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第三章 ランク戦開催
46話 ルールは正しく守りましょう
しおりを挟む「お前ら!俺を殺す気か!!」
声を荒げるイノチに、エレナたちは特に反省した様子もない。
「だってねぇ…元はと言えばBOSSがコソコソ隠れてガチャ引くのが悪いんじゃない。」
エレナの言葉にフレデリカもアレックスも何度もうなずいている。
「だからといって、これはやり過ぎだろ!スキルまで使って、アジトの地下にこんな空洞を作っちゃって!!」
「勝手に地下構造を変えてたBOSSに言われたくないですわ。」
「そうだそうだぁ♪」
フレデリカの言葉に賛同するアレックスを見て、イノチは大きくため息をついた。
「俺だからなんとか生き残れたんだぞ…」
「大丈夫よ!そこも考えてのことだから!」
「嘘つけよぉ…まったく。あとでレンジさん達に謝らなきゃな…怒られるだろうなぁ。」
「まぁそん時はそん時よね。」
「ですわ。」
「絶対大丈夫だよぉ♪」
悪びれることもなくそうこぼす三人を見て、イノチは再びため息をつく。
そんなイノチを見てエレナが口を開く。
「そういえばBOSS。あたし、ずっと思ってたんだけど…」
「ん…?なにを?」
顔を上げるイノチにエレナは言葉を続ける。
「なんでそのハンドコントローラーのスキルを使ってガチャしないの?好きなものが出るようにいじっちゃえば良いじゃない。」
その言葉にイノチはさらに大きくため息をついた。
「お前なぁ…ガチャというのは、なにが出るのか分からないからハマるんだよ。好きなものを好きな時に引けるなら、それはガチャじゃない。欲しいものが出た時の嬉しさがあるから、ガチャは楽しいんだよ。」
「ふ~ん、そういうものなの?」
「あぁ、そういうもんだ。」
そうカッコつけて力説するイノチだが、心の中では…
(そうか!その手があったか!なぜ気づかなかったんだ、俺は!バカバカバカバカ!!)
「まぁ、それは置いておいて…とりあえず今回の報酬を出しなさい。」
心の中でそう叫ぶイノチに対して、エレナが片手を差し出してきた。
「え…なにそのヤクザみたいなセリフ。」
「意味がよくわからないけど…今回の結果を報告しなさいって言ってるの!」
腕を組んで凄むエレナと、その後ろで同じように腕を組むフレデリカ、アレックスを見たイノチは、観念して今回の結果をアイテムボックスから取り出した。
「へいへい…これが今回の報酬ですよ!お納めくださいな。」
「今回はアイテムだけなのね。」
「あぁ、キャラは出てないよ。使えるのはSRとURの武器が二つだな。」
そう言って取り出した武器を見て、エレナが嬉しそうに声を上げる。
その後ろでフレデリカも何かに気づいたように眉を上げた。
「これは『ドラゴンキラー』じゃない!!!」
「レアリティはSRだけど…そんないい武器なのか?」
「当たり前よ!短剣の中じゃ伝説になってる武器よ!」
「へぇ~どんな伝説なんだ?」
「それは…あの~あれよ!昔、使い手がドラゴンを斬ったという…」
エレナの様子をイノチはジト目で見つめている。
「お前…知らないんだな。」
「知らっ…そんなことないわよ!知ってるわ!知ってるっつーの!」
「なら、もっと詳しく教えろよ。」
「うっ…それは…その…」
「その昔のことですわ。」
慌てるエレナの後ろで、フレデリカが口を開いた。
「その昔、黒き竜の悪行を見兼ねた神がその短剣を創り、一人の人間に渡した。神はその人間に黒竜の退治を命じ、人間はそれを成した。人間は称えられ、短剣は『ドラゴンキラー』と呼ばれる末代まで祀られた。という伝説ですわ。」
「そっ!それよそれ!あたしが言いたかったのは。」
腕を組んで鼻を鳴らすエレナを無視して、イノチはフレデリカに問いかける。
「その黒竜ってさ、フレデリカの話に出てきた…」
「これはあくまで伝説…事実と全く同じということはない、そういうことですわ。」
「まぁ…そうだね。」
肩をすくめるフレデリカを見て、イノチはそれ以上聞くことはしなかった。
