ストーカー後輩を放置できなくて矯正してたら、なぜか付き合うことになった

ささい

文字の大きさ
2 / 22
本編

【日向視点】帰り 南門 17:20頃

しおりを挟む
一ページ目で、指が止まった。

『日向先輩動向ログ』

呼吸の仕方を一瞬忘れる。  
ページをめくると、同じ形式の文字が続いた。  
下書きみたいな走り書き。整えられる前の文字。

並んでいるのは、時間と場所ばかりだった。
それがやけに細かい。

『09:12 A棟 203』  
『12:03 購買』  
『13:05 図書館 2F』  
『13:12 図書館 2F 自習席(窓側から三つ目)』  
『17:20 南門』

ページを送る。  
指が止まる。  
戻る。  
そこにも、その前にも、同じ並びが続いていた。

移動した時刻。立ち止まった場所。  
ただそれだけが淡々と連なっているのに、目が離せなかった。  
一行一行が、日向の一日を囲っていく。

背中に、もう一度冷たいものが落ちた。

そして、最後のページ。  
最新の行だけ、さらに細かかった。

『13:35 図書館 2F 自習席(窓側から三つ目)』

ゆっくり顔を上げる。  
遠くの棚の陰に、人影が見えた。  
こちらを見ている。
真白蓮だ。
少し見慣れたはずの姿は、今なぜか異質に見えた。

日向は真白と目を合せることはせず、帰り支度を始めた。
ミニノートを返す気にはなれず、何事もなかった風を装って
上着のポケットに押し込んだ。軽いのに、その存在感がやたらと重い。

席に戻り、いつもの手順で資料を重ね鞄にしまう。
鞄を肩にかけ立ち上がった瞬間、視界の端で気配が揺れる。
追ってくるのか、逃げるのか、判断がつかない。

日向は歩く。
速すぎず遅すぎないペースを維持して図書館を出た。

外に出た瞬間、ようやく息をつけた。
さっきまで体に入っていた力が、すっと抜ける。
逃げ切れた。
そう思って、足が軽くなる。
でも、その安堵は長く続かなかった。
背中が落ち着かない。
追ってきていないか、視界の端で探してしまう。
まだ、分からない。

スマホを見る。
時刻は、17:19。

ミニノートの中の行が、頭の中で勝手に浮かぶ。
『帰り 南門 17:20頃』

早く門を出てしまいたい。
でも、そうしたら真白の観察に「反応した」ことになる。
また相手の記録に、変化を与えることにもなる。そんなのは一番やりたくない。

足取りは変えない。
歩く速さも、曲がる角も、いつも通りにする。
購買の前を横切る。
棚の端に、いつもの無糖カフェラテが見えた。視界の隅に入っただけで、気分が悪くなる。
他人のせいで、行動を変えさせられるのは腹が立つ。
だが、同じものを選ぶのも癪だった。

日向は視線を動かし、炭酸の列から柑橘のボトルを一本取った。
迷う時間は要らない。会計も一瞬で済ませる。
買うこと自体は変えない。
ただ、選ぶものだけを変える。

他人の影響でいつもの行動が曲げられる。
その理不尽さに腹が立った。
日向は振り返らない。
そのまま、南門を抜けた。

遠く、視界の端に何かが一瞬だけ見えて、消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

推し作家さま、待ってください!

makase
BL
推し作家のBL小説を週末に読むことが楽しみなサラリーマン、吾妻。ところが彼の癒しのひとときは、思いもよらぬ方向へと進んでいく。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

なぜかピアス男子に溺愛される話

光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった! 「夏希、俺のこと好きになってよ――」 突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。 ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

処理中です...