何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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第11話:これって、ただのいたずらだよね?

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その日も、特別なことはなかった。
朝ごはんを食べて、簡単な勉強をして、昼には広場に出かける予定だった。

「アレスー? リンたち先に行っちゃったけど、俺は本とか片付けてから行くから先に行ってていいよ。」

「……いえ、僕はカノン様を待ちます。」

そう言って、部屋の隅に控えるように座るアレス。

まぁ、いつものことだ。
最近じゃそれにツッコむことすら減ってきた。私は机に置いた紙束をまとめて棚にしまい、ふと部屋の隅にある扉へと足を向けた。

「ちょっと倉庫から絵本一冊だけ取ってくる。」

「あ……。」

その時のアレスの反応は、ほんの一瞬、間があったように感じた。

でも私は気にせず、小さな倉庫部屋に足を踏み入れた。
手慣れた動きで本の山をかき分け、目的の一冊を手に取り、ふと振り返ると――

「…………え?」

扉が、閉まっていた。

しかも、ガチャリと“外から鍵がかけられた音”がした。

「アレス?」

返事は、ない。

「……あの、アレス? 冗談でしょ?」

しばらく待ってみた。
だが、時間が経っても扉は開かない。

倉庫にあるのは本と布と箱。窓もない、小さな閉鎖空間。

「…………っ。」

心臓が、少し速くなった。

「アレス!ほんとに、冗談なら今開けて!ちょっと……怖いって!」

数分後、ようやくカチャリと扉が開いた。

「……カノン様、大丈夫でしたか?」

「お前……!」

私は思わず詰め寄った。だが、アレスはどこまでも無垢な顔でこちらを見ていた。

「閉じ込めたの、君だよね?」

「はい。」

即答だった。

「どうして……?」

「……皆が、カノン様を“どこかへ連れて行く”から。少しの間だけ、誰にも触れられない場所にいてほしかったんです。」

その声は、どこまでも穏やかで。
でも、どこまでも、冷たかった。

「……冗談、だよね?」

「はい。冗談です。……“子供のいたずら”ですから。」

笑っていた。
でも私の背筋には、氷のつぶてがひとつずつ落ちていくような、ぞわりとした感覚が走った。

私は、何も言えず、ただ彼の頭にそっと手を置いた。

「……わかった。じゃあ、行こう。みんな、待ってるから。」

「はい、カノン様。」

アレスの瞳には、曇りひとつない。

だからこそ、怖かった。

カノン・ライエル・フィルディア、3歳と8ヶ月。
この日、私は初めて、アレス=クラヴィスに“恐怖”という感情を覚えたのだった。
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