「それよりBOSS、わたくしはそちらに興味があります、ですわ。」
「ん…?これか?確かにこれが今回一番の結果だからね。『ゴッドイーター(UR)』って言って、武器カテゴリーは『銃』。専用武器だね。」
イノチは大きな拳銃を手に取って紹介する。
「ただし、専用武器だから扱える人が限られるんだよ。誰か使えたっけ?」
「あたしは無理ね。」
「僕も♪盾士は基本攻撃しないし♪」
「…」
エレナもアレックスも興味なさげにする中で、フレデリカだけはその銃をじっと見つめている。
「…フレデリカ?お~い!」
「あ…あぁ、わたくしが使えますわ!銃は得意武器の一つですわ。」
「マジか!よかった!宝の持ち腐れになるんじゃないかって心配してたんだ。なら、これはフレデリカに。エレナはこのダガーね!」
「やっとあたし専用がもどってきたわね!あいつに壊されてからというもの…」
エレナはゲンサイに壊された『グレンダガー』のことを未だに根に持っているようだ。
一方、喜ぶエレナの横でフレデリカは手に取った銃に目を落としていた。
イノチには、フレデリカが何を思っているのか少し気になっていたが、今は声をかけずにいることにした。
「よし。とりあえず戻ってレンジさん達に謝ろう。」
一同は再び大きく口を開いた穴に消えていった。
・
再びベッドの上で横になるイノチ。
地下洞の件はイノチたちの杞憂に終わった。
報告を受けたレンジは怒るどころか喜んだのだ。
もともとフロアが一つしかないことには不満があったようで、地下ができたことでアジトの拡張につながると逆に感謝されたくらいだ。
レンジは集会所にするぞと意気込んでいた。
イノチはハンドコントローラーを起動する。
エレナたちはお風呂に行っていて当分戻らない。
ならばこの機にさっきエレナが言っていた事について検証してみようと考えたのだ。
それはハンドコントローラーによるガチャシステムの書き換え。
排出率を操作して、自分の好きなキャラやアイテムを手に入れることができないか、という実験である。
ガチャ魔法を唱えてガチャウィンドウを顕現させ、ハンドコントローラーでそれに触れる。
するとソースコード画面が浮かび上がった。
「これ…いけるんじゃねぇ?」
しかし、イノチがそうつぶやいてキーボードを触れた瞬間だった。
突然鳴り響くアラート音。
ソースコード画面には『Emergency(緊急事態)』と表示が現れ、真っ赤に光り輝き始めたのだ。
「なっ…なんだなんだ!?」
イノチが慌てふためいていると、どこからともなく機械的な女性の声が聞こえてくる。
「イジョウヲケンチ。イジョウヲケンチ。キソクニノットリセイサイヲオコナイマス。クリカエス、キソクニノットリ…」
「セイサイ…?キソク…?いったい何のことを言ってるんだ!?どういうこと…」
尚をも鳴り響くアラートと警告にどうすることもできず、茫然とするイノチの目に信じられない光景が映し出される。
「セイサイ!『黄金石』ノボシュウ。サギョウヲカイシシマス。」
そこの言葉とともに画面いっぱいにイノチの所持する黄金石の数が表示され、それが一気にマイナスカウントを始めたのだ。
「えっ!?これ…!俺の黄金石か!?待て待て待て!!」
突然のことに焦ってキーボードを叩くが何の反応もない。
「くそっ!どうして動かない!ヤバいヤバいヤバい!減ってる!俺の黄金石がどんどん…何か手は…手はないか!?」
必死に止めようとするイノチだが、無常にもそのカウントはゼロに近づいていった。
「やめっ…やめてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
イノチの悲痛の叫びが、アジト中に響き渡った。
~ウンエイ自室~
「ルール違反はダメよ、イノチくん。」
泣き叫ぶイノチが映る画面の前で、"ウンエイ"ことヘルメスは紅茶を嗜みながら笑みを浮かべているのであった。
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