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本編
【真白視点】普通
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分かっている。
日向は、時間も道も変えていない。早めてもいない。
それでも、同じものは選ばなかった。
真白はその背中を、南門まで見届けた。
スマホで時刻を確認する。17:20。
日向が門を抜けて、人波に消える。
真白は購買へ向かった。
ノート売り場の前で白い表紙のミニノートを手に取る。手のひらサイズ。罫線。薄い。
これでいい。目当てのものはあった。
レジに並ぼうと顔を上げたとき、飲料棚が視界の端に入った。
柑橘の炭酸。ラベルの形が、さっきから頭に残っている。
……確認しないと、あとで迷う。
棚に寄り、鮮やかな色のペットボトルを手に取った。
ラベルの文字を読む。メーカー名、商品名、容量。
見間違えないように二回。
覚えたつもりでも、こういうところで曖昧になるのが嫌だった。
……味。確認したい。
理由を付ける。理由があるなら、これは「普通」になる。
真白はペットボトルとノートを手に、レジの列へ向かった。
列に並び、レジ前でスマホを見る。17:23。
会計を終えると、ノートとペットボトルをすぐ鞄にしまい、購買を出た。
建物の外の壁際に寄って、人の流れから外れる。
そこで一度だけ息をついてから、ペンとミニノートを取り出した。
『日向先輩動向ログ』
その下に、正確に書く。
『17:19 購買』
『購入:炭酸(柑橘)』
『17:20 南門』
無糖のカフェラテの行はない。
書かないと決めたのに、書かなかった事実だけが残って落ち着かない。
真白はペットボトルとスマホを取り出し、銘柄を検索した。
メーカーサイトを開いて、手に持っているボトルと一致しているのを確認する。
表記を一つずつ見直す。
ここで間違えると、家の記録ノートに写すときに迷う。それだけは避けたい。
ミニノートの余白に短く追記する。
『メーカー:__/商品名:__』
真白はキャップをひねり、ひと口飲んだ。
味を確かめる。そういう形にする。自分の行動を、自分の中で説明できる形にする。
もう一口。
喉を通る感覚を覚えておこうとして、視線がまた余白へ戻る。
家でA5のほうに書く。味の感想も。今日の分として。
「同じものを飲んだ」と書ける。
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、胸のざわつきが少しだけ引いた。けれど手は止まらない。
真白の中では、書くことが「迷惑をかけない」ための手順だった。
困らせないように、自分の中で整理して終わらせる。
そうすれば先輩の生活には触れないし、先輩の予定も曲げない。
だから悪いことじゃない。普通だ。
言い切ろうとして、ペン先が紙の上で止まる。
それでも手を離せず、真白はノートの余白を見つめたまま、次に書く言葉を探した。
日向は、時間も道も変えていない。早めてもいない。
それでも、同じものは選ばなかった。
真白はその背中を、南門まで見届けた。
スマホで時刻を確認する。17:20。
日向が門を抜けて、人波に消える。
真白は購買へ向かった。
ノート売り場の前で白い表紙のミニノートを手に取る。手のひらサイズ。罫線。薄い。
これでいい。目当てのものはあった。
レジに並ぼうと顔を上げたとき、飲料棚が視界の端に入った。
柑橘の炭酸。ラベルの形が、さっきから頭に残っている。
……確認しないと、あとで迷う。
棚に寄り、鮮やかな色のペットボトルを手に取った。
ラベルの文字を読む。メーカー名、商品名、容量。
見間違えないように二回。
覚えたつもりでも、こういうところで曖昧になるのが嫌だった。
……味。確認したい。
理由を付ける。理由があるなら、これは「普通」になる。
真白はペットボトルとノートを手に、レジの列へ向かった。
列に並び、レジ前でスマホを見る。17:23。
会計を終えると、ノートとペットボトルをすぐ鞄にしまい、購買を出た。
建物の外の壁際に寄って、人の流れから外れる。
そこで一度だけ息をついてから、ペンとミニノートを取り出した。
『日向先輩動向ログ』
その下に、正確に書く。
『17:19 購買』
『購入:炭酸(柑橘)』
『17:20 南門』
無糖のカフェラテの行はない。
書かないと決めたのに、書かなかった事実だけが残って落ち着かない。
真白はペットボトルとスマホを取り出し、銘柄を検索した。
メーカーサイトを開いて、手に持っているボトルと一致しているのを確認する。
表記を一つずつ見直す。
ここで間違えると、家の記録ノートに写すときに迷う。それだけは避けたい。
ミニノートの余白に短く追記する。
『メーカー:__/商品名:__』
真白はキャップをひねり、ひと口飲んだ。
味を確かめる。そういう形にする。自分の行動を、自分の中で説明できる形にする。
もう一口。
喉を通る感覚を覚えておこうとして、視線がまた余白へ戻る。
家でA5のほうに書く。味の感想も。今日の分として。
「同じものを飲んだ」と書ける。
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、胸のざわつきが少しだけ引いた。けれど手は止まらない。
真白の中では、書くことが「迷惑をかけない」ための手順だった。
困らせないように、自分の中で整理して終わらせる。
そうすれば先輩の生活には触れないし、先輩の予定も曲げない。
だから悪いことじゃない。普通だ。
言い切ろうとして、ペン先が紙の上で止まる。
それでも手を離せず、真白はノートの余白を見つめたまま、次に書く言葉を探した。
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