3 / 22
本編
【真白視点】普通
しおりを挟む
分かっている。
日向は、時間も道も変えていない。早めてもいない。
それでも、同じものは選ばなかった。
真白はその背中を、南門まで見届けた。
スマホで時刻を確認する。17:20。
日向が門を抜けて、人波に消える。
真白は購買へ向かった。
ノート売り場の前で白い表紙のミニノートを手に取る。手のひらサイズ。罫線。薄い。
これでいい。目当てのものはあった。
レジに並ぼうと顔を上げたとき、飲料棚が視界の端に入った。
柑橘の炭酸。ラベルの形が、さっきから頭に残っている。
……確認しないと、あとで迷う。
棚に寄り、鮮やかな色のペットボトルを手に取った。
ラベルの文字を読む。メーカー名、商品名、容量。
見間違えないように二回。
覚えたつもりでも、こういうところで曖昧になるのが嫌だった。
……味。確認したい。
理由を付ける。理由があるなら、これは「普通」になる。
真白はペットボトルとノートを手に、レジの列へ向かった。
列に並び、レジ前でスマホを見る。17:23。
会計を終えると、ノートとペットボトルをすぐ鞄にしまい、購買を出た。
建物の外の壁際に寄って、人の流れから外れる。
そこで一度だけ息をついてから、ペンとミニノートを取り出した。
『日向先輩動向ログ』
その下に、正確に書く。
『17:19 購買』
『購入:炭酸(柑橘)』
『17:20 南門』
無糖のカフェラテの行はない。
書かないと決めたのに、書かなかった事実だけが残って落ち着かない。
真白はペットボトルとスマホを取り出し、銘柄を検索した。
メーカーサイトを開いて、手に持っているボトルと一致しているのを確認する。
表記を一つずつ見直す。
ここで間違えると、家の記録ノートに写すときに迷う。それだけは避けたい。
ミニノートの余白に短く追記する。
『メーカー:__/商品名:__』
真白はキャップをひねり、ひと口飲んだ。
味を確かめる。そういう形にする。自分の行動を、自分の中で説明できる形にする。
もう一口。
喉を通る感覚を覚えておこうとして、視線がまた余白へ戻る。
家でA5のほうに書く。味の感想も。今日の分として。
「同じものを飲んだ」と書ける。
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、胸のざわつきが少しだけ引いた。けれど手は止まらない。
真白の中では、書くことが「迷惑をかけない」ための手順だった。
困らせないように、自分の中で整理して終わらせる。
そうすれば先輩の生活には触れないし、先輩の予定も曲げない。
だから悪いことじゃない。普通だ。
言い切ろうとして、ペン先が紙の上で止まる。
それでも手を離せず、真白はノートの余白を見つめたまま、次に書く言葉を探した。
日向は、時間も道も変えていない。早めてもいない。
それでも、同じものは選ばなかった。
真白はその背中を、南門まで見届けた。
スマホで時刻を確認する。17:20。
日向が門を抜けて、人波に消える。
真白は購買へ向かった。
ノート売り場の前で白い表紙のミニノートを手に取る。手のひらサイズ。罫線。薄い。
これでいい。目当てのものはあった。
レジに並ぼうと顔を上げたとき、飲料棚が視界の端に入った。
柑橘の炭酸。ラベルの形が、さっきから頭に残っている。
……確認しないと、あとで迷う。
棚に寄り、鮮やかな色のペットボトルを手に取った。
ラベルの文字を読む。メーカー名、商品名、容量。
見間違えないように二回。
覚えたつもりでも、こういうところで曖昧になるのが嫌だった。
……味。確認したい。
理由を付ける。理由があるなら、これは「普通」になる。
真白はペットボトルとノートを手に、レジの列へ向かった。
列に並び、レジ前でスマホを見る。17:23。
会計を終えると、ノートとペットボトルをすぐ鞄にしまい、購買を出た。
建物の外の壁際に寄って、人の流れから外れる。
そこで一度だけ息をついてから、ペンとミニノートを取り出した。
『日向先輩動向ログ』
その下に、正確に書く。
『17:19 購買』
『購入:炭酸(柑橘)』
『17:20 南門』
無糖のカフェラテの行はない。
書かないと決めたのに、書かなかった事実だけが残って落ち着かない。
真白はペットボトルとスマホを取り出し、銘柄を検索した。
メーカーサイトを開いて、手に持っているボトルと一致しているのを確認する。
表記を一つずつ見直す。
ここで間違えると、家の記録ノートに写すときに迷う。それだけは避けたい。
ミニノートの余白に短く追記する。
『メーカー:__/商品名:__』
真白はキャップをひねり、ひと口飲んだ。
味を確かめる。そういう形にする。自分の行動を、自分の中で説明できる形にする。
もう一口。
喉を通る感覚を覚えておこうとして、視線がまた余白へ戻る。
家でA5のほうに書く。味の感想も。今日の分として。
「同じものを飲んだ」と書ける。
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、胸のざわつきが少しだけ引いた。けれど手は止まらない。
真白の中では、書くことが「迷惑をかけない」ための手順だった。
困らせないように、自分の中で整理して終わらせる。
そうすれば先輩の生活には触れないし、先輩の予定も曲げない。
だから悪いことじゃない。普通だ。
言い切ろうとして、ペン先が紙の上で止まる。
それでも手を離せず、真白はノートの余白を見つめたまま、次に書く言葉を探した。
38
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる