局で仕事をしている時も辛くて薬を飲んだ記憶があるし。じゃあ先月末に来る筈だったものは?

「どう考えてもとんでる……」

 急に不安になってお腹に手を当てた。今までまったく気が付かなかったけどもしかして? そう言えば最近やたらと食欲があるような気がする。デートの時にも食欲の秋にはちょっと早すぎるんじゃ?って葛城さんにも笑われたっけ。

「なんで気が付かなかったんだろ……」

 って言うか、一体いつだったんだろうってことの方が気になりだした。もちろん葛城さんであることには間違いないんだけれど、いつの時に?

 そう言えば、お互いに疲れちゃってそのまま寝ちゃったことがあったっけ? もしかしてその時? それとも、お風呂に入っていた時に悪戯がすぎて襲われた時? それともそれとも、明け方に寝ぼけながらエッチに突入しちゃった時にうっかり忘れてたとか? あ、でもそれだったら葛城さんが言うよね?

「……考えるのやめておこう」

 心当たりがあり過ぎるのもどうなのと、ちょっと落ち込んでいたら野々村さんが戻ってきた。手にはペットボトルではなく、可愛いイラストが描かれているタンブラーが。

「どうぞ。これでスッキリすれば良いんだけど」
「ありがとうございます」

 体を起こしてタンブラーを受け取ると一口飲んだ。レモン味の炭酸が口の中でピリッと弾けた。

「レモンだけじゃない味がするような」
「うん。レモンの他にちょっとだけライムも垂らしてあるのよ」
「え? ってことは売ってるやつじゃないんですか?」
「前につわりに苦しんでいた隊員の子にもこれが効いたから、もしかしてと思って、厨房にいる昔馴染みに頼んだの。それを飲んだから少し休んでいなさい、葛城君が来たら嫌でも起こされるでしょうから」

 間仕切りのカーテンを閉めてくれたので、炭酸水をもう一口飲んでから横になった。

「……葛城さん、きっとビックリするだろうなあ……」

 ビックリするだけなら良いけど。あ、でも言う前にちゃんと調べてみなきゃ。

「あ、野々村さん、そこにいます?」
「なあに?」

 カーテンの向こうから返事が返ってきた。

「あの、葛城さんには黙っていてもらえますか? まだはっきりした訳じゃないので……」

 私だって今さっき可能性があるかもしれない?って気が付いた状態なんだもの。葛城さんに言うのだってもうちょっと心の準備ってやつが必要なわけで。

「分かったわ。だけど可能性があるなら、早めにお医者さんに行くなりしてちゃんと葛城君に話すのよ?」
「はい。それは分かってます」

 炭酸水のお蔭で気持ち悪さも薄れてきたのでそのまま目を閉じる。こんな場所で寝られるのかなって思っていたけど、意外と静かだったせいであっと言う間に眠り込んでしまった。


+++++


「おい、いい加減に起きないと顔に落書きするぞ?」

 そんな声に、お布団の中からちょっとだけ顔を出して薄目を開ける。間仕切りカーテンが閉められたままの薄暗いベッドの横で、葛城さんが覗き込んでいた。

「よくこんな寝心地の悪いベッドで熟睡できるな、しかも野々村のオッカサンがすぐ横にいるというのに」
「聞こえてるわよ、葛城君」

 野々村さんの声がカーテンの向こう側から飛んできた。

「しかも地獄耳ときたもんだ」
「意外と寝心地良かったよ、このベッド」
「そうか? だったら……」
「二人で寝るのは禁止!」

 すかさずカーテンの向こう側から声が飛んできて、葛城さんが肩をすくめる。

「やれやれ、オッカサンは本当に怖い」
「いま何時?」
「あれから一時間ってとこだな。上の許可は貰った。優の自宅は無理だが、俺の自宅までなら送っていける。ここで休むよりは、俺の部屋の方が落ち着けるだろ」
「そうだね。明日はお休みだしそうさせてもらおうかな」

 そう言いながら体を起こす。うん、眩暈もしないし気持ち悪いのも消えてる。

「顔色も元に戻ったな」
「ごめんね、心配させて」
「いや。優が飛行機が苦手だっていうのをちょっと甘く見てたんだ。これからは気を付けるよ」

 葛城さんにしては珍しく下手だ。雨やら雹が降らなけれは良いけど。

「たまたまだったのかもしれないし。あ、そうだ、葛城さんちに行く途中でドラッグストアってあったよね。あそこに寄ってもらっても良い?」
「それは構わないが、泊まるのに必要なものは大抵揃ってるだろ」
「あのね、男には分からない女の子の事情ってものがあるの。連れて行ってくれるの? くれないの?」
「分かった分かった、連れて行きます、連れて行かせていただきますよ、槇村さん」

 ちょっと一緒にいただけでオッカサンに似てきてないか?と葛城さんがぼやくと、再び野々村さんからの尖がった聞こえてるわよ!って声が飛んできた。凄いよ、葛城さん全く歯が立たないフルボッコ状態だ。こんな調子で旦那さんにも接しているなら、確かに旦那さんをお尻に敷いている鬼嫁さんかもしれない。

 ベッドを整えるとカーテンを開けた。野々村さんは机で書類を広げてお仕事中だったみたいだ。座ったまま椅子をクルリと回してこっちを見る。

「気分は良くなった?」
「はい、お陰様で。この炭酸水のお蔭だと思います。ありがとうございました」
「飲み切ってないならそのまま持っていって良いわよ。タンブラーは葛城君に言付けてくれば良いから」
「じゃあお言葉に甘えて」

 タンブラーを持ってきたバッグに入れる。

「では俺は彼女を連れて帰ります。ありがとうございました」
「お大事にね」

 野々村さんはそう言ってニッコリと微笑んだ。

「なあ、優」

 廊下を歩きながら葛城さんが尋ねてきた。

「なに?」
「なんで野々村さんはお大事になんて言ったんだ?」
「え? あれってお医者さんの常套句なんじゃないの? さようならと同じような挨拶だと思ってたけど」
「なるほど」

 葛城さんはそれで納得した様子だったけれど、野々村さんがあの時に言った「お大事に」が単なる挨拶でなかったことを私は知っている。

―― 先ずは調べてみなきゃ。葛城さんに言うのはそれからだよね ――

 最初は葛城さんがどんな反応をするだろうって不安な気持ちで一杯だったけど、今はちょっとワクワクした気持ちにもなっていた。もしそうだったとして、葛城さんに話したら一体どんな顔をするかな……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...