ストーカー後輩を放置できなくて矯正してたら、なぜか付き合うことになった

ささい

文字の大きさ
2 / 23
本編

【日向視点】帰り 南門 17:20頃

しおりを挟む
一ページ目で、指が止まった。

『日向先輩動向ログ』

呼吸の仕方を一瞬忘れる。
ページをめくると、同じ形式の文字が続いた。
下書きみたいな走り書き。整えられる前の文字。

並んでいるのは、時間と場所ばかりだった。
それがやけに細かい。

『09:12 A棟 203』
『12:03 購買』
『13:05 図書館 2F』
『13:12 図書館 2F 自習席(窓側から三つ目)』
『17:20 南門』

ページをめくる。
指が止まる。
戻る。
そこにも、その前にも、同じ並びが続いていた。

移動した時刻。立ち止まった場所。
ただそれだけが淡々と連なっているのに、目が離せなかった。
一行一行が、日向の一日を追っていく。

背中に、もう一度冷たいものが落ちた。

そして、最後のページ。
最新の行だけ、さらに細かかった。

『13:35 図書館 2F 自習席(窓側から三つ目)』

ゆっくり顔を上げる。
遠くの棚の陰に、人影が見えた。
こちらを見ている。
真白蓮だ。
少し見慣れたはずの姿は、今なぜか異質に見えた。

日向は真白と目を合わせることはせず、帰り支度を始めた。
ミニノートを返す気にはなれず、何事もなかった風を装って
上着のポケットに押し込んだ。軽いのに、その存在感がやたらと重い。

席に戻り、いつもの手順で資料を重ね鞄にしまう。
鞄を肩にかけ、立ち上がった瞬間、視界の端で気配が揺れる。
追ってくるのか、逃げるのか、判断がつかない。

日向は歩く。
速すぎず遅すぎないペースを維持して図書館を出た。

外に出た瞬間、ようやく息がつけた。
さっきまで体に入っていた力が、すっと抜ける。

逃げ切れた。

そう思って、足が軽くなる。
でも、その安堵は長くは続かなかった。
背中が落ち着かない。
追ってきていないか、視界の隅で探してしまう。
まだ、分からない。

スマホを見る。
時刻は、17:19。

ミニノートの中の行が、頭の中で勝手に浮かぶ。
『帰り 南門 17:20頃』

一刻も早く門を抜けたい。
だが、ここで歩を早めれば真白の観察に「反応」を示したことになってしまう。
自分の変化が相手の記録に刻まれる。それだけは、何としても避けたかった。

歩幅は普段通り。
速度も、曲がる角度も、すべて日常をトレースする。
購買の前を通り過ぎる際、棚の端にいつもの無糖カフェラテが映った。
視界の端に捉えただけで不快感が走る。
他人のせいで自分の行動が規定されるのは我慢ならない。
かといって、あえて同じものを選ぶのも、あてつけのようで癪に障った。

日向は迷わず、炭酸飲料の列から柑橘のボトルを掴み取った。
会計も機械的に済ませる。
「買う」というルーティンは維持して中身だけをすり替える。
他人の視線のせいで、自分の日常が歪められていく。
その理不尽さに腹が立った。
振り返ることはしない。
日向はそのまま、南門の向こう側へと消えた。

遠く、視界の端に何かが一瞬だけ見えた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。

ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日” ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、 ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった 一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。 結局俺が選んだのは、 “いいね!あそぼーよ”   もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと 後から思うのだった。

処理中です...